入学式も平凡に終わり─中学の時と同じように、頭の寂しい校長の話を重いまぶたと格闘しながら聞いていた─それから、新しく始まる生活を思った。
勉強のことは大丈夫。特に心配しなくていいし、オープンキャンパスだって、夏ごろに考えれば済む話。
部活は今から気合を入れて、今までとは少し姿勢を変えてしっかり取り組む。友達もきっと、いろいろあるけれどなんとかなるだろう。
問題は恋だった。
何かにかけて「好き」の気持ちを考える。
みんなが特別にする「好き」。たったひとりの異性に抱く「好き」。
感じたことのないものだった。
感じたことがあるふりをしていた。
でも実際何か物足りなかった。
友達に抱くものとは違わなければいけない?
特別にしなければいけない?
まだそうしたいと思える相手はただのひとりとしていなかった。
中学の時も彼氏はいたし、告白もされたけど、別に特にふつうと変わらず、ただ楽しくすごしたくて一緒にいた。
それでも一カ月程度で別れるのが関の山だった。
心は痛まない。人にさよならを告げるのは得意技ともいえた。
中高一貫教育でも、高校からは一般入学者と、スポーツ推薦枠での入学を決めた生徒が増える。
新しい人間。新しい関係。
何か起こるかな。
何か刺激を求めていた。傷つくことのない刺激。
ただ漫画や小説のように、少し劇的になれる世界。
散り果てた桜が舞いかえる。髪は揺れ口元にふれた。