SUPER GT 第2戦が開催されている同じころ、ドイツでは
DTMも例年通り開幕しました。
Desk Top Music、ではないですよ、
Deutsche Tourenwagen Masters です。

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 2019年のDTMは色々と変化がありますので、レースの話題に
移る前に、まず何が変わったか整理しておきましょう。
と言っても、情報が少ないので間違えていたら
ごめんなさいなんですが。

 DTMとSUPER GTのGT500クラスは、規則統合、交流戦の
実現に向けた動きを進めてきましたが、DTMは今年からこの
『クラス1規定』と呼ばれる車両規定を完全採用。
(SUPER GTでは2020年より採用)

 車体はもう昨年の段階から基本的に採用されていて、
相変わらず共通のモノコックに各メーカーのベース車両っぽい
皮をかぶせた限りなくプロトタイプ車両に近い設計です。
 共通部品を数多く採用してコストを削減しつつ、
面白く均衡したレースを演出し、メーカーの宣伝に寄与させる、
というのが大きな目的です。

 ざっくり言うと、車体の下半分は同じ形状で、ルーフなどの
上にある部分の形状を、ベース車両の寸法を基に
『スケーリング』という作業で拡大・縮小し、シャーシ側に
サイズを合わせています。そのため、ベース車両が何でも
全く同じ形状、というわけでなく、特にルーフのデザインや
傾斜のラインなどは幾分か競技車両に反映されます。

 車両最低重量(ドライバー・燃料込み)は1070㎏と
昨年より45㎏も軽量化されています。

 そして大きな変更点がエンジンで、2000年に現DTMと
なって以来、延々と続けてきた4L V8エンジンをとうとう廃止、
SUPER GTが既に2014年から採用している、
2L 直列4気筒ターボに刷新されました。
 出力は600馬力程度と昨年より50馬力ほど向上、そして
昨年までのV8は148kgあったとされる重量が、新エンジンは
規定最低重量が85kgと大幅に軽量化、車両重量の
軽くなった要因はほぼエンジンですかね。

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ターボ化で冷却が大事なため、昨年までフロントにあった
アイラブドイチェポストのプレートは撤去、RS5は妙な
違和感に襲われますね(下が昨年、上が今季)

 余談ですが、関係者の話や情報サイトの話からすると、
いわゆる車両価格というものは、日本円にしてだいたい
8000万円から1億2000万円程度になっているそうです。
(代表のゲルハルト ベルガーは
「GT3と比べても競争力のある価格」としているので
概ねこのあたりであると想像できます)

 なお、11月にはGT500とDTMの交流戦が開催決定、
さらに10月のDTM最終戦ホッケンハイムにGT500車両が
また輸出されるようですが、今回は顔見世デモ走行ではなく
テスト参戦するとの噂もあります。
 実はGT500はクラス1規定を採用してはいますが、
DTMの規則はコスト削減優先で改造範囲が狭く、そのままでは
SUPER GTのメーカーの皆さんがお怒りなために、
クラス1規定だけどGT500専用にそこから改造範囲を
特別に広げた、言うなれば『クラス1+α』で戦っています。

 これら交流イベントでは本来のクラス1規定を採用するため、
GT500車両はいくつかの空力部品を排除して共通部品に
換装する必要があるほか、エンジンも副燃焼室などの
お金がかかっている開発部品は一部撤去しないといけません。
そして厳密にはMRのNSXはクラス1規定に合致していないので、
特別性能調整を施す、ということになります。

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 昨年限りでAMGメルセデスは撤退しましたが、
新たにアストン マーティンが参入、これに従来からいる
アウディーとBMWの3社によるレースが行われます。
 と言っても、アストンマーティンはワークスという立場とは
やや距離を置く形で、アストンマーティンのGT3活動などで
セミワークスのような形で活動しているR-Motorsportという
コンストラクターからの参戦。
 そしてそのR-Motorsportは昨年までメルセデスの活動を
担っていたHWAと提携しており、見ようによっては
『HWAがメーカーだけ変えて出てきた』ようにも見えます。
実際、彼らが搭載するエンジンはメルセデスの活動継続を
前提にして開発していたエンジンと思われます。

(F1活動でアストンマーティンはレッド ブルのスポンサー、
そのレッドブルは今年からホンダPUなので、ホンダの
NSXのエンジンを使うのでは?との噂があり、実際
ホンダは『いくらで借りれる?』と聞かれたので見積もりは
提示したんですが、採用とはならなかったようです)

そのR-Motorsportからは4台が参戦、チーム選手権を
争う都合上、エントラントでは
R-Motorsport I と II の2チームに分かれています。

 で、そのヴァンテージなんですが、カラーリングはというと
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R-Motorsport I のポール ディ レスタ(上)と
ジェイク デニス(下)
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R-Motorsport II のダニエル ユンカデラ(上)と
フェルディナンド ハプスブルグ(下)

