改めまして、ワタクシ scfromla と申しまして、この名前は

プレイステーションのゲームを遊ぶ際のオンラインID SCfromLA から

そのまんま使っております。主にモータースポーツを見た上での雑記と

GRAN TURISMO SPORT(GT SPORT)の公式ポイントレース・

FIA グランツーリスモ選手権の話題を中心に書いています。

専らNASCARが好きなのでNASCAR成分多めです。

 時々、『ひょっとしたら世の中で一人ぐらいこの情報を求めてる人がいて

助かるかもしれないシリーズ』的細かい話題をお送りしていますw

 

 さて、先々週のCoca-Cola 600の放送内で久々にアジャストについての

解説映像があったので、過去何度か取り上げていますが、アメブロの投稿テストがてら

そんな話題を書いてみます。

 

そもそもアジャストとは何ぞや

 

 NASCARではレース中に『アジャスト』というものが頻繁に登場します。

日本語で言えば『調整』ですが、一般的な日欧のレースで言うと、レースが始まれば

フォーミュラだとフロントのウイング角、あとはタイヤの内圧、ブレーキ バランスとか

デフの設定あたりがあると思いますが、NASCARはさらに色々とやってきます。

 NASCARの最高峰・Monster Energy NASCAR Cup Seriesでは

最もレース距離が短いレースでも220マイル(約350km)以上、最長は600マイルで、

3時間以上のレースをほぼ毎回走ります。

 ただ楕円形のコースをひたすら左にグルグル回るだけのオーバルのレースは、

知らない人の印象だと『単純』『簡単』『スリップの取り合い』といったイメージを

抱きがちですが実際は全く異なり、『たった2つしかコーナーが無い』からこそ

そのたった2つを常に完璧に走れないと勝利を手にすることはできません。

オーバルは究極に単純化されたコーナリング競技だと私は思います。

 GT SPORTのオーバルは公式戦だとほぼブルームーンしかなくて、

あそこはただのスリップ合戦なので個人的には

『オーバルってそうじゃないねん』と言いたいし、コーナリング勝負がしたいです(´・ω・`)

 

 レース中に路面状況は刻々と変化していき、中には夕方~夜のレースも

開催されるため、同じセッティングで最初から最後まで完璧、ということはほとんどなく、

基本的な車両セットを条件に合わせて微調整する必要があります。

 スタート直後は速かったのに、日が暮れたらいつの間にか後方に消えた、とか、

もっと細かいと、日差しが当たってるターン1~2は良い感じなのに、

日陰になった3~4で滑る、とかそういうレベルの戦いをしています。

そのためにアジャストが必要となります。

(もちろんアジャストが可能という規則があるから、というのが大前提ですが)

 

 NASCARにおけるアジャストの方法は

・タイヤ内圧調整

・グリル テープ

・バンプ ラバー

・ウエッジ

・トラック バー

の5つとなっています。

 

 また、車両セットの基本的な要素として、もちろんメカニカルなグリップがまず

大事ではあるんですが、もちろんダウンフォースも極めて重要。

 ところが、大きな空力部品を持たない上に共通の車体形状で上面でのダウンフォースを

調整することはNASCARでは基本的にできません。

 そのため、ダウンフォース獲得で違いを出すには『車高を路面ギリギリまで下げる』

のが最大のポイントになります。

 しかし、規定で前の車高は定められており制止状態ではあまり下げられないため、

(スーパー スピードウェイを除く)その条件で車高を下げにかかると、

『走行中、とりわけターンで旋回中に荷重移動と空気抵抗によって沈み込んで

ピッタリ路面にくっつくようにする』という方向性になります。

基本的にNASCARの車がノーズダイブが多くて全体にぐおんぐおんした

動きをしているのはそのためです。

 

 タイヤ内圧はどのレースにおいても重要ですね。グリップ力やハンドリングに

影響が大きいです。やりすぎはタイヤを壊したりします。

また、内圧は車高に影響しますから、内圧設定はダウンフォース量を

決定づける要因にもなります。

 

 グリルテープというのは、名前の通りグリル部分に張るテープ。

camryのロゴの下に『ヨ』みたいに貼られてるやつがグリルテープです。

グリルから風を取り込まないとエンジンが冷えませんが、グリルの穴を

開ければ開けるほどボンネット内に空気が持ち込まれて抵抗になり、

入った空気の出口が狭いので(いわゆるルーバーが無い)、下から上に

持ち上げるような力が加わります。ですから、必要に応じて穴をテープで塞ぎ

ダウンフォース増加や空気抵抗逓減を行います。

貼り方に色々コツがあるらしく、特に夜になっていくレースではどんどん増えて行きます。

 

 バンプラバーというのはサスペンションのスプリングに噛ませるラバーで、

噛ませるとバネは自由に動くことができなくなる→実質的に

固めたことになるので大きくセットが変わります。

出し入れするとピット作業時間が伸びるうえにかなりバランスが変わるので、

これをやる時はたいていセッティングが全く合っていない時です。

 

 

