■2006年12月 防衛省設置法等改正(防衛庁・省昇格法)
◇織田邦男(澤大学特別教授)
まさにこれはですね、戦後レジームなんですね。
防衛庁、国の骨幹であるいわゆる防衛組織をですね、各省庁よりも一段したにおいて、蔑ろにするということはね、みんなおかしいなと思いながら、放置する。

これを安部さんが果敢にね、第一次政権で改正するんですけれど、これには自民党の中にも反対派がいたんですね。3分の一が反対、3分の一がノンポリ
、3分の一が賛成。
だから、安部さんは反対派の人たちを一人一人説得して、それでも説得されない人もいたんですよ。
後藤田正晴とか野中広務とか、でもノンポリの人はみんな安部さんに従っている。
っで、過半数とってやったんですけれどこれもまさに戦後レジーム。大反対したのは朝日でしょう。

われわれは自衛官だったから、自衛官の現実の訓練とかとはあまり関係がないんですけれど、でも格下に見て法律が立法できないとかそこはおかしな話ですよ。



◇河野克俊(前統合幕僚長)
防衛庁というのは内閣府の外局、織田さんが言われたように独自の予算編成ができないとかね、法律が云々とかあるんですよ。
言えば、省ではないので格下なんですね。
橋本内閣のあたりで厚生労働省なんてできましたよね。
いろんな省庁再編があって、その時に環境庁が環境省になったわけです。
ところが、防衛庁だけはそのまま据え置きだったわけです。
その当時の自民党の中には相当強い戦後レジームを背負っていた人がいたというわけですね。
それを突破されたのが安倍総理だったわけですね。


■2013年12月 国家安全保障会議(NSA)発足
◇織田邦男(澤大学特別教授)

 もともと安全保障会議というのはあったんです。この時も後藤田正晴さんが『国家』をとれといったんです。
後藤田さんというのは戦前にね、警察と陸軍の中がとくに仲が悪かったわけです。
それで痛い目にあった、その感情はわかりますよ。だから、『国家』をとれ。安全保障会議に国家をつけるかつけないかでは大きな違いがある。
ディプロマシー、ミリタリー、インテリジェンス、エコノミー、総合的な安全保障なんですね。
そして、国家というのは総力をあげて日本を守るという体制。これは……「ゆるさん!」ということなんです。

これを認めると、また軍が独走する。
よほど痛い目にあったというのはわかるんですが、このNSCができることによって、日米同盟というのは緊密化されたわけです。
だってNSCは向こうはあるのに、カウンターパートがなかったんですね。カウンターパートがいないのに、どうやって緊密化の協議をするんですか。
だから、NSCをつくって外交、防衛、インテリジェンス、経済、すべてを合わせて国家として日本をどのように守っていくかという枠組みをつくったというすごいことですね。(安倍総理の成果として)

◇河野克俊(前統合幕僚長)
いまの若い人たちは抵抗ないと思いますけれど、私たちが若いころ、これも戦後レジームなんですけれど国家、国益などは禁句だったのです。
この国家というのにもアレルギーがあったわけです。
国益なんて言ったらとんでもない、侵略戦争につながるだとかねそういう話なんですよ。
それが是正されたんでいい方向にむかっているかなって感じなんですが。

◇織田邦男(澤大学特別教授)
いかに異常だったかということですね。戦後レジームというものが、それを正常にしようと努力されて、本当に頑張られたのが安倍さんだったと思いますよ。

現政権における国家安全保障会議の体制っていかがですかね。
それがいかしきれていないのではないか。だって、ウクライナ戦争が起こるってこれは、戦後最大の危機だと私は思いましたよ。


すぐ安全保障会議をひらくんだろうなと思ったら、4日後ですからね。
それで、この間のペロシの訪台の時に、ミサイルを5発も排他的経済水域に打たれましたよね。当然召集されているはずが、されていなかった。
だから、まだ生かし切れていない。
岸田さんの頭には、まあ余裕がないのかもしれません。
安全保障そのものやはりすぐ所要の閣僚を集めて意見交換してアメリカとどう対応していくか、で頭ぞろいをするということは非常に大切ですね。

◇河野克俊(前統合幕僚長)
私が現役の時は安倍政権ですね。正確にカウントしたわけじゃないですけれど、私の感覚としては週に1回は開いたように感じますね。
安全保障会議って、すくなくとも北朝鮮のミサイルとくると必ず招集。

■2015年9月 安全保障関連法案 成立
◇織田邦男(澤大学特別教授)