全てR-Motorsportの公式Twitter画像より

見分けがつかねえ!スポンサーとかねえのかよ!w
一応 I と II で黒ベースか灰ベースかの違いはありますが。

 昨年は各メーカー6台ずつの18台でしたが、
アストンマーティンは上記の4台、BMWは変化なく6台、
そしてアウディーはワークスの6台に、新規参戦の
WRTから2台で計8台、ということになっており合計18台は
昨年と同じ数字です。

 レースの進行では、ここ2年は55分+1周だったレース時間が、
周回数制へと戻りました。また、セーフティー カーが導入された
場合には、レース コントロールの権限で最大3周まで
距離を伸ばすことができるようになっています。
ただしその場合でも最大レース時間は70分と規定されています。

 スタートではローンチ コントロールが禁止され、
この新しいパワフルな車両でのスタンディング スタートは
より腕を問われそう。

 そして、追い抜きを促進するために
Drag reduction system=DRSと
Push-To-Pass=PTP(と表記することにします)が装備されます。

 DRSは昨年は2エレメントのウイングのフラップを開ける、
という形状でしたが、今季はGT500と共通仕様の
横長1エレメントのウイングになったため、導入初期と
同じように後傾させるものになっています。
幅広ウイングは効率がそれなりに高いので、
(というか2013年からの旧規則の初期のウイングは、
 DRSが良く効くように、いわゆる c/d値 が悪い、効率の悪い
 形状に意図的に設計されていたと思われる)
昨年と比較するとDRSで得られる利益は小さくなると思われます。
 作動させる条件は、コントロール ラインを前走者と3秒以内に
通過することです。昨年は1秒だったので緩和されて
旧来の規則に戻りました。
 使用回数制限は昨年通りで、最大で12周/36回まで。
1周に最大3回まで使えますが、使用した場合1回でも3回でも
『1周ぶん消費した』言いかえれば
『発動した瞬間に回数を3消費した』ということになります。

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DRSは横から見ないと分かり辛い、そしてPTPは
いつ使ってるのか全く見分けがつかない・・・w

 そしてPTPは、最大燃料流量が95kg/hから100kg/hになる、
という日本でもスーパーフォーミュラで行っているものと
同じ仕組みです。
 こちらも使用条件は前走者と3秒以内でライン通過、
そして最大使用回数は12回/60秒となっています。
1回で最大5秒間の加速が可能ですが、DRSと同様に、
そこで1秒だろうが3秒だろうが、使ってしまうと『1回』
言いかえると『使用した瞬間に残り時間が5秒減る』ことに
なっています。

 そしてなんとお得な情報!レースが残り5周
(時間制になっていた場合には残り7分)になると、
レース リーダーを除く車両は、作動要件である『3秒以内』の
規則が解除され、全員が自由にシステムを使用できます。
 間違えてはいけないのは、使用回数や時間の制限が
撤廃されるわけでは無いので、既に使い切った人は当然
使えませんし、1周まるまるDRS倒しっぱなし、
ブーストかけっぱなしで走れるわけでもありません。

 と、これだけてんこ盛りな要素がある2019DTM、
しかし我々にとって最大のポイントはこれです。

YouTubeでタダで見れなくなった!!

 今季からJ SPORTSがDTM放送に本腰を入れたせいか、
色々な契約の問題か、昨年まで見れたレースの配信が
日本ではブロック対象となって見れなくなってしまい、
DTMのレースを見るにはJ SPORTSに加入しないといけなく
なってしまいました。
 しかもさらに厄介なことに、DTMは土曜日と日曜日に
同じ距離のレースを開催しますが、土曜日のレースは
J SPORTSオンデマンド、という、スカパーやCATVで
J SPORTSを契約している人でも見れないさらなる別個の
契約者専用の放送となったようで、これだけDTMを愛して
わざわざJ SPORTSに決して高くないお金を払っている
私でもなんと見れない!
 一応日曜のレースの前に放送してはくれますが、
結果を知った上でのハイライト映像、という感じなので
臨場感もないしフルで見れない。なんてことしてくれたんだ。

 すいません最後はただの個人的ぼやきです(´・ω・`)
コメント欄を見るとカナダやロシアでも同様で、
なおかつ英語の実況にはどうも解説者がいなくて
デービッドが一人で喋ってるので、海外向け英語放送自体
かなり縮小されてしまったのかもしれません。

 そんなわけで、せっかく日本でも人気が出そうなところに
J SPORTSがちょっと先走って客を減らしたんじゃないか、
という気がしなくもない2019シーズンですが、
楽しんで参りたいと思います。