NASCAR Cup Series

Folds of Honor QuickTrip 500

Atlanta Motor Speedway 1.54miles×325Laps(105/105/115)=500miles

competition caution on Lap 25

winner:Kevin Harvick(Stewart-Haas Racing/Busch Light #ForTheFarmers Ford Mustang)

 

 NCS at アトランタ。アメリカ全土で黒人差別に対する抗議活動が広がる中、このレースでもスタート前に

車両をフロントストレッチに停止させ、NASCARの社長・スティーブ フェルプス自ら全ドライバーに無線で

呼びかける形で抗議の意思を示しました。

抗議活動のスローガンを掲げるリチャード ペティー モータースポーツのクルー。

RPMのドライバーはご存知の通り唯一の黒人ドライバー、ダレル ウォーレス ジュニア。

抗議の象徴ポーズとされる膝を立てた格好で意思を示すオフィシャル

 

 また、レース中には唯一のメキシコ人ドライバーであるダニエル スアレスのインタビューも放送されました。

日本では肌の色による差別はそれほど多くは無いと思いますが、特定の国、地域、出自、性別に関する差別は

正直年々悪化し、世界的に見てもかなりひどいレベルではないかと思います。決して他人事ではありません。

 

 少し異例の形で始まったレース、アトランタの荒い路面はタイヤを容赦なく痛めつけてさながら耐久レースとなり、

ケビン ハービックが自身3度目のアトランタでの勝利を挙げました。

 

 スタートからコンペティション コーションまではPPのチェイス エリオットが独走。カート ブッシュは車検に

3回引っかかったためにドライブスルー ペナルティーを受け、なんとかここでフリー パスを手にするために

必死で攻めました。結果なんとかフリーパスを手にしました。

 

 このピットでジョーイ ロガーノが先頭に立ち31周目にリスタート。タイヤを傷めたウィリアム バイロンが

いきなりウォールにヒットして緊急ピットになりますがノー コーション。ピット作業の際にタイヤのバルブを

吹っ飛ばしてタイヤの空気が抜けたのが原因との情報。

 

 36周目、ハービックがイン側の赤い線に引っかける得意のラインでロガーノをパス。コンペティションコーションの

前から速そうでした。一方タイラー レディックは外ラインを駆使してリスタートで順位を上げてきます。これが若さか。

 

 レース中再三話題になりますが、スプリッターをいかに路面ギリギリに近づけてダウンフォースを生み出すかが

高速オーバルでは重要。アトランタは見るからに舗装が痛んでいてよく跳ねるため、ダウンフォースが出たり

抜けたりしやすいため、その中でいかに最適に走るか、最大限スプリッターを路面に近づけた姿勢で走れるかが

特に重要です。赤い線の部分は舗装自体がちょっと凹んで溝のようになってるので引っかけるとグリップが

高いですし、みんなが通ってラバーも乗りますが、ターンの途中にはバンプもあり、うっかりここを外れると

旋回Gを受け止められないので途端にアウトに持っていかれます。本当に「ラインは一本」です。

 

 

 66周目、ライアン ニューマンを一番乗りにあわただしくピット サイクルとなりハービックはリードを維持。

ちなみにニューマンがピット速度違反でも一番乗りでした^^;

 ステージ1後半はマーティン トゥルーエックス ジュニアが地道にハービックとの差を詰めると、タイヤの管理が

うまかったのか86周目にかなりあっさりとハービックを抜いてこのレース初のリードを奪います。

久々にトゥルーエックスらしい展開です。

 

 ステージ1も残り11周となったところでジョン ハンター ネメチェックが単独スピンしコーション。

今回ヤンマーがスポンサーで結構このスキームはカッコいいと思いますね

 トゥルーエックスはちょうどバッバ ウォーレスを周回遅れにしたところ、かと思いましたがコーションは

その直前だったので、マット ディベネデトーがフリーパス獲得。ラッキー♪

 

 タイヤががりがり削られるアトランタでは4タイヤ交換以外に選択肢はなくピットでの順位変動も特に無し。

ステージ残り6周でリスタートされ、トゥルーエックスがそのままステージ1を制しました。今季初です。

 

 たった6周しただけですが各車またピットへ、ここでクリント ボイヤーがステージ3位から先頭でピットを脱出。

ロガーノはピットでマット ケンゼスと接触したようで再ピット。

 リスタート後はハゲしい争いを制したボイヤーがリードを維持しますが、トゥルーエックスはしっかりと付いていき、

30周を過ぎても0.5秒前後の差という持久戦。

 タイヤの摩耗が厳しいので、約100周のステージを1ストップで走るのかどうかが気になりましたが、リーダーの

ボイヤーはステージ43周を経過したところでピット。これで2ストップの流れ、かと思いきや他のドライバーは

誰も追随せず。ボイヤーは右リアにデカいブリスターを作ってしまいやむを得ずタイヤを変えたようで、

他のドライバーは1ストップのさらなる持久戦に突入しました。

取り外されたボイヤーの右リアタイヤには明らかに黒い筋が出ています・・・

 

