11月23・24日にAUTOBACS 45th Anniversary presents SUPER GT x DTM 特別交流戦が開催されました。

SUPER GT GT500クラスのレギュラー車両15台と、DTMから持ち込まれた7台による計22台のレースが

土日に連続して開催され、GT SPORT界隈でも観戦された方もいらっしゃったようで。初となる交流イベントの

個人的な感想を記しておこうと思います。

 

 まず前提条件として、今回の交流戦はGT500とDTMの共通車両規定・Class1規定の導入を受けて開催された

ものですが、この規定はDTMでは今年から既に導入されているものの、GT500は来年の2020年からなので、

今回の交流戦はまだ統一規定の車両ではありません。

 来年からのClass1規定では、SUPER GTは開発可能領域を広く確保するために、Class1に改造範囲を追加した

GT500独自の『Class1+α』という規定が採用され、交流戦の際にはDTMに合わせてこの+α部分を外す、

ということになっています。+αの大きな違いは、エンジンへのプレチャンバーの採用と空力開発です。

 しかし今回の交流戦は、そもそもGT500がClass1+αではないのでこの考えには当てはまらず、GT500は

今シーズンを戦った車両そのままになっています。言うなれば、『+αが装備されている』ような状態になります。

そのため車両性能単体で言えば、GT500はそもそもの使用期間の長さと規定の両面からエンジン出力が高く

(ただし燃料の最大噴射圧はGT500の最大200barに対し、DTMは最大350barという違いもある)、なおかつ

ダウンフォースも強いため、明らかにGT500の方が有利になっています。

 一方で、タイヤがハンコックのワンメイクであるという点は普段から使用しているDTM側に優位な条件です。

 

 そんな条件の下で開催されたイベント、両日とも午前中の予選が雨、決勝は辛うじて路面が乾いてドライ、

という条件でのレースとなり、土曜日のレース1ではニック キャシディー(KeePer TOM'S LC500)が、

日曜日はナレイン カーティケヤン(Modulo EPSON NSX-GT)がそれぞれ優勝しました。

 両日とも予選では雨のせいもあってDTM勢にも競争力があり、ロイック デュバルが2番手タイムを記録。

(レース2は最速タイムの中嶋 大祐がシャシー交換によるペナルティーを受けたため1位からスタート)

しかしレースはドライだったため、直線でDTM車両はバンバン抜かれてしまいました。予想通りパワー不足で

どうやら8km/hほど劣っている模様。スリップストリームに入れてもらえない状況ではなかなか戦えず、

かといってコーナーでもダウンフォースも少ないので、防戦一方という感じでした。その上に土曜日はデュバルが

レコノサンスで滑って自爆して出走できないという全く笑えない出来事も。。。

 

 そんな中でも、DTM同士ではアウディー RS5 DTMがBMW M4 DTMよりも直線が速い様子が見て取れました。

普段のDTMのレースだとDRSを使ってしまうのでなかなか分かり辛いところですが、今回RS5の真後ろに

M4がぴったりついて直線を丸々走る場面があり、結果ずっと背後に着いたまま抜けなかったので、どうやら

シーズンでアウディー無双になった一因がエンジン性能であることがある程度裏付けられたように思います。

最終区間から抜きつ抜かれつしていたマイク ロッケンフェラーと、普段はDTMに出ていない小林 可夢偉。

小林はレース前のトークイベントで

「僕GTでもスタートやったことない。なんやったら予選も去年は1回しか走ってない。それでミーティングでは

DTM側に呼ばれた」そうで、分からんまま話が進んだそうなw

 

 そのRS5は、唯一日産GT-Rに対してだけはある程度直線で勝負ができていました。GT-Rは3メーカーで唯一

プレチャンバーを使用していないと見られており、今回おそらくレクサスもホンダもある程度エンジンを使い切る

設定に振ってパワーを出しに行く中で、彼らには『伸びしろ』が無かったのではないかと思いました。

逆から言えば、燃料の最大噴射圧の違いがあるし、空力部品が少なくて抵抗が少ないとはいえ、新規定1年目で

既に日産と同程度の性能まで持ってきているアウディーはやはり侮れないなとも感じました。

 

 日曜日のレースでは動画サムネイルにあるように大事故発生。レクサスの5台が一度のクラッシュに見事に

巻き込まれる形になり、『もうどうせLC500はこれ以降使わへんし壊してもええわ(。∀°)』という状態になりましたw

そんな混乱を導いた遠因はやはりこれまたRS5に発生した左リアのタイヤ破損。金曜日のフリー走行でも

やはり壊れており、富士特有の極端に左リアに厳しいレイアウトに対してセッティングが過激すぎたと思われます。

アウディーはとりあえずコンサバに振って土曜日をやりすごした上で日曜日は少し攻めたようですが、攻めたら

また2台で破損が発生してしまいました。破損による緊急ピットとSCのタイミングのアヤで、一時的には

タイヤがぶっ壊れた張本人のデュバルが一人勝ちしそうな時間帯もあったのはなかなか奇妙でした。

 

