2020 AUTOBACS SUPER GT Round7 FUJIMAKI GROUP MOTEGI GT 300km RACE 

ツインリンクもてぎ 4.801km×63Laps=302.463km  

GT500 class winner:ARTA NSX-GT 野尻 智紀/福住 仁嶺

 (ARTA/Honda NSX-GT)

GT300 class winner:リアライズ日産自動車大学校GT-R 藤波 清斗/João Paulo de Oliveira

 (KONDO RACING/NISSAN GT-R NISMO GT3)

 

 2020年のSUPER GTも残り2戦。このレースでは全戦出場している車両はハンデがGT500はポイント×1kg、GT300は×1.5kgとなります。GT500は51㎏以上になると燃料流量リストリクターの縮小が併用されますが、今季はポイントの獲得状況がばらけて51点に誰も到達しなかったため、全車見たまんまの数字のハンデを背負っての走行です。

 そして、選手権で2位に付けているKeePer TOM'S GR Supraはニック キャシディーがフォーミュラE参戦の関係で日本を離れてしまって不在のため、代走として昨年のGT500チャンピオン、今季はWECに出場するためGTには参加していなかった山下 健太が起用されることになりました。

 

 GT300クラスでは、前戦のフリー走行でたかのこの湯 RC F GT3がクラッシュしリアを大破しましたが、チームはトヨタとも話し合い、修復では無く別車両の貸与を受けての参戦を決断。借り物RC Fで残る2戦を走ることになりました。リアに貼られた244のゼッケンの隣に、レンタカーだからというジョークで「わ」と貼ってあるんですが、あんまりゼッケンで遊ぶとまずいからか、白いデカールが小さく貼られてるだけなの言われないとまず気付かないですw なお、タダで車両交換できるわけではなく、ペナルティー停止15秒が課せられます。

 また、前週のスーパー耐久のレースでクラッシュして高木 真一が負傷したため、ARTA NSX GT3は代役として松下 信治を起用。松下はFIA F2に参戦していましたが、クラッシュが原因で修復費用が捻出できなかったとみられ、シーズン途中でのシート喪失となっていました。屋根のある車でのレースは初体験です。

 

 予選、GT500はModulo NSX-GTがPP獲得。第3戦鈴鹿以来今季2度目のPPです。2位にARTA NSX-GT、3位RAYBRIG NSX-GTとNSXが上位を独占。MOTUL AUTECH GT-Rが4位となり、今季初めて予選でスープラが4位以内に入りませんでした。

 

 GT300ではSUBARU BRZ R&D SPORTがPP獲得。前戦はSC導入のタイミングで泣いて優勝を逃した上に入賞すらできなかったので、今回はやり返したいところです。2位にレンタカーのたかのこの湯RC Fですがペナルティーがあるので実質後方、選手権で2位につけるGAINER TANAX GT-Rが3位ですから、実質2位スタートとなります。選手権トップのLEON PYRAMID AMGはウエイトが半減してもなお77㎏と重い上に、AMGはそんなにもてぎで強くもないので予選20位です。

 今回富田 竜一郎を起用した植毛ケーズフロンティア GT-Rは富田がQ1で期待通りのタイムを出してQ1を突破、Q2はビリでしたが予選16位に付けます。車そのものはきっちり仕上がっており、プロが乗ると他のGT-Rと対等なタイムを出せることが良く分かる場面でした。

 

 スタート、GT500では後方は無理に車間距離を詰めてスタート直後に大きく上げてやろう、というトレンドでは無いのか今回もやや離れ気味、1周目に変動したのは9位、10位の場所だけで後は全員スタート順位のまま帰ってきました。

 GT300はたかのこの湯とGAINERの争いですが、前述の通りペナルティーを受けないといけないためRC Fは2周を終えてピットへ。BRZの後に続くのはGAINER GT-R、RUNUP RIVAUX GT-R、リアライズ 日産自動車大学校 GT-Rと3台のGT-R。BRZからすると、あまり近寄られると直線で抜かれるので適度な距離を保っておきたいところです。

 

 GT500のトップ、Moduloは9周目に一度目のGT300との遭遇を終えましたが、最大4秒以上あった2位ARTAとの差は無くなり、10周目のターン1~2でARTAがトップ立ちます。Moduloは今季何度も見たペース劣化で苦戦、ARTAは逆にコース上最速で逃げて行きます。12周目にRAYBRIG NSX-GTもModuloを抜きますが、既にARTAとの差が7.5秒とどえらい差( ゚Д゚)

