Formula 1 Aramco Grosser Preis Der Eifel 2020
Nürburgring 5.148km×60Laps=308.617km

winner:Lewis Hamilton(Mercedes-AMG Petronas F1 Team/Mercedes-AMG F1 W11 EQ Performance)

 

 F1第11戦はドイツ。名称が『アイフェルGP』となっているのは、本来ドイツが今年の開催国に入っておらず、緊急事態で急きょ組み込まれていつもと主催者さんが違うことが理由。平たく言うと権利問題、大人の事情というやつです。

 

 このレースの1週間前、ホンダが2021年限りでF1活動を終了すると発表しました。これだけで記事一本書けそうなので細かい感想は機会があれば、としますが、参戦の際には「出たり入ったりしないで長期的にコミットしたい」「またやめる印象を受けるので"第4期"とは言わないでほしい」といった趣旨のことを言っていたのに、会社をどういう方向に持って行きたいかの中長期のビジョンがあまりに混乱していないか、と、レース好きというよりは、企業活動、自動車会社の立ち位置という意味で疑問が多かったです。

 

 さてレースに戻りましょう。10月のニュルは肌寒くて天気も不安定。実はハイブリッドPU制になって以降ここでF1は開催されておらず、各チームともデータが欲しいところでしたが、金曜日のフリー走行はキャンセルされて土曜日の60分の走行枠だけで予選へ。レーシング ポイントはランス ストロールが体調不良でなんとそのFP3すら走れずに、結局予選でニコ ヒュルケンベルグが代役で登場。テレビ解説の仕事で来るはずが、レースに出ることになってしまいました。ちなみに、チームのリザーブ ドライバーはストフェル バンドーンとなっているんですが、こういう時乗せてもらえません。現場にいたらしいですが。。。

 

 隣国ベルギーでのDTMと同様、肌寒くて雨の予報もある予選。バルテリ ボッタスが会心の走りでPP獲得!ルイス ハミルトンはめズラしくQ3の1回目のアタックで3位に留まりましたが、2回目でさすがに2位へ。それでもボッタスに0.25秒も離されてしまいました。そこに僅差でマックス フェルスタッペンが3位。アレクサンダー アルボンは4位でフェルスタッペンに続けるかと思いきや、FP3から比較的調子が良さそうだったフェラーリのシャルル ルクレールが最後に4位に滑り込みました。ヒュルケンベルグはさすがにいきなりすぎてビリ(^-^;

 メルセデスに関しては、Q2の1回目をミディアムで通過しに行きましたが、ハミルトンは結果的に通過できるタイムを出した一方でボッタスは不発。で、2人ともソフトに換えてタイムを更新しました。レッド ブルの動きを見て、フェルスタッペンがソフトだったからスタートで負けるのを嫌がって変えた、というような説明が予選後になされていましたが、ボッタスがミディアムでは通らない→ソフトを使う→ハミルトンと戦略がばらけてしまう→ハミルトンも合わせる、という大人の事情もあったのでは?と思える動きでした。

 スタートは偶数グリッドのイン側の人が揃って好発進、ハミルトンがボッタスに並んでターン1に入りましたが、深く入ったハミルトンに対し、ボッタスはクロスではなく並走を選んだので出口で完全に白線の外側へ。あらあ、ボッタスやっちまったか、と思ったら引かずにコース外から戻ってきてターン2でハミルトンのインに入りこみ順位を維持しました。ハミルトンもさすがに戻る場所を与えないほどの厳しいことはしませんでしたね。本当は追いだした時点でマズいわけだがまあスタートは多少は仕方ないです。ターン3ではアルボンからミサイルが発射されそうになりましたがギリギリこらえました。

 トップ3が1分32秒0近辺で走る中、ルクレールは2秒以上遅いペースでフタ発生。スタートでダニエル リキャードに抜かれて順位を下げたアルボンは詰まってるしミサイル未遂でタイヤ傷めたし、で7周終わりに早くもピット、最後尾へ。前にもこのパターン見たなあ、またタイヤ3種類コンプリートにならなきゃいいけど^^;

 

