ABB FIA Formula E Championship

2019 SAUDIA Diriyah E-Prix

Riyadh Street Circuit 2.495km 45minutes+1Lap

winner:Alexander Sims(BMW i Andretti Motorsport/BMW iFE20)

 

 FE第2戦、開幕戦に続く2連戦のレースです。前日はPPを取りながら戦略で後手に回ってしまった感のある

アレクサンダー シムズ、この第2戦も再びPPを得ると、前日とは戦い方を変えたようで右と雪辱を果たしました。

 予選ではシムズが2連続PP、2位にセバスチャン ブエミ、3位にルーカス ディ グラッシ。予選の組み分けで

今年も毎戦のように顔ぶれが変わりそうですから予選タイム=レースでの戦闘力とはならないのがFEの

1つのポイントで、この辺はWRCの出走順の話とちょっと似ています。

 

 レースが始まるとシムズは早々にブエミに対して2秒弱の差を築きます。前日はやや電池を消費しつつも

あまり差を広げられませんでしたが、今日は早めに差を付けており、まずここでアタック モードの1回目を

使えるだけの差を築きに行ったように見えます。すると予想通り、6周目、開始10分弱という早いタイミングで

シムズはアタックモードを作動させトップのまま走行。昨年まではSC中の起動が可能だったため、

あまり早く使い切ってしまうとリスタートでやられる危険性がありましたが、今年はそれが禁止なので

むしろレース後半まで寝かせすぎると、車間が詰まって義務消化で大量に抜かれるリスクを抱えかねません。

前日待ちすぎた反省を生かしたように先に手を打ってシムズがレースを優位に進めます。

 

 8周目、2位を走っていたブエミがアントニオ フェリックス ダ コスタに押されてスピン(´・ω・`)

ブエミはアタックモードを取ろうとして旋回速度が遅く、そこに追突したようにも見えます。まあ押した方が悪い。

ダコスタにはこの後ドライブスルー ペナルティーが課せられます。ただ、押されたブエミも短気を起こして、たぶん

フランス語でブチギレて文句言ってたと想像しますが、

全く後続の安全を確認しないどこかのセバスチャンと同じようなことをして復帰。GT SPORTでもこうやって戻る人

いますよね。。。ブエミには10秒加算のペナルティーが課せられました。

 

 シムズからすれば追ってくる人が離れてさらにありがたい展開です。しかしこの後4位争いのサム バードと

ミッチ エバンスが接触してしまい、最終的に失速したバードにパスカル ベアラインが押してとどめを刺しSCに。

まだギリギリ並んでいる状態で、相手が引く前提でバードが切り込んでしまったレーシング インシデントかなと

思いましたが、こちらもペナルティーが課せられました。一方とどめを刺してしまったベアラインもウイングの左側が

壊れて外れかけていたんですが、

わざと壁にウイングをぶつけて破損個所を飛ばす荒業( ゚Д゚)

 

 残り約21周でSC退出、リスタートとなりますが、ここで意外なことが発生。トップのシムズがアタックモードを

取得する一方、ダコスタはそのままライン上を走り、慌てて急ブレーキ。

規則上にちょっとした穴がありました。SC下ではアタックモードを起動することができませんが、この有効期間は

Safety car in this lap の告知がなされて退出(第1SCラインを通過)するまで。一方で、追い越しが可能なのは

スタート/コントロール ラインからなので、SCが退出するまでゆっくり走って時間を使っておき、許可されてから

アタックモードを起動すると、順位を失わずに使うことができたわけです。ほとんどのドライバーはこれを

織り込んでここでアタックモードを起動していましたが、ダコスタはそうしなかったため混乱。

 さらに、3位のディグラッシもアタックモードを起動しましたが、4位のストフェル バンドーンが使用せずに同様に

減速すると、5位のマキシミリアン ギュンターがこれを気にせず抜いて行ってしまい、結局ギュンターにも

レース後にタイム加算ペナルティーが課せられました。

 

 審議対象となる案件が多すぎて見ている方もわけが分からない中、さらにリスタートからほどなくして

ロビン フラインスがクラッシュして2度目のSC。残り約10分でSCが退出、したんですが、

まだ作業終わってないやん・・・ 明らかな連絡不備で信じられない失態。SCではもう間に合わないので、

無線で慌てた口調でレース コントロールからFCYの指示。なんとか現場に到達するまでに全車を50km/hに

減速させることができて事なきを得ましたが、二度と起こしてはいけないですね。

原因は単純な連絡ミスで、レースコントロール側は、リスタートまでにはもう重機がコース外に出ているはず、

という見込みで指示を出したものの、実際は重機がなかなか退出できずに手間取ってしまってこうなった、

という趣旨の説明。完全に終了を確認するまで待てばいいだけの話なので、そもそも手順が間違ってると思います。

『もうリスタートするから早く出て』なんて環境で仕事させられたら事故が起きます。

(公式のハイライト映像からはここがカットされて残り8分でSCが退出してリスタートしたかのような映像になってる)

 

リスタート後もシムズは安泰、2位のディグラッシがアタックモードをもう一度使う必要があったため、言わば

ズルをして上がって来たギュンターが替わって2位となりディグラッシを抑える、これも好都合でした。

シムズがフォーミュラEフル参戦2年目で初優勝を手にしました。ディグラッシが2位、そして11位スタートの

バンドーンが3位に入りました。メルセデス速いかもしれん。

 

 アタックモードのアクティベーション ゾーンの設置個所はレースの1時間前に発表されるため、SC時に

こうした使い方ができるか、というのも本番になって初めて分かることで、そういった点でも頭を使うレースでした。

ただこうした混乱が出ることと、本来的にSC中に使用を禁止した意図を考えると、規則を変えてリスタート後の

1周目まで使えないようにした方が良い気もしますね。

 

 そして今回はレース中の接触に、この混乱に、さらに技術的な問題の審議と案件があまりに多すぎて

連絡ミスもそういう慌ただしい環境が遠因ではないかと思います。FEって、他のカテゴリーならシーズン終了まで

なかなか変えないようなことでも、問題があればスパッと切り替えてくる決断の早い組織なのでその点は

素晴らしいと思うんですが、一方で開幕の度に何かしら後退してしまってる部分も感じるので、築いた土台は

きちんと維持してもらいたいなと思います。

 

 次戦は2020年に入って1月にチリのサンティアゴです。