平日の休みが取れたので、久しぶりに本屋に行った。

用事は家計簿を買うためだったのだけど、本屋は大好きなのでひとりなのをいいことに店内をウロウロしてみた。

 

そこでふと『風水』の雑誌に目が留まった。

風水。

じつは過去にこういう類のものにハマった事がある。風水とか、占いとか。

ハマったというか、すがったんだけれども。

 

前にも書いたけれど、結婚して10年の間に、夫が精神的におかしくなることがあった。しかも何度もあった。

その時は仕事が上手くいっていなかったし、それが原因だと思っていたから、精神疾患だとはあんまり考えなかったけれど、受診くらいはしたほうがよかったんだろうなあ。夫が行くわけなかったけれど。

とにかく夫の鬱っぽさや怒りやすさに振り回され、家の空気…というか雰囲気は最悪だった。

その状況が辛くて辛くて、でも夫に訴えても宥めても泣いても怒っても、どうにも変わらなかった。

 

夫の好きなものを作ったり、気晴らしに自動車関連のイベントに行きたいと言われたら軍資金を渡したり(夫は車が好き)、いろいろ頑張ってみたものの、根本的には改善しなかった。

もう私の努力ではどうにもならない、そういう状況で前述の風水とかに頼ってみたのだった。

といっても、高価なグッツを買って家中を飾り立てたり、方位に合わせてインテリアのカラーを揃えたり・・・ということはしなかった。というか出来なかった。お金がもったいなくて。

あと実行しようとすると分かるけど、風水というのは徹底的にやるとすこぶるめんどくさいのだ。食べ物とか行動とか多岐にわたるし。だから、結局は中途半端に実行するのみだった。

 

例えば、

 

ダメージの大きい水場は清潔にし、相性のいい色かラッキーカラーでまとめる → 掃除は普通にする。部屋は散らかっていても水回りは昔から綺麗にしていたい性質だったし。でもトイレ掃除毎日とかカバー毎日取り換えるとか無理。シャンプーとか買い換えるときは、色をちょっと意識した。

 

玄関は必要以上の靴を置かず、毎日たたきを水拭きする → 玄関スッキリは実行。たたきには3足以上の靴は置かないようにした。狭い玄関なのでスッキリすると安全。たたきの水拭きは毎日は無理。週一回掃除するくらい。

 

家の中はいつも片付けてスッキリ暮らせるようにする → これはまあ…実行したほうかな?トップブロガーさんのような『雑誌に出そうな素敵なお部屋』からは程遠いけれど、掃除しやすいくらいには整えた。でもコレは引っ越しのとき、物が多くて引っ越し代が嵩んだせいでもある。荷解きをした後、収納が足りなくて思い切って捨ててみたら全然困らなく、引っ越し前にやってたらもう少し小さいサイズのトラックでよかったのに…と悔しい思いをしたので、ひたすらいるものだけ残すように心がけてみた。まあ、徹底的にやったわけではないけれど。

 

結局、実行したのはこれくらい。なので風水っていうかただのお片付け……。暮らしやすくなったからいいんだけれども。

 

そして『占い』。

いまは便利な時代だよなあ、と思うのは『占いの館』的な場所に赴かなくても、ネットを使えば個別に占ってもらえるってこと。とはいえ、当時の私が使ったのは文字制限のあるメール占いだった。それでも安い占術者でも2000円くらいはするし。それで結局3回くらいは利用したでしょうか…。

もったいない、と思わなくもなかったけれど、相談する人もいなかった私にとって、結構救いになったことも事実。そして利用していた当時から「これはカウンセリングみたいなものだな…」とも思っていた。

薬を処方してもらうとか、診療につながるような事態ならともかく、ただ悩み事を聞いてもらうとか、気持ちを楽にするアドバイスをもらうとか、それくらいなら占いだろうがカウンセリングだろうが大して変わりゃしねえわ、などと、心理業界からも占い業界からもお叱りを受けそうなことを、占いに頼る心の4割くらいで考えていた。

それにカウンセリングを受けるとなったら予約して出かけて同じくらいの(いや、もっとかかる?)お金がかかって…とか考えたら時間も手間もかかるし、それなら楽に利用できる占いのほうが私にとって都合がよかった。

 

その後、だいぶ長い時間をかけ夫は落ち着いた。私が欲しくて欲しくてたまらなかった「家族仲良く暮らせる、穏やかな生活」が手に入った。嬉しかった。本当に、嬉しかった。

でも結局、その生活はあんまり続かなかった。夫は入院してしまった。

 

例えば、風水をお片付け程度で終わらせず、部屋をラッキーなカラーで埋め尽くし、空き時間を全て充てる勢いで掃除をしまくり、運気の上がるとする食材ばかりで料理をし、お出かけは運気のいい方位ばかりを選び…、そうしたら、幸せは続いたのかな。

占いも、高名な占い師を探し出してみてもらい、相談に何万も使い、壺だの珠数だの、聖なる水だの、そういう開運グッツを(良く分からんけど)買いまくって部屋を飾り立てたら、夫は入院せずに済んだのだろうか。

 

それは分からない。もしかしたら効果があるのかもしれないし。いや、もちろん水や珠数で統合失調症を防げるなんて露ほども思っていないけど。

 

ただ、私はすがっても、すがり切れなかった。

自分の時間や生活を妨げるレベルで、そういうものにハマりこむことは出来なかった。

 

そんな自分で良かった。

でも、最初からすがる事すらしない自分でいられたらもっと良かったのかな。

 

だけど風水というか、お片付けは生活の質を上げるのに大いに役立ってくれている。部屋が荒れていないと、心も落ち着きやすいように思う。雑誌とかメディアでよく見る風水のアノ人は、多分そういうことを伝えてるんだろうし。

 

そして今回、夫が入院したときは、スマホアプリで一度だけ占いをやってみた。

内容は「今は貴方が大黒柱になって頑張る時です!」的な内容だった。そりゃそうですね、っていうかそうする以外にないじゃない、って突っ込みが出そうなアドバイスではあったが、心はかなり落ち着いた。夫の病状についても、今年いっぱいはこのまままで~云々、と言われた。まあそうでしょうねえ、としか返事しようがない内容でも、何が何だか分からない今後の様子が見えた気がした。

気休めでもなんでも、苦しい「今の先」の道筋を見せてくれるのは占いだけ。誰も言ってくれない気休めが、生きていくのに必要なことだってある。

 

その対価は3000円だった。後悔はしていない。

 

してないけど、その後のリピートはしていない。今のところは。