これは大きいですよ。憲法をね改正すれば一挙につり合いがとれるんですけれど、憲法を改正しないでギリギリまでね、どこまで現行憲法までね安全保障が保てるかというそのための法律ということで、これは岡崎久彦(外交官)さんが言われた日米関係を対等にするにはね、互いに集団的自衛権をフルでねやるべきだと常に安部さんにも申告を申し上げていたと聞いておりますが、やっぱりそうだと思うんですけれどもね、同盟というのはねトランプが言ったように日本が攻撃されたらアメリカの若者が血を流しながら日本を守るけれども、アメリカが攻撃されたら日本人はソニーのテレビを見ながらリビングルームで観戦してるじゃないか。
こういうふうになるわけなんですよ。でも、このトランプ政権の前にね、支持率13%下げながら強行採決だったでしょうね。
これをやったことによってですね、トランプ政権がうまくいくんですよね。
ギリギリ間に合ったというところですよ。これをやるにはものすごく犠牲が出ているんですね。
当初、集団的自衛権はね解釈でもってこれを認めたいといったら法制局は大反対ですよね。

法制局、全員辞職しますと言ったらしいですね。これだと内閣がもたないなということで、法制局長官をかえなきゃならない。

これは李登輝総統のやり方だと思うんですけれどもね、出世させて事実上の更迭、当時の法制局長官を最高裁の判事に置くんです。

李登輝さんもね政敵をね官職のねかっこいい職におくっていうね、うまくね安部さんも同じことをやった。

理論的支柱をしっかりされた小松一郎(内閣法制局長官)さんは、ガンだったということを分かってて、でも小松さんも国士ですよね。最後は末期ガンで車いすで国会の答弁をされましたよね。
それで、知恵の限りを尽くして大反対の中でねやり遂げた、だから彼は戦死ですよ。
国のために、現行憲法で解釈できるギリギリまで落とした法律を実現させた。

だから、彼がガンであるということを安部さんも知ってたんですよ。やっぱ、国のためにがんばってくれた。
我々は最高指揮官の安部さんにお付き合いしたというすごみがありましたよ。
非常に自衛隊に対しては理解はあるんですけれど、その陰にはですねいざという時には死んでもらうぞ、頼むぞすごみがありましたね。
まあ、小松さんも最後までやりますと車いすで国会で答弁するとは歴史に残る仕事をされたなと私は思います。

◇河野克俊(前統合幕僚長)
安保関連法に関してですけれど、この法律って非常に複雑なんです。いろんな法律、自衛隊法もふくめて改正とかね、新法とかそういうのミックスしたワンセットなんですよ。
安保関連法自体は複雑にはなっているのですが、日米同盟という観点からポイントは2つだけなんです。
一つは平時から、いつもの普通の時からアメリカの軍艦とか飛行機を日本の自衛隊が護衛することができるようになったんですよね。

これはですね、現時点でずっとやっているんですよなので私が軍の高官からですね、非常に感謝もされ目に見える形で日本がアメリカを守る形になっているわけなんです。
なので、日本はかわったと言われましたよね。
もう一つは、集団的自衛権なんですけれどおそらく安倍総理は同盟というのは集団的自衛権で成り立っているということを重々承知で、本来そうあるべきだとおそらくおもっていたわけなんです。
ただし、安保関連法でやったのは限定的集団的自衛権の行使。それっていうのは、日本がこのまま放置した日本の国民の生命、財産となんとかが根底から覆される事態に、予想されるんであれば日本が攻撃されていなくても親しい国のために一緒に戦うことができる。
条件を飲ませているわけなんですよね。
現法憲法でいえばここまでだといういろんなところのアドバイスで、安倍総理というのは理想はゆるぎないのですけれど、しかし徹底した現実主義者なんです。

私がお使いして感じるのはですね。
本来であれば、フルの集団的自衛権をやるべきだと私は感じているんですね。

しかし、これでいこうというお考えだと思います。

◇織田邦男(澤大学特別教授)
私は最高指揮官だと思うのはね、人が集まってくるんですよね。優秀な人が集まってくるんですね。
優秀な人を彼が連れてくる。歴史的な事柄をした人はどれだけスタッフが優秀かということですよ。
自分一人ではなにもできないんですからね、武田信玄が言った有名な言葉にですね、「余は人を使うのではない、人の力を使うのだ。」あの人のためにはね、もう死に物狂いの力を協力するぞというすごいスタッフがそろっていましたね。
本当に安全保障法制のブレーンがそろっていました。そして、演説一つにとってもですね、スピーチライターのね、英語でも日本語でもすばらしいのがいましたよ。

そういう意味では本当の指揮官だったんだなと、指揮官ぶって怒鳴り散らしたりする首相もいましたよね。
六方文書をめくってみたら、「なんだ、俺が最高指揮官か」なんて自衛官の前でいってみたりいましたが、天性のいわゆるものを持っていたんですよね。
惜しい人をなくしたなと思いますよ。








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解説者:居島一平 

コメンテーター(敬称略):
井上和彦(軍事ジャーナリスト)
河野克俊(前統合幕僚長)
織田邦男(澤大学特別教授)