2019 AUTOBACS SUPER GT Round1 OKAYAMA GT 300km RACE
岡山国際サーキット 3.703km82Laps=303.646km
(悪天候により30周で終了、規定により通常の半分のポイントを付与)
GT500 class winner:ARTA NSX-GT 野尻 智紀/伊沢 拓也
(Honda NSX-GT/AUTOBACS RACING TEAM AGURI)
2019年のSUPER GT開幕戦は生憎の悪天候により何度も
SCが導入され、結果30周(32周まで進んで赤旗掲示後終了。
規定で赤旗掲示の2周前でレースが確定するため結果上は30周)で
レースが終了してしまいました。30周の内訳を見ても

実質的にレースを行っていたのは9周だけでした。
そしてGT500クラスでは、ARTA NSX-GTが優勝しましたが、
どんよりした空模様と同様に後味の悪い終わり方になりました。
予選ではMOTUL AUTECH GT-RがPP獲得、2位にオフのテストで
常に上位にいるカルソニック IMPUL GT-RとGT-Rが
最前列に並びます。
GT500クラスは来季から新規則ということもあって開発凍結が
行われており、このオフに外観で開発可能なのはフロントの
カナードのあたりのフェンダー、フリックボックスと呼ばれる
部分だけになりました。
GT-Rは昨年とんでもないアンダーステアに苦しんでおり、
前のダウンフォースを改善できるこの規則はラッキーです。
一方残る2メーカーはある程度昨年で完成形なので、オフに
色々凝った形状を試したものの、あまり攻めたことは
やらなかったようです。私はホンダがやりすぎると思っていたので、
「年間通じての安定感を考えると新形状は避けよう」という
判断をしたことにちょっと驚きました。だってあの人たちって
どのカテゴリーでも凝って作りすぎて、ピーク性能はあるけど
実戦では扱いづらいものを作る傾向にあるんですもの(;・∀・)
極端な変更が無いNSXとLC500の勢力図はここでは昨年通りで、
結果一発が遅いLC500はQ2に1台しか進めず全滅状態。
決勝は最初から雨で、MOTULが逃げる一方
3位のRAYBRIG NSX-GTが早速2位のカルソニックを
勢いよく抜いて雨での速さを見せます。で、すぐSCです。
2回目のリスタート、さっきより雨量が増えているようで
自分のタイミングでスタートできるMOTULがどうやら
全然グリップしてない様子。最終コーナーを出た瞬間滑って
もう追いつかれてしまいあっさりRAYBRIGがトップへ。
KEIHIN NSX-GTも速くて2位に浮上、ARTAも追い上げており
NSXが明らかに雨で分がある様子。
一方LC500の苦戦は明らかで、特に後方スタートで
ギャンブル性のある固いタイヤでも選んだのか、
WAKO'S 4CR LC500はGT300のトップに追いかけられています^^;
SUPER GTでは現在は規則で雨用タイヤの溝のパターンが
1種類とされていて、コンパウンドの固さで雨量に対応させる
必要があるんですが、俗に言う深溝、ヘビーレイン用でないと
走れないような路面水量になってきました。。
そして赤旗を挟んで3回目のリスタート後に事件が発生しました。
トップを争う2台のNSX。KEIHINの方がややペースで
勝っている様子で付いて行っていましたが、24周目の
ターン1で軽く追突、RAYBRIGがスナーバックスへ入店。
そして直後に4度目のSC、そのまま赤旗終了となりました。
この接触を審議した結果、KEIHIN・塚越 広大に
ドライブスルー ペナルティー、消化できないのでタイム加算となり、
結局トップ2が同士討ちで消えたので、3位に上がってきていた
ARTAが開幕戦の勝者となりました。
この接触、昨日SUPER GTの公式YouTubeチャンネルに
双方の車載映像もアップされてたので様子を見ることが
できるようになりました。
追突ということでブレーキングポイントが気になったんですが、
アクシデント1周前の2台のブレーキングポイントを
音から推定してキャプチャーしてみたら

23周目はだいたいこのあたり、ちょうど上にダンロップの
ゲートがあって、それが見えるかどうかが一つの目安に
なるかなと思います。カメラの取り付け角度がちょっと
違うんですが、やはりぶつけてはいけないので、僅かに
後ろの塚越の方が手前の位置でのブレーキング、
という風に見えます。これは22周目も同じでした。
ちなみにこの時3位のARTA伊沢 拓也のブレーキング位置は

こちらははっきりとゲートが見えていて、トップ2台よりも
かなり(と言っても時間にすれば一瞬の出来事ですが)
マージンを取っているか、ここでないと曲がれない状態であるか、
ということになるでしょうか。
で、これが24周目の映像