 ステージの半分で今度こそピットサイクル、トゥルーエックスは2位のハムリンとの差を維持。見た目上は

先に入ったボイヤーが大きくリードしていますが、タイヤが10周以上古いのでペースが遅く、このセットで

ステージを走りきれるかも疑問です。

 トゥルーエックスは簡単にボイヤーを抜いて再びレースをリード、ボイヤーは苦しいタイヤをなんとか

コントロールしていましたが、ステージ残り9周でマイケル マクダウルがスピンしてコーション。ボイヤー命拾い。

 

 そしてピットではカイル ブッシュが先行。2位になりそうなトゥルーエックスは出口で急ブレーキを踏んで

2列目インを狙おうとするも失敗。危ない上にブレーキを踏むのが黄色い線のあたりでは遅すぎる・・・

 しかしステージ残り5周のリスタートは意外な展開、イン側2列目のハービックが大失敗して内側ラインが全滅。

一方トゥルーエックスはカイルに並びかけると、後ろからライアン ブレイニーに押してもらってリード奪還、

そのままステージ2も制しました。余計なことせんと普通にピットを出たらええんや~。

 

 

 ファイナル ステージ。またピットでカイル、トゥルーエックス、ハービックの順になり、今度は反省を生かした(?)

のかハービックがきっちり蹴りだしてカイルを押し、そしてカイルも抜いて自らがリード。 

 2位はトゥルーエックスとカイルが入れ替わりつつ進行、解説のジェフ ゴードンによれば、このトラックは

ちょっと攻めるとすぐに右側のタイヤがオーバーヒートしてしまい、数周落とさないとグリップが戻らないそうです。

 

 この後特に何も起きずグリーンのまま進行、タイヤの寿命を考えると残り55周ぐらいまで待ってピットに

入りたいところですが、リード ラップ後方の車両は残り64周あたりから動き始めたためそれが前方へと波及し

リーダーのハービックも残り58周でピットへ。アンダーカットを仕掛けてきたトゥルーエックスとの差は

ピット前の2秒を維持しました。

 

 このままトップ2は30周近く1.8~2秒差の神経戦。相手は飛ばしているのか、今は攻めるべきか、抑えるべきか、

そんな戦いが繰り広げられていたと思います。しかし残り25周あたりからハービックがリードを拡大。このレースで

最も長いランを走ったのはステージ2でのボイヤーの54周、他は概ね45周以下、そろそろ未体験領域に入ります。

 

 残り14周、恐れていたことが発生、ボイヤーがまた右リアを潰して緊急ピット。曇ってきて全体的にタイト方向を

訴えるドライバーが多い中でも、「ルースで最後までもつとは思わない」と言っていたようですが、懸念が現実に。

 

 安定するハービックに対してトゥルーエックスは落ち気味になり、終盤にはカイルが2位へ再浮上。

このスティントのカイルは最初から最後までハービックから3.8秒差前後だったので、ロングでは

トゥルーエックス < カイルだったようです。

 

 結局最後までコーションも起こらず、ハービックはそのまま長い長い持久戦を終えてトップでチェッカー。

見た目に派手さが全く無いレースではありましたが、アトランタのレースという意味では見ごたえを感じる

耐久レースだったと思います。プラクティスも無い中でタイヤトラブルだらけ、とはならず、なんとかしてでも

必要な距離を走らせるドライビング/エンジニアリングはさすがだなと思いました。

 もちろん、テストしないからこそ、マージンを持ってセットするのでむしろ壊れない、という面もあるでしょうけど。

 

 そしてもう1つの戦いと言えたのがポイント12位争い。というのも、次戦のスタート順も12人区切りのくじ引き制、

そしてトラック ポジションが重要なマーティンズビルなので、12位以内が保証されるランク12位と、

最悪24位になる可能性がある13位では雲泥の差だからです。エリック アルミローラ、ボイヤー、ジミー ジョンソン、

ディベネデトーあたりが12位を争っていましたが、結局11位にアルミローラ、12位にボイヤー、ジョンソンは3点差で

13位でした。

 ディベネデトーはステージ2で7位、以降も11位近辺を常時走行していましたが、最後のピットが早めだったため

残り僅かのところでタイヤが悲鳴を上げて緊急ピット、25位で追えました。仮に12位で追えていれば

ディベネデデトーが1点差で12位だったと思われます。ここまでくじ引きで一巡目に入っていたので上位での

スタートが続いていましたから、これはちょっとシーズンの流れという点で最初の転換点になるかもしれません。

せっかく幸運なラップバック以降は良い走りをしていただけに惜しかったです。

 

 次戦はマーティンズビル、平日の開催です。週末はすぐにホームステッドに移動します。