FORMULA 1 GRAND PRIX DE MONACO 2019
Circuit de Monaco 3.337km×78Laps=260.286km
winner:Lewis Hamilton(Mercedes AMG Petronas Motorsport/
Mercedes W10 EQ Power+)
フォーミュラEに続いてF1がモナコにやってきました。
特別な一戦であるモナコですが、今年はその意味合いが大きく
変わることになりました。
開催を週末に控えていた5月20日、3度のF1チャンピオンで
メルセデスF1チームのノンエグゼクティブ チェアマンを
勤めていたニキ ラウダが亡くなりました。70歳でした。
偉大なドライバーの訃報を受け、このレースは
ラウダの追悼ムードが漂う”特別な”レースとなり、そして
ルイス ハミルトンが勝利を挙げました。
メルセデスにハミルトンを招き入れたのがラウダでした。
ハミルトンは予選Q3、2回目のアタックでバルテリ ボッタスを
上回る会心のPP。3位にマックス フェルスタッペンです。
一方フェラーリは今日もやらかし病。土曜日のフリー走行P3で
セバスチャン ベッテルが事故って車両大破。
そしてQ1ではシャルル ルクレールが明らかに
当落線の測り間違いでノックアウト。ベッテルはやはり
自信を持って走れていない雰囲気な上に壁にこするミス。
壊さなくてよかったですけど。
決勝日は雨が降りそうだ、という予報で、そのせいか
スタートからえらく上位は速いペースで走行。
前を追って争う気のない5位のダニエル リカルドが後続を
思いっきり蓋してタイヤ温存走行した結果、毎周2.5秒ずつ
前方から離れていって、10周でもうトップと30秒近い差に( ゚Д゚)
そんなころ、なんとか抜けないモナコで抜いて前に出たい
ルクレールが無茶な走り。ロマン グロージャンはなんとかは強引に
抜いたものの、同じ事を繰り返したらニコ ヒュルケンベルグと
接触してスピン。そしてタイヤを傷めて次の周に入ったら
タイヤがぶっ壊れて破片をまき散らしSC導入となりました。あーあ。。
まだまだ距離が長いので、ピットに入るならソフトからハードへ
乗り換えたい上位陣ですが、メルセデスはミディアムを選択。
そしてフェルスタッペンが危険なリリースでボッタスをやや
壁に追いやってしまい、フェルスタッペンは順位を2位に
上げたものの5秒ペナルティー。
一方ボッタスはホイールを壊したので再ピットしてハードに交換。
2位だったのにこれで4位へ転落しました。不運。
ここからハミルトンはものすごく我慢のレース。
最後までもつか分からないタイヤに文句を言いながらの走行。
そして降ると言われていた雨は確かに近隣では降ってるけど
コースには来ない!
文句を言い、それをピーター ボニントンがなだめ、を
繰り返してひたすら周回。何せ昨年はMGU-Kの無い
リカルドがトップを守れたぐらいなので、とにかく脱出さえ
上手く行ってしまえば抜かれはしません。
ましてや相手はそんなに直線が伸びないレッド ブルです。
さすがに最後まで黙ってるほどフェルスタッペンは
甘くないだろうと思ったら案の定76周目に勝負。
でもどう見ても遠すぎて接触。幸いホイール同士が綺麗に
当たったようでハミルトンはパンクも免れて逃げ切りました。
いくら抜けないからと言っても、チームがレース後に失敗と
認めたダメなタイヤで耐えきる精神力・技術はさすが。
ギャップのグラフを見ると通常はトップの車に対して
とりわけトップ3チーム以外の人たちというのはどんどんと
離れていって右上の方に折れ線が遠ざかっていくものですが、

序盤は急激な右肩上がり、つまり極端なペース差でどんどんと
離れていた(極端な話リカルドに全員詰まった)のに、SC以降は
緩やかな傾斜になったばかりか、途中からは追いついている
車両すら多いことが分かります。
それだけハミルトンは徹底的にペースを落としていた、
ということになると思います。
そのリカルドですが、SCでこれ幸いとピットに入ったら他は
けっこうステイ アウト。そしてステイ組に詰まって今度は
自分がハマる側に回ってしまい、10位がやっとでした。
川井 一仁によれば、このレースでのコース上の追い抜きは
たったの2回だったそうです。
ルノーと言えば、親会社の方でフィアット クライスラーとの
合併協議が本腰を据えたものになってきましたね。
仮に実現すると、F1にフェラーリ、(名前だけだけど)アルファロメオ、
そしてルノーと同一グループで3つも参加、2つの独自PUを
開発してお金をかける意味ってなんか薄い気がするんですけど、
F1への影響というのも、会社の統合協議には全く些細な話ですが
見る側としては気になるところです。
今年の車両はどうも鬼レーキ仕様でレッドブルっぽく
作ってみたものの、なんかウイングの端が路面にこするぐらい
極端な設計になっている一方でリアの安定性をきちんと
確保できていないからすんごい乗りにくそうに見えます。
レッドブルの方はフェルスタッペンが結局ペナルティーで
4位となりましたが、ピエール ガスリーが5位、
そしてトロ ロッソもダニール クビアトとアレクサンダー アルボンが
7、8位となりホンダPUは全員入賞。
特殊コースではありますが、若いアルボンは堅実に走りましたし
素直に喜べる結果だと思います。
ガスリーとフェルスタッペンとの差は気になりますが、
さっきルノーの話でも書いた通り、レッドブルは鬼レーキで
かなり変な車なので、おそらくどんなドライバーでも
今までの自分のドライビングの常識とはちょっと違うことが
起こっている可能性が高いです。
合う人が化学変化を起こす一方で、ダメな人はたぶんとことん
ダメな、乗り手を選ぶ車両だと思うので、このまま行くなら
チームは『とりあえず他の奴を乗せる』ことを考えるかも
しれませんし、実はその方が彼のためな可能性も無くはないです。
川井ちゃんの話だと、ラウダとハミルトンが初めて会ったのは
ハミルトンが宿泊しているホテルの部屋。時間は深夜2時。
ラウダは
「こんな時間に男の部屋を訪ねたのは初めてだから、そっち系の
人だと誤解されないかドキドキした」と冗談めかして
当時を振り返ったそうで、そうしてラウダが声をかけて
ハミルトンはメルセデス入りを果たすことになります。
ハミルトン×ニコ ロズベルグの局面ではハミルトンを
擁護することも多く、なんとなくハミルトン派な印象を受ける
彼ではありますが、そもそも愚直なタイプの人なので、
派手派手でマナーも悪くて全然真面目にレースしてるように見えない
ハミルトンには元々批判的だったとのこと。
『気に入ったから手のひらを返した』と感じるかどうかは
受け取る人次第かもしれませんが、たぶんチームのご意見番として
裏では色々と訓示もしていたでしょうし、アウトローな感じの
ハミルトンが今でも勝利に対する執着心・驚異的な集中力を
発揮し続けられる背景には少なからずラウダの存在と
いうものがあると思います。それだけに、この勝利は
チームにもハミルトンにも特別なものとなったことでしょう。
私は、あの時代にして「命の危険を冒してまでレースをするな」
という意思を明確に発信し、あるいはただ金持ちや荒くれ者が無謀に
競うだけの競技から、知力も駆使して戦うスポーツへと
時代を移していく、現代的なレース・ドライバーの先駆者ではないかと
思っています。
改めてニキ ラウダのご冥福をお祈りいたします。
次戦はカナダです。