シャシー アジャスト

 

で、特に独特なのがこれから紹介する2つ、ウエッジとトラックバーです。

シャシー本体の調整なので、まとめて『シャシー アジャスト』と呼ばれます。

(英語的な発音では『チャシー』の方が近いです)

レースを見ていると、時々クルーのおじさんがリアのウインドウに黄色い棒を

突っ込んでグルグル回していると思います。

これがシャシーアジャスト。車を後ろから見てみると

窓にオレンジ色の丸いものが3つあります。アジャスト用の穴で、ここに

レンチを突っ込んで要するにネジを回しています。

 

ウエッジ アジャスト

 

 ウエッジというのは、右前輪-左後輪と左前輪-右後輪にかかる荷重の比率=

クロス ウエイトのことを指す言葉です。

 例えば4脚の1㎏の机があったとします。足の長さが均等であれば、各脚部には

250gの荷重がかかっていて、クロス ウエイトは500g: 500gで1:1です。

ここで、左手前の脚の下に紙きれを差し込んだとします。すると、机の左後ろが高くなって

不安定になり、右前-左後にかかる荷重が増して、逆に残る2脚からは

抜けていることが分かると思います。

ウエッジアジャストというのは、このクロスウエイトを変えることでセッティングに

調整を加えることを指します。ウインドウの穴で言うと左右にあるやつで、

右側では上の穴がウエッジです。

 中身を見ると、この穴の真下はサスペンションのスプリング部分に繋がっており、

その上端部分に受け皿のようになっている箇所があります。アジャスターです。

ウインドウにある穴からレンチをグルグルと回しますと

この場合右回りなので締める方向ですが、そうすると受け皿部分が下に下がります

お皿が下がったことでスプリングがギューーーッと押さえつけられました。

先ほどの例えで言えば、机の脚に紙を挟み込んだような状態です。

ウエッジを足す、入れる、とか表現します。

 一般的に、右のウエッジを減らすとタイト、足すとルース方向のセットになります。

左だと当然この逆になりますね。

 また、これによって車の姿勢自体が変わりますので、ターンでの

路面との距離も変化→ダウンフォースにも結局影響します。

 

トラックバー アジャスト

 

 トラックバーは右側の下の穴にレンチを突っ込んで調整します。

トラックバーというのはサスペンションの左右を支えるつっぱり棒のようなもので

 左側は車体に固定されていて、右端が上下に動くようになっています。

だからアジャストの穴は右側にしかないわけですね。

ちなみにNASCARのリアのサスペンションは独立懸架ではなく左右が

繋がっているリジッド サスペンション、板バネ、とか言われる形式です。

世の中の乗用車にはもう使われてない型式ですね^^;

 

で、これもまたネジで回せるようになっているので

グリングリンと回してあげると

動きます。この場合反時計回り、緩める方向なので上に上がりますね。

こちらはまさしくつっぱり棒、スタビライザーのような役割なので

リアのロールの剛性だったり、ロール センターだったりが変化して

ハンドリングが変わります。

一般に上げるとルース、下げるとタイトになります。

 昨年までの数年間は、ドライバーが車内からトラックバーアジャストできる、

という驚き最先端技術が導入(ちっさいモーターでネジをクルクル回すだけ)

されましたが、今季から再び禁止となりました。

 

 どのアジャストも、少ないにこしたことはないわけで、見ていて

ピットの度にグリグリ回してる人はセットが合ってない、調子が悪い、

と捉えることができます。めっちゃ回した後急に競争力が高まったら

『賭けのアジャスト大成功!』ということになりますね。

 

インチキ アジャスト

 

 最後にオマケ。最近では監視が厳しくて見かけなくなりましたが、

NASCARは重箱の隅をつついてつついて、もう何もない、と思ったところから

さらにつついて最後のひとかけらを探す競技なので(笑)

みんな色んなインチキを狙っています。

 過去には

『タイヤにわざと微細な穴を開けて、一定以上に内圧が上がらないように加工する』

というインチキが騒ぎになりました。

 また、車体の空力性能が限られているがために、実はぶつかって

車体が凹むと空力性能が向上することがあります。

ミスってぶつけたらなぜか速くなった、これ笑い話じゃなくて本当にあったんですw

 

 これに気づいた陣営がピット作業で故意に車体の特定箇所を凹ませる、

という事例もありました。規則で禁止されているのでやってはいけないんですが、

故意でなくて事故なら許される、という解釈から

『ピット作業中にうっかり誤って体がぶつかったふりをして凹ませる』なんて

とんでもインチキまで登場( ゚Д゚)

でも芝居が下手すぎるとバレてペナルティーでしたw

 

 今はかなり監視の目も厳しいのでこの手のインチキは最近見なくなりましたが、

みんな隙あらば何かやろうとたくらんでいるのは間違いないので、

今後また新たなものが出てきても不思議ではないです。

 

 とまあこんな感じで投稿先が変わっても相変わらずな内容で

お送りしてまいりたいと思います。ちゃんと投稿できたかな?