 そして選手権上位勢では、10位スタートのKEIHIN NSX-GTが7位に上げてなおも前を追い回す展開。しかし6位のZENT GR Supra立川 祐路がベルトラン バゲットに立ちはだかりました。自分の選手権もそうですが、トヨタとしてもここでホンダ勢トップのKEIHINに楽をさせないのは重要です。

 

 17周目、4位以下の集団で大きな変動。おそらく植毛に詰まったMOTUL AUTECH GT-Rが少し早くブレーキを踏んだせいだと思いますが、5位のWedsSport ADVAN GR Supraが前に合わせた一方でZENTが深く入っていって外からWedsSportを抜くと、そのままの勢いで翌周のターン1でMOTULも抜く大立ち回り。22周目の90度コーナーではModuloも大外刈りしなんと5周ほどの間に3台抜いて表彰台圏に入ります。またこうした動きで順位が複数変動し、その中で代走やまけんのKeePerが7位に浮上、チームメイトのau TOM'S GR Supraより前に出ました。

MOTULに毛が詰まった MOTULが植毛GT-Rに詰まったことをきっかけに大混乱

 

 GT300はBRZがここまで無風、GT-R同士の2位争いはRUNUPが2位、GAINERが3位、リアライズは4位ですが前から15秒以上離されて別のレースになっています。

 23周目、V字コーナーの先(と言っても中継映像でパッと見ただけではどこだかよく分からなかったが)のコース脇に、マッハ5G GTNET MC86 マッハ車検がトラブルで止まっており、特に車がぶっ壊れたとかでもないですが、移動のためSCの可能性あり。ここでGT500で真っ先にARTAがピットへ。2位のRAYBRIGと13秒差だったので安泰な状態ですから、SCリスクを考慮したかもしれません。4位のModuloもこの周で入ります。

 するとなんとこのリスク管理が吉と出ます。SCが導入されました。GT500はこれで再度どこかでSCが出ない限り、トップ2は決まってしまった感じです。今回はタイミング的に、GT500は走っている全車両に、ピットに入るかどうか考える時間が1分以上あり、全員入ろうと思えば入れるタイミングでした。ペースの落ちていたModuloはギャンブル、リードが大きいのでいらんリスクを背負いたくないARTAは逆に安全策で動けましたが、他のチームは

SCリスク<SCが出なければ後半の距離が予定より長すぎるリスク

と考えて入らなかったと思われます。私もSCが入ったのはけっこう驚きでしたが、理由は簡単に言えば、

 

・場所的に安全とは言い難いコーナー出口のアウト側

・FROで牽引すると、次の脱出口まで距離がやや遠い

・駆動系トラブルのため牽引できないおそれがあり、既にドライバーは降りている

 

とこういった観点から、重機を入れて連れて行くことに決まったとのことです。

 

 ところで、マッハ号は今回エントリー名が前戦までのマッハ車検 GTNET MC86 マッハ号から変更されました。なぜ急に第5世代通信規格になった(?)のか謎ですが、『マッハ車検』と、スポンサー名で名前が終わってるのもかなり珍しいケースです。『マッハ号』も厳密に言えば車両名でもスポンサー名でもないですが、今季の参戦車両で、名前の最後が車両名でもチーム名でもないのはこの車だけ、たぶん過去を見てもあまり例が無い珍しいパターンです。

 話を戻しましょう、もっと大変だったのがGT300で、グッドスマイル初音ミクAMG、リアライズGT-R、LEON AMG、など計12台しかピットを終えていない状況。BRZはまたもSCで貧乏くじを引いてしまいました。ただ、前回の鈴鹿と違ったのは、一生懸命走っていたおかげでLEON以下はSC時点で周回遅れになっていたことで、これによりLEON以下はSC前に入ったことで逆に大きな損失となり、BRZは彼らよりは実質まだ前の位置、実質3位にはいるということです。

 映像を見返すと、映ってはいませんがピット作業を終えたLEONの近くからBRZがストレートを走っている音がするのと、SC時にBRZの後ろにLEONがいたのでLEON以降のピット組が全員周回遅れだったのは良く分かりました。仮にBRZの前で戻っていればLEONが3位以内確定だったんですが、数秒の差だったと思われます。チームはSC目当てで入れたのではなく、タイヤ無交換で空いた場所を走りたくてピットに入れたら、予想外にSCが出てしまった、ということだそうです。

 

 

 29周目、見た目上RAYBRIG、ZENTの順でリスタート、するところでしたが、それより前にSCが走り去っていった後の90度コーナーでZENTがブレーキを頑張りすぎてコース オフ。しかしまだ追い抜き禁止なので後続はこれを抜けず渋滞し、そのままZENT以下の7台がピットに飛び込みました。

