NASCAR Cup Series

Pocono Organics 325

Pocono Raceway 2.5miles×130Laps(25/52/53)=325miles

competition caution on Lap12

winner:Kevin Harvick(Stewart-Haas Racing/Busch "Head for the Mountains" Ford Mustang)

 

 NCS at ポコノー。元々予定されていた土日の2連戦、相変わらず天気が悪く、トラック シリーズが翌朝に

順延され、このレースもペース カー周回に入ったら雨が降ってきたので少しスタートが遅れました。

ステージの区切りもちょっと変則で、ステージ1だけ極端に短い設定です。相変わらずピット戦略が中心の

分かりズラいレース展開が予想されます。

 

 325マイルの土曜日のレースはやはり戦略が鍵を握り、最後に笑ったのはケビン ハービックでした。

ポコノ―では通算39回目の挑戦でようやくの初勝利でした。

 ステージ1、PPのエリック アルミローラがスタートからレースをリード。ここは珍しく3速も使うトラックとして

知られていますが、今年の規則だと最高速が遅くてダウンフォースは大きいので使う必要がないようです。

12周を終えてコンペティション コーションとなるものの、タイムの落ち幅が小さいので上位勢はステイ アウト。

 

 17周にリスタート、しかしクイーン ハウフがターン2で巻き込んでスピンしインのバリアにヒットしてすぐコーション、

ただでさえ短いステージ1は残り5周での再開に。このリスタートでジョーイ ロガーノがライアン ブレイニーの

プッシュを受けてイン側からリードを奪い、そのままステージ1を制しました。今季4度目のステージ勝利です。

 

 ステージ1終了後も上位数台はなおもステイアウト。この段階で、コンペティションコーションで入った人、

ステージ残り3周で入った人、ステージ1後に入った人と、たった25周で作戦がバラバラ、今入った人の中でも

燃料のみから4タイヤまでバラバラで、ステージ2は車の条件がずいぶんと異なる状態でのスタートになります。

 

 

 ステージ2、ロガーノの後ろはチェイス エリオット。仲が良くないせいかどうかは知りませんが、全く押してもらえず

今度はアルミローラがやり返して再びリードを奪います。この後リードを徐々に広げて安定したペースです。

 

 40周あたりから、まだピットに入っていない組はピット サイクルになります。彼らは最初からピット回数を

決め打ちし、2ストップで走りきる典型的なロード コース戦略です。

 上位勢が一旦下がったためリーダーはマーティン トゥルーエックス ジュニア。2位にデニー ハムリン、

3位カイル ブッシュとJGR勢。それぞれピットの入ったのは14周目、22周目、27周目。先に入った人が前に出る、

というのがよく分かりますね。しかしトゥルーエックスはそれほどいい状態ではないようでハムリンが追い上げて

コース上でリードチェンジ。トゥルーエックスは給油の時間だったのでそのままピットへ。

 

ジミー ジョンソンはピットでジョッシュ ビリッキーと交錯して時間を失いました。また運に見放されだしたか・・・

 

 ステージ残り13周、ジョン ハンター ネメチェックに当てられてJ J イェリーのタイヤが瞬殺。コーションとなります。

ハムリンらはステージ2でピットに入る必要がある人たちなのでこの機会にピットへ。とはいえ戦略的に

若干損した感じもあります。

 

 ステージ残り9周、サイクルが一巡したのでアルミローラをリーダーにリスタート。ここでチェイスには

トランスミッションのトラブルが発生し、4速に入ったあたりで加速が鈍りますが幸い大きな混乱には至らず。

 しかし3周後、ターン3出口で前に詰まったエリック ジョーンズにタイラー レディックが突撃してしまいクラッシュ。

再びコーションとなります。この週末の規則では、土日の連戦は車体、エンジン、ミッションなどの主要な部品は

継続使用することが定められており、クラッシュして損傷が大きいと後方スタートとなります。

 チェイスはシフトが4速にハマらず、レバーをしっかり支えておかないと4速に入らない、という状態らしく、

結局このレースは25位、そしてトランスミッションを交換する必要があるため、翌日も後方スタートとなりました。

 

 ステージ残り2周でリスタート、アルミローラはリードを維持してステージ2を制しました。レース序盤に大きく

順位を上げ、アルミローラと同じサイクルで走っているマット ディベネデトーがステージ1で7位、ステージ2も5位。

ここはライアン ブレイニーがウッド ブラザーズ時代に勝利した、チームにとっても縁起の良いトラックです。

 

 