山本 尚貴は先ほどより減速位置が手前になっている様子、
一方塚越はほぼ同じ位置です。
そしてこの後軽く塚越が山本に接触するわけです。
実はこの直前、ピットからは
「すごい雨だ、スタートされたから一番の雨量ではないか」
と情報が来ていました。
そして、4回目のSCの導入理由、レースを管理する
服部 尚貴(元GT500ドライバー)の後日のインタビューでは、
接触車両の回収が理由ではなく、
『雨量の増加でSC導入を告げたら事故が起きた』とのこと。
つまり、もうこの接触が起きる瞬間に関して言えば、
レースを続行できる環境では無くなっていたと推定されます。
こうした状況を考えると、先頭の山本は雨量が増えたので
それまでよりもさらにブレーキングポイント手前にしたと
考えられそうです。映像から推定される23周目のラップタイムは
1分33秒で、ドライのペースを1分20秒程度と仮定すると
116%ぐらいのタイム、かなりひどい雨です。
雨が増えたということは、仮に接触なくもう1周したとしても
さらにタイムは落ち、120%レベルまで落ちたかもしれません。
一方塚越は、前の周とあまり変わらず、そして接触が無くても
おそらく曲がり切れていなかったであろうことから、
水量変化に対してリスクを管理しきれなかった、ということが
考えられそうです。
上記の状況からの私見ですが、塚越は
『アウトから抜きに行った』というよりは、
『仕掛けるつもりはなかったが止まり切れなかった』という
可能性の方が高いのではないかと思います。
彼は元々この多い水量で後ろを走る側なので、勝手にバンバン
しぶきが当たりますから、運転していると雨量が増えても
気付きにくい状況だったため、『このレース一番の雨』
に気付けなかった可能性も考えられます。
レースの基本から考えても、塚越が止まれずにぶつかって
前の車をコース外へやってしまったのですから、
ペナルティーを受けるのは当然の措置だったでしょう。
ただ、山本としても不用意だった点は否定できないように思います。
彼はインから塚越が入ることを警戒して一旦ストレートで
インに牽制を入れた後、ブレーキングしつつアウトのラインに
戻っていきました。
本来的にはブレーキング開始以降の進路変更も避けるべき
行為ですが、相手も既にブレーキングを開始していて、
減速終了時点で並ぶおそれが無いようなケースでは
プロのレースで度々行われている動きだとは思います。
ただ、それはみんなほぼ間違いなくちゃんと止まれる
ドライでの話であって、この条件で、しかも相手がよく見えない、
という中で、同じように『相手が並ぶ恐れがないか』というと、
確証が持てる状態ではなかったと思います。
山本側からすると、もう引いているだろう、という前提で
戻ったのかもしれませんが、実際には塚越は奥で減速を
開始していて「どいてどいて~、当たる~~」という状況に
なっていたわけで、極論すれば、山本はインを走り続けていれば
塚越だけ自滅してSC導入で勝てたわけです。
これを『だから進路変更した山本が悪い』というのは明らかに
違いますが、彼は
『レース結果としての接触責任』は負う必要が無い一方で、
『レース結果を手放すことになったチームやメーカーに対しての責任』
は一定程度負わなければいけないと感じます。
つまりどちらかというと『身内への責任』です。
どうやら、SNSなどにおいて、この『同士討ちの首謀者・塚越』
に対し、かなり厳しい非難を投稿する人がいるようですが、
悪かったことに違いは無いですが、イチイチ棘のある表現、
暴言、罵倒するような人を見かけても、相手にしないか、内容次第では
通報することを個人的には推奨します。
本件に限らず、世の中では何かしらの案件について、
極端な表現で罵ろうとする人が増加している印象があります。
インターネットの基本中の基本として、よく考えて投稿する、
誰が見ているか分からない、世界に発信されるから言葉遣いに
気を付ける、こういったことを理解できていない人が多いです。
とりわけ、短文のSNSでは、私のように大量の文字数を使って
何かを表現したり、時間が経過してから投稿しても
読まれないため、それが余計に短い言葉で煽る、冷静に考えず
反射的にある一面だけを見て即座に暴言を書く、という行動に
繋がっているように感じます。
仮に内容が正しいものであったとしても、軽率な行動を
自制できない、常識を守れない人は信用できませんし、
ましてやそうしたコメントに追随して
「ここは好き勝手暴言書いても良い場所だ」と勘違いして
ストレスを発散しているような人たちよりは、この雨の中で
必死に車を操り、結果接触してしまった塚越の方がよほど
素晴らしい人間だと私は思います。
私の記事も単なる素人レベルの推論なので、誤りだらけかも
しれませんし、いちいちこれだけの文字数と手間をかけて
ツイートしろとまでは当然言いませんが、インターネットも
現実世界に他ならず、『現実とは違う別の場所』ではありません。
もうちょっと分別を持って使ってもらいたいですし、
できないなら使うべきではないです。
オンラインゲームも全く同じことが言えます。
全然話題が違う方へ行ってしまいましたが、GT300に続きます。。。