 RAYBRIGは1周遅らせてピットに入り、リスタート前の混乱もあって楽々とSC大損組の先頭=3位へ。4位にはこちらも混乱を避けてRAYBRIGと一緒に入ったRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GT。SCと同時に入った組ではMOTUL GT-RとKEIHIN NSXが抜け出し、KeePerが続く展開で彼らが5位~7位です。

 

 一方GT300はリアライズが初音ミクをハゲしい争いの末にパスしてトップへ。ミクさんの体にお触りしたのでジョアオ パオロ デ オリベイラはきっとファンから不評を買ったことでしょう(^-^; そしてSCで損した組では、タイヤ無交換の埼玉トヨペットGB GR スープラ GTがリア2輪交換のBRZをかわしてここが3、4位争いをしています。

素晴らしきJAF-GT300車両の2ショット。来年から規定名のJAFが消えて「GT300」という規定の名称になりますが、クラス名と重複してて分かりズラいので、たぶん通称は『JAF-GT』のままになるでしょうね。

サッシャ「伸びて来るのはGT-Rか! 植毛も上位争いしてこの実況してほしいな~w

 

 48周目、GT500の5位争いでKEIHINとKeePerが相次いでMOTULを抜きます。NSXはこれで1~5位まで独占。MOTULはピット作業とミシュランのタイヤ作動の早さが機能して前にいましたが、どうももてぎとGT-Rの相性自体があまりよろしくないようで徐々に下げる展開が前半、後半とも起こりました。

 

 ミシュランは低荷重であまり性能が発揮されないという話があります。逆に、横の高荷重が少ないため、もてぎと、今のカレンダーだとチャーン インターナショナル(タイ)は、他よりもダンロップ、ヨコハマという他では苦戦しがちなタイヤでも善戦する傾向があります。フォーミュラでも、シャシーをどんどん新しくできる上位チームと使い続ける下位チームの差は、鈴鹿では出やすくてもてぎは出にくい、なんて話があります。

 

 GT300ではスープラとBRZが争っているところに四輪交換で追い上げて来たGAINER GT-Rが追い付いて3台の争いに。タイヤが新しい上に直線が速いGT-R、これは大チャンス!でしたが井口卓人がミスのない粘りの走りで4位を維持します。後ろが争ってくれてスープラの吉田 広樹はちょっとラッキー。

 

 残り5周、RUNUPも追いついて4台になった4位争いで事件発生。ターン5への旋回途中でBRZがGAINERに押されてしまいスピン。BRZは6位へ後退、RUNUPがこの隙に4位に浮上します。GAINERはこれでレース後に30秒加算のペナルティーを受けて9位となりました。押されたBRZの井口は「コーナーの真ん中で遅すぎて当たったと思うので申し訳ない気持ちもあるけど、もうちょっと距離をとってほしかった」という旨のコメント。私もGT SPORTで遅すぎてだいたいそうなるから良く分かります。え、一緒にするなって?

 

 

 一方トップ争いはリアライズが一旦は離しかけたものの、2輪交換の初音ミクとペースが拮抗からやや劣勢となり1秒前後での争いになっていました。ただここで状況は膠着し再終盤へと向かいます。

 

 結局GT500はARTAが独走でフィニッシュ。2位のModuloとは約40秒差での大勝でした。3位からRAYBRIG、Red Bull、KEIHINとNSXがトップ5を独占。6位にKeePer、7位MOTULでそれぞれスープラとGT-Rの最上位でした。

 RAYBRIGはピット後はModulo NSXと1分5秒も差があったんですが、終わってみたら24秒差。だいたい40周で40秒詰めたわけで、レース ペースではModuloは明らかに苦しい立場だったと思います。

 フィニッシュ時点でModuloから見て1分以内には周回遅れになったauスープラ以外全車入っていたので、もちろん後ろを見て走ってたのでこれで全力ではないでしょうし、もう1回SCが出た時のためにタイヤを残したかもしれませんが、見た目上はコース上のほぼ全車、後半のレース実質的時間はModuloと同じ、ないしは短かったということになります。ピットに入った恩恵は絶大でした。

 GT300はリアライズが逃げ切って初音ミクは届かず。そして3位争いは残り2周の90度コーナーで仕掛けたRUNUPが最終周のターン2までかけてスープラをかわし、前回のもてぎでガス欠により逃した優勝の悔しさをいくらか取り返すことができました。チーム初表彰台です。

