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ラスカル~ぅっ次女A



京都市中京区の世界遺産・二条城で18日、アライグマが初めて捕獲された。ここ数年、アライグマが文化財を傷つけたり、農作物を食い荒らしたりする被害が全国的に急増している。

二条城でつかまったのは、体重約8キロのオス。3月5日に国宝・二の丸御殿の車寄(くるまよせ)の天井裏にアライグマのものと思われるふんが見つかり、建物の外壁や柱約50カ所につめ跡や足跡があったため、捕獲用のおりを設置していた。

京都や奈良の寺社は、次々にアライグマの被害にあっている。京都府では、宇治市の平等院鳳凰(ほうおう)堂(国宝)で昨年春ごろ、回廊の柱に10カ所ほどつめ跡があった。木津川市の浄瑠璃寺では2008年秋、重要文化財の仏像が傷つけられた。京都市内の大覚寺や清水寺でも足跡やつめ跡などがあったほか、世界遺産の奈良・東大寺でも大仏殿や二月堂などの柱につめ跡が残っていた。


京都府教育委員会によると、つめ跡、ふんや尿が確認された寺社は府内で300以上。担当者は「アライグマは壁に穴を開けるなど、イタチのようなほかの野生動物より被害が大きい」と話す。


アライグマは繁殖力が強く、雑食で環境への適応力も高い。生息範囲は急速に広まっているとみられ、10年ほど前から目立ち始めた農産物への被害は、ここ5、6年で急速に拡大している。


農林水産省によると、スイカやメロン、カキやブドウを食べるなど、08年度の被害額は全国で約1億9600万円で、00年度の約5倍。08年度の被害が約6500万円と全国で最大だった兵庫県では、イチゴ、ブドウなど単価の高い作物の被害が目立つ。


アライグマはさまざまなものを食べる。和歌山県みなべ町では5、6年ほど前から、海岸のアカウミガメの卵が食べられている。同町教委によると、昨年は約50カ所で被害が確認された。「ここ2年ほど産卵が増えているだけに心配だ」と担当者。


北海道では固有種のエゾサンショウウオや絶滅の恐れがあるニホンザリガニが食べられ、アオサギの営巣地が襲われた。神奈川県の三浦半島でも絶滅危惧(きぐ)種のトウキョウサンショウウオが食べられた。

各地で被害防止への取り組みが進んでいる。


鳥獣被害などの調査をしている関西野生生物研究所(京都市)は17日、京都府亀岡市で捕獲したメスのアライグマに発信機付きの首輪をつけて放した。同市と大阪府能勢町で計10匹に発信機をつけ、1年間かけて行動範囲などを調べる。生態を把握し、捕獲につなげるためだ。


北海道は03年、「野外からの排除」を最終目標にした「アライグマ対策基本方針」をつくった。捕獲数は年々増えて08年度は3192匹。一方、05年度に約4800万円だった農業被害は、08年度は約3200万円に減った。


北海道大学大学院の池田透教授(保全生態学)は「このまま放置すると、在来の生物の中には最悪、絶滅するものがある。アライグマに罪はないが、野外からの根絶が必要だ」と指摘している。(西江拓矢)


〈アライグマ〉1970年代に放送されたテレビアニメ「あらいぐまラスカル」の影響などでペットとして飼われるようになったが、もともと野生動物で気が荒く、飼いきれなくなった人が捨てるなどして野外で繁殖したと見られている。2005年施行の外来生物法で、生態系や農水産物に被害を与える特定外来生物 に指定され、原則として輸入や飼育が禁止された。