先日のことである。

娘と二人、家で夕食をとっていた時、突然、玄関のインターホンが鳴った。

 

来客の予定は全くなかった。荷物が届く予定もない。何かの勧誘とかだろうな…嫌だなあ、居留守使えるかなあ、とか思いながらモニターを覗いて仰天した。

 

夫がいたのである。

 

え、うそ、ひとり、何で?とか慌てながらも玄関を開けた。

夫は一人で、電車を乗り継いで帰って来た。連絡は全くなかった。スマホの調子が悪かったらしいが、いつも通り使えていたとしても連絡をくれたかどうかは怪しいところだ。

途中で夕食を済ませたという。

 

慌てて義母に連絡を取ると、出かけるというからいくらかお金を渡したけれど、そっちに行っていたのね~と呑気なお返事。

 

夫の姿をみて子供は大喜びだった。夫は思っていたより落ち着いてて、表情も朗らかだった。

少し落ち着いてから最近の様子や、いきなりの帰宅について聞いてみた。

 

最近になって、床屋や近所のコンビニに出かけられるようになったが、突然思い立ち、電車を使っての遠出をした(もともと、夫は電車に乗るのが好きな人だ)。

思いのほか上手くいったので、そのまま帰って来た、とのこと。

 

回復途中の突発的な行動。

嫌な予感しかしなかったが、夫はことのほか落ち着いているし、突発的に動いたこと以外は自分の状態をそれなりに把握しているようで、もう完全復活だ!いきなり仕事を始める!とか無茶なことは一切考えていなかったので安心した。

 

どうやら本当に、ただただ家に帰って来たかっただけらしい。

車で迎えに来て欲しいと連絡して来なかったのは、多分車に乗りたくなかったからだろう。

 

実は、夫が統合失調症の大きな症状を自覚したのは、車の運転中の事だったらしい。

もともと、普段から細やかに神経を張り巡らせる夫にとって、車の運転は苦手なことの一つだった。それが発症以後は、苦手から恐怖になってしまったらしい。

 

帰宅以後、夫は家族と食事をとり、適度に睡眠をとり、子供や私と談笑したりして穏やかに過ごしている。

拍子抜けするほど、平和な毎日だ。といっても始まってほんの数日だけれど。

なのでどうしたって、悪い方向の想像が浮かんでしまう。アレコレと。

 

どうか、この平穏が続きますように。