 またもやSCの導入がレース結果を分けてしまいました。安全が最優先ですし、その時々で誰が恩恵を受けるかは変わりますし、たまたま応援していないチームが勝ったからっていちいち「運営が〇〇の味方をしている」「クソ運営やめろ」などの言い方は間違っています。全ての事情を理解した上で、具体的な問題点を指摘して批判するのと、感情で叩くのは全く別の話です。

 今回GT500は速い人がうまく対処したので、優勝という点ではSCの有無に関わらずARTAだった可能性が高いですが、速かったのにあっさり優勝を取り上げられた、しかも2戦連続で起こってしまったR&D SPORTは無念でならないでしょう。ファンの方も同様だと思います。FCY制度があれば、と思う場面がやたらと多いですね。

 FCYついて毎回のように「なぜまだできないのか」という意見が出てきます。当ブログでも何回か書いていますが、要因とよくある疑問についてざっくり箇条書きすると

 

・日本では電波法の問題でテレメトリーが使えず、車両の常時速度監視ができない

・スーパー耐久で導入されているのはセクタータイムから平均速度を割り出す、言うなれば『簡易式』で管理しているので、導入時にいたセクターできちんと発動と同時に減速していたか、等を把握できず絶対的公平性を担保できない

・F1等でテレメトリーを使えるのは、国際的イベントに協力する場合限定的に求められる特例のため

・代替でWi-Fiを使ってシステムを作ろうとしているが、ラグの問題を完璧に解決できず実装に至らない

 

といった感じです。「スーパー耐久ではやってるんだからやる気がないだけ」とかの意見は完全に間違いなので、そういうことを言ってる人がいたら教えてあげてください。

 

ドライバー選手権は、まずGT500はえらいことになり

No. ドライバー ポイント
17 塚越 広大/ベルトラン バゲット 51
37 平川 亮 51
23 松田 次生/ロニー クインタレッリ 49
100 山本 尚貴/牧野 任祐 49
8 野尻 智紀/福住 仁嶺 48
14 大嶋 和也/坪井 翔 47
36 関口 雄飛/サッシャ フェネストラズ 45
39 中山 雄一 42
38 立川 祐路/石浦 宏明 37

※ニック キャシディーが46点だが、事実上関係ないので省略

すごい僅差( ゚Д゚) 1位 20点、2位 15点、予選のPPは1点ですので、大嶋/坪井組までは優勝すれば無条件でチャンピオンという状態。ハンデ無しの最終戦ではこの人たちの誰かしらは優勝争いに確実にいるでしょうから、レース展開次第で、この人は勝てば決まり、これだと1位、2位ならまだ2位の人がチャンピオンだけど3位に落ちると、とかいうことになりそうです。

 

一方GT300は

No. ドライバー ポイント
56 藤波 清斗/ジョアオ パオロ デ オリベイラ 56
65 蒲生 尚弥/菅波 冬悟 51
11 平中 克幸/安田 裕信 43
52 吉田 広樹/川合 孝汰 41
61 井口 卓人/山内 英輝 41
55 大湯 都史樹 41

 

リアライズGT-Rの2人が2勝目を挙げてトップへ。GAINERは5位でそのままゴールしていてもあと5点追加できたのでかなり勿体ない追突でした。最終戦の富士はGT-Rが強いですが、開幕戦ではスープラがタイヤ無交換で優勝しており、持って行くタイヤにもかなり左右されます。他の車でも勝てる候補がいくらかいますし、優勝という点では見極めが難しそうです。

 リアライズとすれば、5点勝ってるので競争相手の動きを見て戦略を決めて近くにいさえすれば良いのがメリットですが、不安なのはチーム監督の近藤 真彦に不倫報道が出てしまったことでしょうか^^; 15点差の41点で3台並んでおり、トップとの差や状況を考えるとこれをひっくり返すのは現実的ではないですが、もしこの車に何かあって入賞圏外になったとすると、LEONとの10点差は、勝てばLEONも3位以内が必須になりますからひっくり返せる範囲にギリギリ入ってきます。こちらも最後まで目が離せないと思います。

 

 富士ではGT300のウラカンとR8がやたらタイヤを壊して緊急ピットするので、こうした突発的デブリーによるSCがレースに影響しないか気がかりですが、出たら出たで運命として受け入れるしかありません。これでBRZに味方して大逆転チャンピオンならすごいドラマですが、そんなこと、、、結構GTだとありそうな気がするな^^;

 

 次戦は最終戦富士です。寒そうです!雨は降らないで!!