カズオ・イシグロ

 

1989年 「日の名残り」 でブッカー賞受賞

     のちにアンソニーホプキンス主演で映画化

2017年 ノーベル文学賞受賞

 

本屋にはカズオ・イシグロの作品たちが並び

多くの人が、彼の作品を手に取ったことでしょう

 

私は普段テレビを見ないので

人と話しているときに入ってくる情報

職場で耳に入ってくる会話

町中の広告、変化から

いま話題になっているニュースそして、・事件などを知ることになります。

 

え?知らないの?から始まり

こんなに話題になっているのに?となり

たいていの方は詳しく教えてくれます。

そして、私はそれで事足りるのです。

 

それ以上知りたければ自分で調べたり

審議を確認したりはしますが。

 

話はもどり

カズオ・イシグロ

 

話題になった当初は

本屋さんにやけに並んでいるな

ノーベル文学賞か~、日本人?

 

並んでいるほんの題名をみたり

中身をパラ読みしたり

してみたけど

買う気にはならず

 

そのまま歳月が流れていきました。

 

私の傾向としては

話題の本はその当時には読まず

ほとぼりが冷めたころ

あ~、そんなのもあったな~

どれ、読んでみよう

みたいな感じで読みだすことが多いのです。

 

なぜかと考えたことはないけれど

きっと、自分が読みたいのか分からないものを読むのに抵抗があるのかも

だから、自分で思い出して読もうと思ったときに読んでいる気がします。

 

一旦情報として入れておけば

必要な時に思い出すという

人間に本来備わっている脳機能を

活用しているのですね

 

特に文学作品はその傾向が強いと思います。

実用書は読みたいとか読みたくないとかではなく

必要か必要でないかで読めるけど

文学作品は趣味・嗜好・娯楽ですからね

 

話はそれましたが

 

今日はそのカズオ・イシグロの

「Never Let Me Go」について

 

 

2019年5月ごろ

カズオ・イシグロ作品を初めて読みましたが

出だしから物語の世界にどっぷりとつかってしまいました。

1人称の話口調のなので、入り込みやすい

 

なんというか、はっきりしないものいい

先を予測させるような言い回し

思わせぶりな表現など

核心の周辺情報を

パラパラと小出しにして

その小出し情報もあいまいだったり

一枚ベールをかぶったような表現であり

 

それが

読み進んでいくうちに、繋がっていく感覚が

そのスッキリしないものを回収する快感につながっているのでしょう

 

うまい

 

見事にはまりました、私は。

 

もう一つ

個人的にぐっときたものは

彼の人間というものの定義

人間というものをどうとらえているのか

記憶というものをどうとらえているのか

 

私はどちらかというと人間の闇の部分

闇だと思われている部分というのかな

 

一般的に社会生活では公にしない部分

見せないようにしている部分を

作者がどうとらえて、表現しているのか

それを読者がどう解釈するのか

 

そこが小説を読む楽しみだと思っている

そしてそれを読者である私たちは

共有し共感し

あるいは反発し

魅かれたり、否定したり

 

自分の中にある記憶・思考・感情が呼び起こされ

忙しく移り行く自分の変化を楽しんでいる

 

もちろんストーリーを楽しむのもメインだけれど

一個一個の表現の裏にあるものを

自分のデータベースと照合し推測するのが面白い

 

この小説では

闇の部分と思われるものは

 

人間の残虐性

人間の性に対するタブー

自我という幻想

記憶のあいまいさ

 

どこまでが想像でどこまでが記憶でどこまでが現実か

まず、一人称なので

現実として客観的に書かれている部分が

極端に少なく

 

終始夢の中にいる感じ

 

上にあげた闇のなかで

体がなにかしら反応を示すものは

自分が押し込めている部分

蓋をしている部分

しまい込んでいる部分なんです、きっと

 

そこを見る

 

私の場合は仕事柄か人間の残虐性や記憶、自我などは

すんなり受け入れられましたが

性に対するタブーの部分は

ひきつけられました。

 

自分の中にそのような衝動があるということに

蓋をしていたのでしょう。

 

性に関するタブーは

文化遺伝的な側面が大きいと思います。

 

本来人間はそのようなタブーはもっていなかった

 

集団で暮らすようになり社会生活を共にするようになって

不都合が生じてきて規範ができてきた。

 

本来自分の中にあるものを

タブーとして蓋をするのではなく

あることを認識したうえで

それをどう扱うかを自分で決める

 

その選択は社会的にどうかという前に

自分としてどう扱いたいかを感じ

それから社会に合わせてもいいか

それも自分で決めればいいと思う

 

ちなみに

この小説は映画化されていて

とてもきれいな映像としてまとめられていますが

内容はかなり薄っぺらいものとなっています。

別物です。

 

やはり映画化となると収益のことが絡んでくるので

原作に忠実にはなりません。

役者さんが美しいので映像美としてみるのはいいかも。

 

日本ではドラマ化されていたような。

見ていませんが、原作のどの部分が抽出されていて

どこを加えているのか見てみるのも楽しそう

 

自分の心の中の闇の部分に触れたい、知りたい方は

ぜひ原作小説を読んでみてください