 結局DTM勢最上位は、レース1は終盤にタイヤ交換してSC明けに追い上げたブノワ トレルイエが6位

(普段はDTMには出ておらず、レース前のイベントで同乗走行のドライバーをやっている)。

レース2では終盤にSC連発とGT500の立て続けの事故にも救われてマルコ ビットマンの2位でした。

3位にはデュバルが入ってDTM勢が表彰台の2つを獲得しました。

 

 そのレース2で勝ったのがカーティケヤン。普段EPSON NSXはダンロップを使用しており、正直たいていは

後方を走っている車両です。カーティケヤンもほとんど目立ってないですね。しかし今回はみんなタイヤが同じで、

やはり普段決して勝てる車とは言えないMOTUL MUGEN NSX-GTも速さを見せるなど、普段と違う光景も

見られました。YouTubeのコメント欄は最初の方に肯定、否定のどちらの意見が多いかにその後の意見が

振り回されるので参考にはなりませんが、DTMの最終戦にGT500が出た際には「ハンコック反対」という意見が

大量にあったのが、今回は「ワンメイクでもいい気がする」という意見すらありました。

 私も個人的に、レースの面白さという点では今のGTはタイヤが支配しすぎていて本質的なドライバー、車の

戦いが薄れている気がするのでどちらかといえば過剰なタイヤ競争は反対の立場ですが、こういう声が

出てきた、ということは、だからといってワンメイクには絶対ならないですが、何か応える策はないものかと

運営側も参加側も頭の片隅に入れておくべきではないかなと思います。

 

 オートスポーツ誌では、「交流戦をシリーズに入れてみないか」という大胆提言もされています。

https://www.as-web.jp/supergt/547342?all

これもまたハードルは高いですが、普段の混走レースと交流戦、両方合わせたものがこれからのGT500だ、

という新たな解釈ができないわけでは無いので、イベントの魅力、意義を見出す1つの案として面白いと思います。

 

 SUPER GTは1998年ごろから、DTMも2003年から見ている私にとって、今回のようなことが起こって

日本にDTM車両が来てレースするなんてことは、映像で見ていても信じられないような光景で、本当に

驚くとともに期待感があります。無論、『せっかく規則を合わせたんだから無理やりにでもイベントを』という思考では

失敗を生み出しかねないので、きちんとした展望、事業プランが必要ですが、目先で多少マイナスでも将来性の

ある展開であれば先行投資するのはありでしょうし、ここには参加メーカーの協力がすごく大事だと思います。

 個人的には、DTM→GT500は改造範囲が広がるため、BoP調整でもしないと現実的に競争にならないので

難易度が高いと思います。一方で逆であれば+αを外してワンメイクタイヤに合わせるわけですから、幾分か

その難易度は下がると思います。まずは日本側の車両を1台でも2台でも、DTMのシリーズ戦に送り込むという

ところからさらなる飛躍に繋げてほしいなと思います。

 

 

 そして、今回のイベントではサポートとして auto sports Web Sprint Cup というものが併催され、

GT300、スーパー耐久、鈴鹿10hに出場するGT3、JAF-GT300、マザーシャシー車両が参加して50分の

スプリント戦を開催しました。土曜日のレースでは、濡れた路面で唯一スリックを選択した植毛GO&FUN GT-Rが

賭けに成功してトップを独走し、あと1周というところまでそれを守り奪毛されるという名シーンがありました。

実況の實方 一世が言い放った「植毛成功、ギャンブル成功」という実況は未来永劫語り継がれるでしょうw

 

 しかしこのレース、参加したのはたったの12台(´・ω・`) これに関しては、参加者である土屋 武士が

オートスポーツwebにこう語っています。

 

「これは話さないといけない」土屋武士が語る

auto sport Web Sprint Cup参戦への思いと他チーム欠場の背景

https://www.as-web.jp/supergt/543006

 

後から追加で決まったレースに予算を割ける人が少ないのでみんな出れない、という趣旨の話でした。

『スプリントでルールもあって面白いレースでしたね』と取り繕っても、やはり12台しかいなくて、しかも

シーズンで優勝もしている車両と、普段周回遅れにしかならない旧型のGT-Rではペースが違いすぎて

味気なかった、というのが正直なところです。土屋が投げかけた課題も真摯に受け止めないといけませんね。

 

 課題も色々ありましたが、イベントとしては偶然もあって盛り上がる箇所が多くうまく行ったのではないでしょうか。

最後にもう1つ課題を上げるなら、放送したJ SPORTSの番組、レース間を繋ぐスタジオのパートで、

竹内 志麻と由良 拓也の会話が時々全く噛み合っていませんでした^^; 

竹内さんがドライバー紹介についての話題を聞いてるのに、由良さんがレースの内容の話を始め、

全然脱線して戻らないのでスタッフ側から「すいませんドライバー紹介を・・・」と指示する、声が誤って放送に乗り、

グダグダになって、困った竹内さん「色んなドライバーの素顔が見られるということですね」。

一言もそんな話してないw(なおイベント進行の関係でドライバー紹介が中止となってしまうオマケつき)

 こういう時は華やかさよりも実績と会話の幅広さを重視して、スタジオにも中嶋 秀之を置くとか、ちゃんと

収集がつく体制にした方がいいです。