ABB FIA Formula E Championship

2020 CBMM Niobium Mexico City E-Prix

Autódromo Hermanos Rodríguez 2.606km  45minutes+1Lap

winner:Mitch Evans(Panasonic Jaguar Racing/Jaguar I-Type 4

 

 FE第4戦はメキシコのメキシコシティー。このレースを前に、今季の第6戦に開催予定だった

中国・三亜でのレースがCOVID-19(新型コロナ ウイルス)の影響で中止になると発表されました。

 

 さて、メキシコシティーE-Prixはシーズンでは珍しい常設サーキットのレース、F1と同じ

エルマノス ロドリゲス サーキットが開催地ですが、F1より短いレイアウトのなんとも地味~な短いコースで

開催されてきました。ちょっとずつ毎年変更が加えられていますが、今回はさらに大きな変更が加えられ、

1周が2.6kmとかなり長いコースとなり、最終コーナーにあったシケインも撤去されて非常に高速になりました。

個人的に今回のレイアウトは大成功だったと思います。レースは非常にエキサイティングな流れとなり、

ミッチ エバンスが勝利を手にしました。もっとも、彼にとってエキサイティングだった場面は最初の30秒ほどでした。

 PPはアンドレ ロッテラー、今日こそFE初勝利へ、と行きたいところです。しかしスタートでちょっと空転、

エバンスがターン1に向けてインに並びかけると、軽く接触した結果ロッテラーがはみ出しソウル。

エバンスがトップになります。ロッテラーの方は失速してさらに抜かれるわ、コースに戻った後も接触するわ、

この後グダグダになってしまい、最終的に接触で車を壊してガレージ送りになりました(´・ω・`)

 

 ターン1はラインが一本しかないコーナーなので並べませんから、あそこまで入られたら外の車は

引くしかないところ。ロッテラーはなんとか相手の頭を抑えてやろうと締めすぎて逆に自滅した感じです。

併走を望むのであれば旋回直前に外へ振りなおして自分の旋回半径も確保すべきでしたが、

実際は絶対エバンスの車両が自分に引っかかるぐらい寄せて旋回を開始したのでそりゃあ当たります。

 

 3周目、ニコ ミュラーが頑張りすぎてターン1のアウトに刺さってSC導入。マヒンドラの2台は

グリッド降格の量が多すぎて消化できずペナルティーが課せられたため普通に行けば勝負権無しでしたが、

これによって最後尾についてなんとかレースできる環境になり幸運を手にします。

 

 2位はセバスチャン ブエミでしたが、エバンスを追うよりは後続の対処に追われ、残り28分40秒、

サム バードがアタック モードを使ってブエミを抜いて2位へ。今回アタックモードは3分×3回と

制度導入以来初めて4分×2回ではない設定になったので、また頭の使いどころが増えた印象です。

6位スタートからきっちり2位まで上げて来るバードはさすがベテラン。

 

 残り約20分、5位争いをしていたニック デ フリース。アタックモードのアントニオ フェリックス ダ コスタが

真後ろに来たので、思いっきりインに寄せ、さらにファン ブーストも使って防御しようとしましたが、

ブレーキで完全にロックさせてターン1を止まれず、防御どころか前にいた4位のロビン フラインスに

ミサイル攻撃してリタイア。

無線でダコスタに当てられて止まれなかったようなことを言っていましたが、映像上はそうは見えず、

たぶんブースト使ってブレーキ位置を間違えたただの自爆だと思います。FEはレースになると

リフト&コーストを多用するので、いざ勝負所でリフトをしない”本来の”走りをすると、ブレーキ位置が

違いすぎてミスをすることがあります。

 

 レースは終盤に入ってもエバンスの優位は動かず、バードは追いつけない状況。そしてまたしても、

テチーターが速さを見せてダコスタとジャン エリック ベルニュが4、5位を走行して3位のブエミを狙います。

元々ベルニュが前でしたが、途中オーダーを出してエネルギーを多く残しているダコスタを先行させていた

タチーター。前戦では車が壊れた状態でベルニュがダコスタを鬼ブロックし、間接的にダコスタの

優勝のチャンスを奪った可能性もあっただけに、チームは取り扱いに慎重な様子です。ところが、

ちょっとしたはずみでまたしても迷走することになりました。

 