 かたやリキャードは9周目のターン1からの攻防でルクレールを処理して4位へ。ルノーが前3台を捕まえるのは現実的ではないので、彼の仕事はこの4位を維持して最後まで走ること、となりそうです。それにしてもこのサーキット、DTMか、GT SPORTで見るぐらいなので、F1が走ってると早送りに見えますw

 

 各陣営からちょろちょろと軽い雨予報も出てきて、実際僅かに雨粒が見える中で13周目、ハミルトンがすこーし間合いを詰めてきたことを気にしたのか、ボッタスがターン1で止まり切れず、この隙を見逃さずにハミルトンがリードを奪います。

ボッタス、たまらずこの周を終えてピットへ。慌てて入ったせいもあってボッタスはリキャードの後ろでコースに戻り、すぐにペースを上げられません。というか、ペースを上げると抜かれたボッタスがハミルトンを再度アンダーカットしかねないため、メルセデスの戦略ポリシーに反して面倒なことになります。

 

 同じころ、今回F1通算323回目の出走で新記録となったキミ ライコネンがターン1でミスってジョージ ラッセルを吹っ飛ばしてしまいます。ライコネンには10秒ペナルティー。

2周ほどした16周目になって、コース脇に止められたラッセル車のお片付けのために遅ればせながらVSC発令。ハミルトンとフェルスタッペンがこれ幸いとタイヤ交換。ボッタスは一人負けみたいになりましたが、あろうことかこの2周後にボッタスはパワー低下の症状で失速。デフォルトによる修復を試みますが残念ながらリタイア。踏んだり蹴ったりのレースになりました。

 

 VSC解除直後には、アルボンがダニール クビアトを抜きに行きクビアトがシケインをカット。これで最終コーナー手前でかわした、まではよかったんですが、完全に相手がクリアーになっていないのに外へ寄せたせいでクビアトのウイングを踏んづけてしまい、クビアトのウイングが脱落します。これはやっちゃダメなやつだし、ましてやチーム内でしょ。。。

『♪デデーン クビアト~、タイキック~』

クビアト「いたーーーい!!!!!(T T)」

 

※想像です

 

 22周目、アルボンは今度は勢いよくピエール ガスリーに対してターン1で突っ込みますが明らかに無理な飛び込み。ガスリーが避けてくれたから当たらずに済んでると思うんですが、アルボンは無線で「あいつら俺に対してすげえハードにレースしてきやがる」。この後アルボンはトラブルでリタイアしてしまいました。とりあえず裏で自分のやったことを映像で確認しておきましょうね^^;

 

 何だかぐちゃぐちゃになったレース、メルセデスとレッド ブルから1台ずつ消えているので、他の人が表彰台に乗るチャンスです。リキャードは2ストップ戦略組でトップですが、前方にランド ノリス、セルヒオ ペレス、カルロス サインツの3名が1ストップらしき状態で引っ張っています。その中でノリスはPUに問題が出たようでペレスが接近。引っかかる前に28周終わりでペレスはピットへ。サインツの方はリキャードのアンダーカット阻止でピットに入ります。ただ、ペレスはうっかりガスリーの後ろで戻ってしまいせっかくの新品タイヤが台無し。翌周にノリスが相変わらずPUの問題に直面しながらカウンターでピットに入り、ペレスの前に戻ることに成功します。

 

 これでノリスは戦略上はうまく行きましたが、肝心のPUの方が不調。バックストレッチの終わりで早々にクリッピングを起こしてペレスにかわされてしまいました。エンジニアからずっと「ディフォルト03」の指示が出てるんですが、直らねえよ、やり続けてくれ、の会話無限ループ状態です。故障でデフォルトを押さないとMGU-Kからの回生が得られないので毎回操作が必要なのでは?とは川井 一仁の解説。なるほど。。。

 

 ハミルトンとフェルスタッペンは8秒差あたりでペースが膠着。ペレスはコース上でルクレールと良い争いを見せて4位となり、3位のリキャードを追います。リキャードは意地で1ストップで走り切ってしまうかもしれませんが、タイヤがもつか分からない上にそのうちペレスに捕まりそう。ところが44周目、ノリスがとうとう停止。VSCが出るのではないかとピットが慌ただしくなります。するとVSCどころかSCになりました。

むかーしこういう感じでくつろいでた人がいたなあ、名前なんだっけ、あ、アロ、う、頭がっっ!!

