SUPER GT 第2戦が開催されている同じころ、ドイツでは
ターボ化で冷却が大事なため、昨年までフロントにあった
R-Motorsport II のダニエル ユンカデラ(上)と
DTMも例年通り開幕しました。
Desk Top Music、ではないですよ、
Desk Top Music、ではないですよ、
Deutsche Tourenwagen Masters です。

2019年のDTMは色々と変化がありますので、レースの話題に
移る前に、まず何が変わったか整理しておきましょう。
と言っても、情報が少ないので間違えていたら
ごめんなさいなんですが。
DTMとSUPER GTのGT500クラスは、規則統合、交流戦の
実現に向けた動きを進めてきましたが、DTMは今年からこの
『クラス1規定』と呼ばれる車両規定を完全採用。
(SUPER GTでは2020年より採用)
車体はもう昨年の段階から基本的に採用されていて、
相変わらず共通のモノコックに各メーカーのベース車両っぽい
皮をかぶせた限りなくプロトタイプ車両に近い設計です。
共通部品を数多く採用してコストを削減しつつ、
面白く均衡したレースを演出し、メーカーの宣伝に寄与させる、
というのが大きな目的です。
ざっくり言うと、車体の下半分は同じ形状で、ルーフなどの
上にある部分の形状を、ベース車両の寸法を基に
『スケーリング』という作業で拡大・縮小し、シャーシ側に
サイズを合わせています。そのため、ベース車両が何でも
全く同じ形状、というわけでなく、特にルーフのデザインや
傾斜のラインなどは幾分か競技車両に反映されます。
車両最低重量(ドライバー・燃料込み)は1070㎏と
昨年より45㎏も軽量化されています。
そして大きな変更点がエンジンで、2000年に現DTMと
なって以来、延々と続けてきた4L V8エンジンをとうとう廃止、
SUPER GTが既に2014年から採用している、
2L 直列4気筒ターボに刷新されました。
出力は600馬力程度と昨年より50馬力ほど向上、そして
昨年までのV8は148kgあったとされる重量が、新エンジンは
規定最低重量が85kgと大幅に軽量化、車両重量の
軽くなった要因はほぼエンジンですかね。

アイラブドイチェポストのプレートは撤去、RS5は妙な
違和感に襲われますね(下が昨年、上が今季)
余談ですが、関係者の話や情報サイトの話からすると、
いわゆる車両価格というものは、日本円にしてだいたい
8000万円から1億2000万円程度になっているそうです。
(代表のゲルハルト ベルガーは
「GT3と比べても競争力のある価格」としているので
概ねこのあたりであると想像できます)
なお、11月にはGT500とDTMの交流戦が開催決定、
さらに10月のDTM最終戦ホッケンハイムにGT500車両が
また輸出されるようですが、今回は顔見世デモ走行ではなく
テスト参戦するとの噂もあります。
実はGT500はクラス1規定を採用してはいますが、
DTMの規則はコスト削減優先で改造範囲が狭く、そのままでは
SUPER GTのメーカーの皆さんがお怒りなために、
クラス1規定だけどGT500専用にそこから改造範囲を
特別に広げた、言うなれば『クラス1+α』で戦っています。
これら交流イベントでは本来のクラス1規定を採用するため、
GT500車両はいくつかの空力部品を排除して共通部品に
換装する必要があるほか、エンジンも副燃焼室などの
お金がかかっている開発部品は一部撤去しないといけません。
そして厳密にはMRのNSXはクラス1規定に合致していないので、
特別性能調整を施す、ということになります。

昨年限りでAMGメルセデスは撤退しましたが、
新たにアストン マーティンが参入、これに従来からいる
アウディーとBMWの3社によるレースが行われます。
と言っても、アストンマーティンはワークスという立場とは
やや距離を置く形で、アストンマーティンのGT3活動などで
セミワークスのような形で活動しているR-Motorsportという
コンストラクターからの参戦。
そしてそのR-Motorsportは昨年までメルセデスの活動を
担っていたHWAと提携しており、見ようによっては
『HWAがメーカーだけ変えて出てきた』ようにも見えます。
実際、彼らが搭載するエンジンはメルセデスの活動継続を
前提にして開発していたエンジンと思われます。
(F1活動でアストンマーティンはレッド ブルのスポンサー、
そのレッドブルは今年からホンダPUなので、ホンダの
NSXのエンジンを使うのでは?との噂があり、実際
ホンダは『いくらで借りれる?』と聞かれたので見積もりは
提示したんですが、採用とはならなかったようです)
そのR-Motorsportからは4台が参戦、チーム選手権を
争う都合上、エントラントでは
R-Motorsport I と II の2チームに分かれています。
で、そのヴァンテージなんですが、カラーリングはというと