 残り14分、ダコスタがアタックモードを起動するはずがきちんと検知点を通れなかったようで失敗。

すると翌周は、ブエミがこのままでは危ないと見たかアタックモードを取る一方、同じように動いては

抜けないのでダコスタはここはスルー。そして5位のベルニュはアタックモードを起動しました。

 ブエミはアタックモードを使ったものの、電池残量かバッテリー温度のせいか、ペースは特に上がらず

ダコスタが真後ろに張り付いたまま、そしてその背後にアタックモードを使っているベルニュがいます。

 ダコスタから見れば、ブエミに対して1~2周後に改めてアタックモードを起動し抜きにかかりたいはずですが、

しかし後ろのベルニュがアタックモードに入ったので、一時的にチームメイトの方が速い状況が生じます。

 そこでチームはまたも入れ替えを決断、双方に指示を出して、次のターン1で入れ替わることを

決めました、が、その前にダコスタも1周遅れてアタックモードを取得。アタックモードを持つ人同士で

順位を譲り合うというどう見てもメリットがない行動に出ます。

 しかも、ベルニュはブエミと同時にアタックモードを使ったわけで、同条件だから効果が薄い上に、既に

1周ちょっと、1分以上経過してしまっていて攻撃のチャンスも限られます。当然抜けやしませんでした。

 そして、ベルニュのアタックモードが終わると、チームは三度入れ替えを指示。ダコスタが再度前に出ますが、

いらん入れ替えを繰り返しているうちにブエミが先に行ってしまい、結局完全にアタックモードを無駄にしました。

結局はアタックモードが終わった後に電池残量の差であっさりとダコスタがブエミを抜いてしまいますが、

なんだこのフェラーリ並みのポンコツ戦略はw

 

 ダコスタが取得し損ねたのはミスなのでそれは仕方ないです。ベルニュは、元々

「ダコスタが使った翌周に使う」という指示があったのかもしれません。しかし、取得できなかった段階で、

ベルニュから先に取得すると不合理が生じるのは目に見えたはず。なぜ、ダコスタのミスに併せて

戦略を転換しなかったのか謎ですし、ベルニュが使うことを決定済みの事項とするなら、ダコスタには

次の周もまた取りに行かせて同時発動か、ベルニュのアタックモードが終わることまで待ってから使うべきで、

何をターゲットにして誰とどうレースしているのか、大局的な視点が全く足りていませんでした。

 

 残り4分30秒、だいぶ遠回りしたもののダコスタは2位のバードも捕まえ、バードはここで最後のアタックモード。

取得の際にラインがクロスして狭い場所でサイド バイ サイドになりますが、お互いフェアーに走り

バードがとりあえずしのぎました。が、こちらもやはりペースを上げることができず、パワーはあるけど

リフトが早くて逃げれない状態。背後の金色の車の重圧がベテランの感覚をも狂わせたのか、

ターン3でまさかのブレーキ失敗。ウォールに突っ込んでしまいました。

最終コーナーからずーっと直線か右に曲がっている区間だけの状態から左への旋回ブレーキ、

しかも途中で舗装が変わるという実はかなり難しいコーナーに、アタックモード+リフト&コースト+

抜かれない攻めたブレーキ、という単独走行と異なる条件が重なりミスを呼んだと考えられます。

バード、この後再び走り始めたものの、壊れていたせいか他のコーナーでまた刺さってリタイアとなりました。

 

 この後同じ場所で、選手権リーダーで5位を争っていたストフェル バンドーンも刺さりました。

最後の最後にまさかの展開でした。

 

 最後は黄旗とデブリーで大変なコースになりましたが、エバンスは大きなリードを活用して安全に走り

それでもなお2位のダコスタに4.2秒の大差でチェッカー。見事なレースでした。これで選手権リーダーです。

ゴールのタイミングで絶妙にハイネケンを宣伝した販売スタッフのおじさんw

 

 3位争いはベルニュがミスったためブエミがなんとか守って今季初入賞、5位にアレクサンダー シムズが入り

エバンスから1点差の選手権2位。バンドーンとバードは貴重なポイントを失ってしまいました。

 そして、彼らが最後に脱落、ジェームス カラードにレース後にペナルティーが出た結果、

マヒンドラがなんと9、10位でダブル入賞。人生諦めちゃいけないですね(´・ω・`)

 

 元々FEの初期の車両の性能だとこういう高速コースでも大した争いにならなかったかもしれませんが、

Gen2車両の性能、各チームの開発によって、高速コースでも面白いレースができるようになり、

新レイアウトは成功だったと思います。最終コーナーはかなり高速ですが、ただでさえダウンフォースが

あまり発生していない車両な上に、空気が薄いメキシコと溝付きタイヤのおかげもあって、実は

スロットルをうまいことコントロールしないとリアがズルズルと流れてしまう難しそうなコーナーでした。

スピード感のある車両が結局36周してくれたわけですから、見に来たお客さんとしてもじゅうぶん

迫力のある内容になったのではないかと思います。市街地開催が魅力!というカテゴリーですが、

それが難しい場合、常設サーキットでもうまく活用すれば見ごたえあるレースができるぐらいレベルが

上がって来た、そんな風に感じる一戦でもありました。

 

 

 次戦は2週間後、モロッコのマラケシュです。たぶん予選の最初の出走グループはかなり苦戦するでしょう。

また別の勝者が生まれそうです。あと、2週間で移動するのけっこう大変ですね^^;