 

 これで多くはタイヤ交換、追い詰められていたリキャードもソフトに交換できて幸運な展開です。ペレスは当初ステイ アウトして3位に上がりましたが、後続がこぞってソフトに交換、グダグダになるおそれがあるので1周遅れてこちらもソフトへ。サインツには抜かれず4位を維持してリスタートを迎えます。

 

 肌寒い条件、SCの後ろについて走るとタイヤの熱は逃げる一方なわけで、ハミルトンはお馴染みSC遅いぞ煽り運転。6位以下は周回遅れになっていたのでルクレール以降の人たちはウエーブ アラウンド、その間高速走行でタイヤに熱を入れることができます。ステイアウトした6位ルクレールと7位ロマン グロージャンはアタックチャンス。

 

 50周目、残り11周でリスタート。タイヤの冷えた上位勢はよれよれしていますが、慎重にこなします。ルクレールはミディアム装着&車がそもそも遅くて全然アタックチャンスになりませんでした(´・ω・`)

 結局レースはこのままチェッカーへ。最後はハミルトンとフェルスタッペンが、チャージしてアタック、とファステストを狙いあう感じになり、このファステスト競争はフェルスタッペンが制しました。しかし優勝はハミルトン、これでF1通算91勝目、ミハエル シューマッハーが持つ歴代最多勝記録に、シューマッハーの母国ドイツで並びました。本来ならドイツでのレースは無かったわけですから本当に偶然の出来事。こういうのってありますよねえ。

 ちなみにメルセデスがニュルブルクリンクで優勝するのは1954年のファン マヌエル ファンジオ以来66年ぶり。その10年後の1964年にニュルブルクリンクでF1にデビューしたのがホンダでした。

 

 リキャードは2018年以来の表彰台、ヒュルケンベルグはビリからスタートして8位で入賞。70周年記念GPでの7位に続いて今季2度目のトップ8フィニッシュで、なんとセバスチャン ベッテルより多い回数です(。∀°) そして、レーシング ポイントだけが2台入賞、他は1台ずつの入賞でなんと9チームから入賞者が出るという非常に珍しいレースとなりました。

 

 記録というのは時代によって条件が違うので、どっちがすごいのすごくないのというものではなく、どれもすごいと私は思っています。ハミルトンの91勝という記録、節目に到達しましたが、決して車が速いから勝って当然、ではないでしょう。驚異の安定感、速いのに長持ちするタイヤ、出したい時にタイムを出す集中力、これらが揃っていないと、91あった勝利のうちいくらかはライバルに取られていたでしょう。今日も結局ボッタスはトラブルではありましたが、彼は見えるところで致命的にミスをした、ハミルトンはそれをしなかった。今回だけに限らず、そうした積み重ねがこの結果で、ボッタスには酷ではありますが、如実にその差が出た、と言えそうです。

 仮にボッタスがあそこでミスしておらず、トラブルが無かったとして、タイヤの管理で果たしてハミルトンを上回れたのか、というところに興味があったので、その前に決着が付いてちょっと残念でした。一方フェルスタッペンはホンダの撤退が決まった中で最大の力を見せてくれましたが、メルセデスの壁は厚いですね。フェルスタッペンvsボッタスも見たかったので、やっぱりボッタスのトラブルが残念(´・ω・`)

 

 今回練習は土曜日だけ、ヒュルケンベルグに至っては予選からの参加でした。NASCAR Cup Seriesでは今季、非常事態を考慮して練習も予選もない、という中で高いクオリティーのレースを繰り広げています。もちろん来季は元に戻りますし、練習なんていらねえよ、とは言いませんが、これからの時代、イベントは3日で、練習走行の時間が必要で、、、という当たり前に続けていた(といっても時代とともに色々制限されてはいるけども)ことを見直すには良い機会かな、と感じるレースでもありました。単に削って改革した気になる、なんてのは最悪ですが、必要なものとそうでないもの、限りあるリソースをどこにそそぐのか、といったことを土台から見直すのはありだと思います。リバース グリッドがどうとかいう話よりもよほど重要な気がします。

 

 

 次戦はポルトガルです!