夫は唐突に入院した。
でも、10年間の結婚生活の中で、おかしいと思う言動がたくさんあった。
そんな夫に振り回されてきた10年でもあった。
だから夫が精神疾患を発症し入院した時、とてつもない混乱の中にあっても、ようやく腑に落ちた、そう感じた部分も確かにあった。
そうか、あのひと、病気だったのか。
彼の嫌な部分の大半は、病気のせいだったんだ。だったら仕方ないな。
そう思って、少しだけホッとした、そんな自分もいた。
おかしいのは私の方かな。
いきなり夫が入院した。会話する事もままならない。
このひとこれからどうなるの。私たちはどうしたらいいの。
仕事はどうするの。得意先に何て伝えたらいいの。
フツーはそう思う。そう思って絶望する。
もちろん私もそうなった。夫が入院してからの数日間は無我夢中で、正直記憶が曖昧なところが多い。
混乱、混乱、混乱。不安、不安、不安。
眠れなかった。生まれて初めて精神安定剤なるものにも頼った。
そんな無茶苦茶な感情の中に、ほんの少し、一欠片だけ、だけど確かに安堵した気持ちもあったのだ。
夫は優しいひとだ。真面目で働き者で、子供が大好きで、すごく頭が良いのに、私の前でだけ甘えん坊になる、おっさんなのにやたら可愛い。
それなのに、まるで逆の様子を見せる時があった。そんな状態の彼に振り回され、そのたびに普段私や子供が慕う夫のほうがニセモノで、夫の真実の姿はこちらなんじゃないか、そんな風に心の底から思い悩むことが度々あったのだ。
けれど、私はそれを誰にも相談できなかった。とくに父母や兄は、チラホラ見える夫のおかしさに不信を持っていたから、それ以上悪い感情を持たれたくなくて、どれほど夫に振り回され悩んでいても、それに気が付かれないように立ち回らなければならなかった。それはほんとうに骨の折れる仕事だった。とてもとても辛かった。
だから夫が入院した時、それを実家や兄に報告した時、もう隠さなくていいんだな。って思ったら楽になったのだ。少しだけど。
これからはもう、悟られないように、気が付かれないように、取り繕ったりしなくていいんだな。だってもうバレちゃたもん。
そう思って、そのことだけは確かにちょっぴり心が軽くなった。
隠さなくていいということ、近しい立場の人に相談できるということ、それって救いなのだな。
つくづくと感じる。
とは言え、その「おかしさ」が、統合失調症という病によるものなのかどうかは良くわからない。なんて表現したらいいんだろう。幻覚とか幻聴とか、いかにも病気による症状ですッ、というものではなく、苛立ちとか憤りとか、人間がごくごく当たり前にもつ感情がこじれて表れた…、そんな感じだった。
おかしかった夫の言動については、長くなるので今日は割愛。いつかこのブログに書けるといいな。