今日は国体のアタックの続きのつもりでしたが、その前に私のアタックの裏で起きていた出来事について
ちょっと触れておこうと思います。
4月15日に開催された、マニュファクチャラーシリーズ エキシビションステージ ラウンド9において、
「故意にタイヤ使用義務違反をした方が得をしてしまう」という事例が発生しました。
ラグナセカでのGr.4レース、タイヤはレーシングソフト~ハードの3種類選択可能で、全てに使用義務有り、
という内容でした。しかし、ラグナセカはピットのロスタイムの設定がかなり大きかったため、
タイヤ義務違反の20秒タイム加算という数字では、無視した方が速くなってしまったのです。
通常なら、最低でもハード→ミディアム→ソフト、の2ピット、3スペック必要ですが、義務違反すれば
1ピットで走行可能。しかも、義務違反は実は1種類無視しても2種類無視しても同じ20秒加算で、
今回はタイヤの消耗倍率が低めの6倍だったことも重なって「ソフト→ソフト」という、かなりの荒業で
走ることもできてしまいました。
基本的には、運営側がレースの設計に失敗していることが問題なわけですが、故意に違反したプレイヤーを
どう考えるか、というところでは見解が分かれています。
実際、これは私も非常に難しい問題だと考えます。というのも、何を主眼において物事を考えるかで
答えが分かれてしまうと考えられるからです。
結論から言えば、私は「無し」だと思いますが、だからと言って「有り」の人の意見を真っ向から否定したり、
使った人をまるで荒らしのように非難しようとは思いません。
みなさんそれぞれ考え方があるかと思いますが、それぞれの意見について考えてみようと思います。
〇「義務」の解釈をどう扱うか
考える上で重要なのが、タイヤ使用義務をどう解釈するかです。スポーツモードにこの制度が導入された際、
運営からのリリースにはこう書いてありました。
・ワールドツアーで使用している「使用義務タイヤ」をオンラインチャンピオンシップにも導入します。
使用義務タイヤとは、指定されているタイヤコンパウンドをレース中に1回以上使用しなければ
いけないルールです。指定されているタイヤを使用しなかった場合は、レース後のリザルトに
タイムペナルティが加算されます。
この文言の解釈が結論を左右していると言えるのではないか、と私は考えます。
A 1回以上使用しなければいけないのだから守るのが大前提、ペナルティーはあくまでゲーム上の措置にすぎない
B 使用義務とペナルティーは相互関係のもので、ペナルティーを受けて良いなら必ずしも守る必要はない
Aの考えに基づけば、最初から守る気のない状態での参加は論外ですし、Bであれば戦略の1つです。
それぞれの立場で考えてみましょう。
A 守るのが大前提と考えた場合
このケースでは、ペナルティーというのはあくまでゲーム上での設定要素に過ぎず、
接触ペナルティーが出ないからぶつけてもよい、と考えてはいけないのと同じように、
ペナルティーを最初から受ける気で参加するならそもそも参加資格が無い、という考え方に至ると思います。
ペナルティーを受けても得するならそれでいい、と考えてしまいますと、例えばこういうことが考えられます。
ペナルティー制度に関して、「レース後加算だけにすべきだ」という意見は結構根強いですが、
仮にそうした制度になったとしましょう。今、トップ2が3位以下を引き離していてマッチレースです。ここで、
ペースでは勝るが抜けないプレイヤーが
「抜けないからシケインを一度思いっきりカットして3秒ペナを貰い、残りの周回で4秒ちぎればいいや」
と思いっきりシケインを無視する、なんてことがあったとします。さて、これは作戦なのか。
リスクを取った勝負と言えるのか。義務違反否定の人からすると、たぶんこの案件と今回の案件は
同様の事案と捉えられるのではないでしょうか。
「いちいち1から100まで何もかも運営が完璧な制度を作ることに頼って運営のせいにするのはおかしい」
という風にも言えるかもしれません。
ですから、否定派の方の考えとしては「義務違反は失格でいいのでは?」という方が多いと思います。
ただ、これを行った場合、ゲームを始めたばかりの人が失格を食らうケースがある他、
不具合や押し間違いによる同一タイヤ連続投入などが考えられるため、運営はそこに配慮して20秒という、
まあ大抵はダメージがデカいけどビリにはならずに済むぐらいの設定を適用していると考えられます。
失格にしろ、という意見はこうした観点からあまり現実的ではないですし、こうした視点があることは
ご存知ない方には理解していただきたい部分かなと思います。
これ自体、運営が「知ってる前提」でイベントを開催してしまっていて、初参加の方に最初にレクチャーをする
仕組みが無い、という問題から来ている部分でもあるので、個人的にはそこを運営としてカバーした上で
ペナルティーを重くする、というのが筋ではないかと思いますが、そうした改善点はさておいて、
否定派の方の言い分、考え方(と思われる内容)はこういった観点だと思います。
B 戦略の一環と考えた場合
このケースでは、タイヤ使用義務というのは、厳密には義務ではなく『ペナルティーを受けない方法』だと解釈し、
裏を返せば、ペナルティーを受けても問題ないなら必ずしも守る必要は無い、という考えに至ると思います。
『規則の抜け穴』という見方もできますね。
類似したケースが、バージョン1.53以前では可能だった
『前後に違う種類のタイヤを装着すると、それぞれ使用義務を果たしたと見なされる』というものだと思います。
タイヤ使用義務は基本的にその種類の回数だけピットに入らないといけないですが、これだと2種類同時に
義務を消化してしまうので、回数を1回減らしたり、あるいはソフトをたくさん使えたりしました。
本来のレース設計の意図とズレてしまっており、これ自体賛否が割れたケースでもありましたが、
