ABB FIA Formula e Championship
ピケは
CBMM Niobium Mexico City E-Prix
Autódromo Hermanos Rodríguez 2.092km
winner:Lucas di Grassi(Audi Sport ABT Schaeffler/Audi e-Tron FE05)
FE第4戦メキシコシティー。他のイベントと異なり、
エルマノス ロドリゲス サーキットを使うので
「『全戦市街地』ではないのでは?」と言いたくなりますが、
このサーキット自体が公園の中にあったり、野球場が中にあったりと、
ざっくり『半公道』というような立ち位置になると解釈して
おきましょう。
そんなレースは、最後の最後まで高い緊張感のあるレースとなり、
ルーカス ディ グラッシがフィニッシュ直前に逆転して
優勝を飾りました。
電気が足りねえ!
マヒンドラのパスカル ベアラインがPPを獲得して始まったレース、
解説の由良 拓也が時々「バーレーン」と言ってますが、それはさておき、
4位スタート・日産のオリバー ローランドが2位へ浮上。
このコース、幅も広いしストレートはそこそこ長いんですが、
いかんせんターン1は鈴鹿のデグナー1みたいな高速一発切りの
コーナーなため、抜きたくても抜けません。
開始わずか3分あまり、ネルソン ピケがジャン エリック ベルニュに
追突して大破。

「彼はディフェンスしてきた、出口で失敗していたからね、
そしてずいぶん早く回生してきたんだ。そんなに早く減速するなんて
僕には想定できなかったよ。全部覚えてるさ、ぶつかって、
離陸して、全部ね」
一方ベルニュは
「僕がインにいたら彼はブレーキを忘れたんだ。それまでに
既に3回もこっちに当たって来ていた、彼が何を考えてるのか
さっぱり分からないね」
ベルニュはこの後、ピケのチームメイトであるミッチ エバンスとも
接触して、とことんジャガーにいじめられました。13位で無得点でした。
これで赤旗となったレース、再開後はベアライン、
ローランド、ディグラッシ、セバスチャン ブエミ、
アントニオ フェリックス ダ コスタの5人が僅差のレース。
ダコスタはブエミに仕掛けて接触した時に足回りが壊れて
真っすぐ走らなくなったっぽいですが、その後も普通に走ります(´・ω・`)
各車SC明け直前から1度目のアタック モードは使ったので、
焦点は2度目の行使のタイミング。
接戦では使うと抜かれるので、隊列の後ろの人が使い、
そうすると一時的に差ができるので、その1つ前の人が、と
玉突きになるのがセオリー。
そんなわけで、レース終盤に各車セオリー通りな動きをしていき、
いよいよ2位のローランドが権利を使ってトップの
ベアラインへアタック、と思ったら、差が既に小さかったせいで
焦ったのか、権利取得後に滑ってしまい、ディグラッシに
抜かれてしまいました。
『権利取得サイクル』で唯一、痛恨の順位ダウンです。
ベアラインは、これで後続と差ができたので安心して権利を取得、
しかも既に2周前からアタックモードを使っていて時間切れが近い
ディグラッシが相手なので、きっちりこれも凌いで、あとは
チェッカーまでの5分あまりを逃げ切るだけ、と思われました。
ところが、アタックモード終了後、明らかにリフト位置が早く
猛烈に追われるベアライン。表示されたバッテリー残量は
ディグラッシと2%ほどの開きがあります。
計算上あと3周ありそうなところでもうあと6%、、、
単純計算で1周2%強必要なはずなので、順位どうこうより走り切れるか
怪しい気がしてきました。
それでも、レイアウト上インを開けなければぶつけない限り
抜きようがないようなコースなので鬼ブロック、その間に
3、4位の日産勢も追いついてきます。
が、、、この2人、これからファイナル ラップに入るのに既に
残り1%、明らかに残り周回数の計算を間違えて走ったようで、
ファイナルラップに入った途端失速、結局『電池切れ』でDNFでした。
そしてトップ争いはターン3のシケインで、電池切れ寸前で
死に体のベアラインとディグラッシが交錯。
やや押し出される格好でベアラインはシケインを直進して
そのままチェッカーへと向かいますが、もう0%になってしまい
最後は急失速。その脇をディグラッシがすり抜けて
チェッカーを受けました。
ベアラインは電力使用量超過による失格は免れましたが、
シケイン不通過の判定で5秒加算されて6位。
日産勢が消えたため、2位はハンドルの曲がったダコスタ、
3位はエドアルド モルターラでした。
ディグラッシは経験者の老獪な技とでも言いますか、若者に対して
追い上げつつ電池残量で優位に立ち、最後の最後に差を生かす、
というFEの戦い方を見せつけた感じです。
ただ、これって振り返ればフェリックス ローゼンクビストも
デビュー当時こんな感じで、やがてレースのやり方を学んだら
すごい戦闘力になったので、そういう点でベアラインはこの先
益々脅威になってくるなと感じさせられるレースでもありました。
元々DTM時代からの印象として、車の状態が悪くても
文句言いつつそこそこのタイムでまとめて走ってしまうタイプの
ドライバ―だと思うので、この特殊な車への適応力が
高いのではないかな、と思います。
今回は赤旗が出た関係で計算がややこしくなり、これが日産の
ミスにつながったようですが、それにしても明らかに不足して
走り切れない、というのはあまりに残念な結果。
オペレーティングは基本的に昨年までのルノーと同じく
e.damsが担当しているはずなので、経験のある彼らがなぜ
そんな単純ミスを犯してしまったのかが気になります。
単純ミスと言えば、ホゼ マリア ロペスはしょうもないペナルティーを
立て続けに受けてレースする以前の段階でバタついていました。
そして、ストフェル バンドーンも、レース後半にしか使えない
ファンブーストをなぜか序盤にいきなり使った上に、
システムの不具合だったのか、規定の100kJを超えたエネルギーを
使用してペナルティー。
1、2回のミスなら、まあそういう日もある、慣れてないし、
運が悪かった、で済みそうなんですが、ロペスは参戦開始以来
明らかに変なミスが多い気がしますし、バンドーンも
いくら新人とはいえちょっといらないミスが多すぎて、
いずれも『期待外れ』と思われても仕方ない状態。
次戦からアジアへと開催地が映りますが、流れを変えないと
今年限りになる危険性が高い気がしました。
あと単純に、ここのコース、去年も書いた気がしますが、
ターン1が高速だと抜きどころが無くて退屈なので、
わざとバリアを作って90度コーナーにするとか
工夫が必要かなと思いました。メキシコのお客さんは熱狂的で
素晴らしいと思いますが、今回最後に盛り上がったのはある種運が
良かっただけの話で、今のレイアウトだとただのパレードのレースを
見せられる可能性がちょっと高すぎます。
次戦は香港で開催されます。