次の日も、昨日と同じ車両に乗った。
偶然でそうなることなんて、何度でもある。
まさか剛に会いたくてここに乗るわけじゃない。
そういう建前を心に刻み込んだ。
鏡を取り出して自分を見る。
前髪を直して、なにげなく窓の外を見る。
来る? 来ない?
ドアのほうは見なかった。
ただ電車の外を眺める。
行きかう人。金色の日差し。
その時男の子の声がいくつも、唐突に近づいた。
ふつうを装ってその声のするほうを見た。
あのグループだった。剛だった。
なんとなく気まずい、という風を装って顔をそむけた。
同じ学校の人とここまで近くになるのは、たとえ誰であろうといやなことには変わりない。
どれが剛の声かもわからない。
ただ耳をすませていた。
いつもと同じように、首筋ににじむ汗を気にしていた。
「昨日のあれ、見た? 剛」
肌にふれるすべてに敏感に反応した。
その声にも、その音が震わす空気にも。
「ああ、あれ。見た見た。すっげーおもしろかった」
そうやって笑い出す彼の声を。
ただ、聞いていた。
初めて聞く彼の声を。
これが剛の声。
顔をそむけたまま、笑顔も何も、まだ知らないけれど。
彼の声。
ただそれを、知ってしまった。
肌はさらに敏感さを増した。
体が、熱い。