『これも戦略の一環』と捉える向きはありました。
ならば義務違反ペナルティーも同じ話ではないか?同時消化していた人が、義務違反だけ批判するのは
おかしいのでは?という考えにも至ると思います。実際それもまた真実だと思います。
ここで、翻って『解釈』の話になります。別スペックタイヤに関しては、上記の告知分を見ても
『四輪全てに装着』とまでは書かれていなかったので、確かに抜け穴と呼べるものでした。
ゲーム作る時になぜ気付かないのか、気づいて無いわりにゲーム上ちゃんと2スペック消化と処理できる
構造というのはいったいどうなっているのか、ツッコミ所満載ですが置いときます。
一方タイヤ使用義務は前述の通り
指定されているタイヤコンパウンドをレース中に1回以上使用しなければいけないルール
なわけですから、書かれている文言を守ってはいないわけです。
ゲームの仕様、という観点から見れば、確かに同じような『抜け穴』なんですが、文言から考えると、
義務違反は『抜け穴』になっていないとも考えられます。
実際のモータースポーツでも、規則の抜け穴というのは常に探されて突かれるものですが、
それらは通常『規則が規定しておらず違法とする根拠がない』ものを言います。
バレてはいないけど何か秘密兵器を導入していて、その技術の詳細を調べたら規則違反だった、
これは抜け穴じゃなくてただの『不法パーツ』になってしまいます。
今回のケースの抜け穴というのも、規則の抜け穴というよりも、どちらかというと、
『ゲームという媒体における抜け穴』と言った方が良いかもしれません。
しかし現実問題としては、違反しても20秒加算を受けるだけで構わない、という状況から、
『使用義務は守って参加する必要があることを必ずしも意味しない』と解釈されてしまうのは確かです。
指定されているタイヤを使用しなかった場合は、レース後のリザルトにタイムペナルティが加算されます
という文言も含めて、ペナルティーが加算される不利益がある以外に決まりは無い、という捉え方も
できますから、その解釈を否定はできません。
極端な話、「義務を守るか守らないかを考える戦略レースを運営が仕込んだ」とも解釈できます。
おそらくそれぞれのプレイヤーなりに、どこまではセーフ、どこからはアウト、という範囲があって、
ぶつけたりするのはアウト、故意ペナルティーは他者に直接の被害はなく、やろうと思えばみんな
やることができるからセーフ、という考えに至った方もきっとおられるでしょう。
「正直気は進まないが、他に絶対やる人がいると思われる以上、やらずに負けるのは納得いかない」
という心理で、否定的遂行をした方もおられると思います。
タイヤ義務違反はセーフだけど、序盤に書いた故意シケインカットについて考えるならアウトだ、
という方もいると思います。
肯定派の言い分、考え方(と思われるもの)はこういった感じでしょう。
〇基本運営が失敗しているというのは間違いない
私自身が否定派な上に出場してもいないので、必ずしも肯定派の方の考えを拾い切れていないかもしれません。
ただ、ある程度自身と逆の立場の方の考え方、あるいは他の事案と比べた時にどう思うか、そういった
考える参考にでもなれば、と思います。もちろん、考えた上で「どう考えても違反でしかないだろ、けしからん」
と考えるのも自由です。考え方を変えろとかそんな傲慢なことを言うつもりは毛頭無いです。
ただ個人的には「自分の意に反するからと言って、この件で過度に攻め立てすぎるのはやめてほしい」
とは思います。今回の件は、違反したからと言って、明確に他のプレイヤーを尊重していない、妨害している、
とまでは言い切れないものですから、私としても「おかしい」とは思いますが「やるな」とは言えないと思っています。
1つ言えるのは、基本的には、違反して得できる設定を作ってしまった運営に一義的な責任があるということ。
もちろん運営にカバーできる範囲にも限度がありますし、何でもかんでも「運営が悪い」ではただの学級崩壊。
だからこそのマナー・倫理観なわけですが、今回は上記の通り、そのマナーの観点からも微妙な線上の
問題だと考えられるので、運営さんからは何か一言欲しいなというのが正直なところです。
毎回レース設定に合わせてアップデートでロスはちゃっかり調整されており、使用義務制が導入される際でも、
アップデートはその前の2019シーズンのラスト数戦が残った段階でのアップデートで先にロスが短縮され、
そして事前告知されていた2019の最後のレースでは、ちゃんとその短いロスで成立する規則で
設計されていました。ひょっとすると、今回もそうするつもりがあったけど、ペナルティー関係の問題が
噴出してしまって対応に追われ、そこまで手が回らずにバージョン1.56をリリースしてしまった、
ということも考えられなくはないでしょう。
手が回らないならレース規則を見直してリリースすればいいのに、というところですが、残念ながら
このレースの2日前、デイリーレースCが新しいイベントに更新された最初期の数レースでは、
ハードとミディアムを選べるレースなのに『ハード~ソフトの3種類に義務を課す』
という大失敗設定で世に出してしまい、どうやっても絶対にペナルティーという惨事が起きました。
不覚にも、このレースでミディアム→ミディアムと繋いで走った人を経て
「あ、義務違反は1種でも2種でも同じ20秒か」と知る機会をも世の中に送り出してしまったぐらいなので、
最終確認する複数のチェック機能が働いていないであろうことは確かです。
さすがに同じ失敗をそうそう運営が繰り返しはしないと思いますが、ペナルティーを変えるか
義務制を廃止にしない限りは、また起こりうる問題でもあります。
だからこそ運営からは一言欲しいわけですが、仮にまたそうした設定が出てきた、実際に起こったとして、
即座に極端な言い方をするのはできれば避けていただきたいですね。