 残り1回のピットで走りきるにはこのステージ間コーションはステイアウトが定石ですが、ステージ3位の

ブレイニーはここでピットへ。ちょっと変則的な戦略を狙っている模様です。

 

 

 ファイナルステージ、リスタートの混戦が落ち着くとアルミローラ、ハービック、ディベネデトーのオーダー。

ほどなく残り39周となって燃料ウインドウが開くと中団以降から一斉にピットが動き始めます。ブレイニーは

先ほど4タイヤを入れたので、ここでは燃料だけを入れる戦略。

 そして残り36周でアルミローラとハービックが同時にピットに入りますが、ピットでハービックが大逆転。

ハービックは速度制限ギリギリの深いブレーキで、ピット入り口の段階でもうアルミローラに並びかけ、そして

2タイヤ交換でピット時間を大幅に短縮していました。ハムリンも同じく2タイヤで実質2位に浮上します。

同様の作戦を採ったチームは多かったようで、堅実に4タイヤで行ったディベネデトーは大幅後退(´・ω・`)

 

 

 サイクルが一巡してハービックがリーダーとなり、それをじわじわとハムリンが追い上げます。アルミローラは

ようやく2タイヤ組を抜いて前が開けたころには既にハムリンから10秒差、自力で追い上げるのは厳しい情勢です。

 

 残り7周、ジョーイ ロガーノが左前タイヤのパンクで緊急ピットもコーション無し。

ハムリンは終盤バイブレーションを訴えて、フィニッシュまで持たせるのが重要だとかいう情報が出ている割には

ハービックの背後に接近。残り2周は接近戦となりましたが、さすがに捉えるには至らず、ハービックが

自身初めてポコノーを制しました。これで、ハービックが現行開催トラックで未勝利のままなのは

ケンタッキーのみです。まあ来年ナッシュビルが増えてしまいますけどね。

 

 今回のレース、アルミローラが随分と快調に見えたのに、終わってみればハービックが勝利。

鍵はピット戦略だったわけですが、チェスのように『最後から逆算する』ことが重要でした。

 ロードコース戦略でクリーン エアーを受けるアルミローラの戦術は間違っていませんでした。

40周近く使ったタイヤでもベストの0.5秒落ち程度で走れるぐらい今回のタイヤは長持ちで、コーションのたびに

頻繁にタイヤを替える必要性はありませんでした。ただ、2ピット決め打ちの「アルミローラ作戦」では、各ピットで

燃料缶2缶/19ガロンを入れる必要があり、タイヤも使い古しているので4タイヤしか選択肢がありません。

2タイヤにしても結局給油を待つことになるので時間の無駄になってしまいます。

 

 一方で「ハービック作戦」はピット回数がアルミローラ作戦よりも少し多く、最後のピットの1回前の段階で

一度フル サービスをしています。これによって、最後のピットでは給油量が1缶だけで済み、タイヤも

アルミローラ作戦よりは新しいので2タイヤや、場合によってはタイヤ無交換という選択をすることができて

柔軟性があります。その一方で、みんな色んなことを考えるので、変なタイミングで『最後の1回目のピット』

に入ってしまうと、集団に埋まってしまって、いくらピットで7~8秒稼いでも、それまでの損失が大きすぎて

意味が無くなってしまいます。展開の読み、運、コース上でのパフォーマンスがうまく噛み合わないと、

闇雲にピットに入っても自滅します。このあたり、ハービックとロドニー チルダースのコンビはやはり

冴えていたなという感じがします。

 

 戦略という点では、ハムリンと同じように作戦を進めたクリストファー ベルがなんと4位。カイル ブッシュが5位、

マーティン トゥルーエックス ジュニアが6位とJGR勢は事故ったジョーンズ以外好成績。

 また、コーションのリスクを背負って最後のピットをできるだけ遅らせ、軽い車でクリーンエアーを走った

マイケル マクダウルがなんと8位と見事な結果を残しました。コーションが出れば台無しですが、

クリーンエアーを走るというのはレース時間を短縮するにはやはり大事な要素であることが分かります。

 

 Matt Dは結局13位。決して悪い成績ではないですが、トップ5を狙えそうな車だったので最後のピットが

勿体なかったですね。ちょっと手堅く行き過ぎた上に、タイヤを転がしかけていたので作業もやや遅かったかも

しれません。

 

 次戦は翌日にまたすぐこの場所で。少しだけ距離が長い350マイルのレースです。この日の結果を踏まえて

各陣営が作戦をどう考えるのかが注目点です。うーん、コース上の争いじゃなくて作戦の話ばかり

してしまうのが個人的には何か違う気がするんですけどねえ。