R-Motorsport I のポール ディ レスタ(上)と
ジェイク デニス(下)

フェルディナンド ハプスブルグ(下)
全てR-Motorsportの公式Twitter画像より
見分けがつかねえ!スポンサーとかねえのかよ!w
一応 I と II で黒ベースか灰ベースかの違いはありますが。
昨年は各メーカー6台ずつの18台でしたが、
アストンマーティンは上記の4台、BMWは変化なく6台、
そしてアウディーはワークスの6台に、新規参戦の
WRTから2台で計8台、ということになっており合計18台は
昨年と同じ数字です。
レースの進行では、ここ2年は55分+1周だったレース時間が、
周回数制へと戻りました。また、セーフティー カーが導入された
場合には、レース コントロールの権限で最大3周まで
距離を伸ばすことができるようになっています。
ただしその場合でも最大レース時間は70分と規定されています。
スタートではローンチ コントロールが禁止され、
この新しいパワフルな車両でのスタンディング スタートは
より腕を問われそう。
そして、追い抜きを促進するために
Drag reduction system=DRSと
Push-To-Pass=PTP(と表記することにします)が装備されます。
DRSは昨年は2エレメントのウイングのフラップを開ける、
という形状でしたが、今季はGT500と共通仕様の
横長1エレメントのウイングになったため、導入初期と
同じように後傾させるものになっています。
幅広ウイングは効率がそれなりに高いので、
(というか2013年からの旧規則の初期のウイングは、
DRSが良く効くように、いわゆる c/d値 が悪い、効率の悪い
形状に意図的に設計されていたと思われる)
昨年と比較するとDRSで得られる利益は小さくなると思われます。
作動させる条件は、コントロール ラインを前走者と3秒以内に
通過することです。昨年は1秒だったので緩和されて
旧来の規則に戻りました。
使用回数制限は昨年通りで、最大で12周/36回まで。
1周に最大3回まで使えますが、使用した場合1回でも3回でも
『1周ぶん消費した』言いかえれば
『発動した瞬間に回数を3消費した』ということになります。

DRSは横から見ないと分かり辛い、そしてPTPは
いつ使ってるのか全く見分けがつかない・・・w
そしてPTPは、最大燃料流量が95kg/hから100kg/hになる、
という日本でもスーパーフォーミュラで行っているものと
同じ仕組みです。
こちらも使用条件は前走者と3秒以内でライン通過、
そして最大使用回数は12回/60秒となっています。
1回で最大5秒間の加速が可能ですが、DRSと同様に、
そこで1秒だろうが3秒だろうが、使ってしまうと『1回』
言いかえると『使用した瞬間に残り時間が5秒減る』ことに
なっています。
そしてなんとお得な情報!レースが残り5周
(時間制になっていた場合には残り7分)になると、
レース リーダーを除く車両は、作動要件である『3秒以内』の
規則が解除され、全員が自由にシステムを使用できます。
間違えてはいけないのは、使用回数や時間の制限が
撤廃されるわけでは無いので、既に使い切った人は当然
使えませんし、1周まるまるDRS倒しっぱなし、
ブーストかけっぱなしで走れるわけでもありません。
と、これだけてんこ盛りな要素がある2019DTM、
しかし我々にとって最大のポイントはこれです。
YouTubeでタダで見れなくなった!!
今季からJ SPORTSがDTM放送に本腰を入れたせいか、
色々な契約の問題か、昨年まで見れたレースの配信が
日本ではブロック対象となって見れなくなってしまい、
DTMのレースを見るにはJ SPORTSに加入しないといけなく
なってしまいました。
しかもさらに厄介なことに、DTMは土曜日と日曜日に
同じ距離のレースを開催しますが、土曜日のレースは
J SPORTSオンデマンド、という、スカパーやCATVで
J SPORTSを契約している人でも見れないさらなる別個の
契約者専用の放送となったようで、これだけDTMを愛して
わざわざJ SPORTSに決して高くないお金を払っている
私でもなんと見れない!
一応日曜のレースの前に放送してはくれますが、
結果を知った上でのハイライト映像、という感じなので
臨場感もないしフルで見れない。なんてことしてくれたんだ。
すいません最後はただの個人的ぼやきです(´・ω・`)
コメント欄を見るとカナダやロシアでも同様で、
なおかつ英語の実況にはどうも解説者がいなくて
デービッドが一人で喋ってるので、海外向け英語放送自体
かなり縮小されてしまったのかもしれません。
そんなわけで、せっかく日本でも人気が出そうなところに
J SPORTSがちょっと先走って客を減らしたんじゃないか、
という気がしなくもない2019シーズンですが、
楽しんで参りたいと思います。