2018-2019のABB FIA Formula E Championshipが始まりました。
これまでの4シーズンはSpark-Renault SRE_01Eをベースに
空力部品のアップデートやパワートレインの開発許可こそあれ、
車体の基本は同じでした。
 しかし今季から車両がGen2と呼ばれるSpark SRT05eへと
変更され、大幅に性能が向上、レースの方式も変わりました。
 レースを振り返る前に、まず変更点から確認したいと思います。
イメージ 2
SRT_01E
イメージ 1
SRT05e

 旧型と新型の主な数字を比較してみますと
SRT_01E


SRT05e
5000mm
全長
5160mm
1780mm
全幅
1770mm
1250mm
全高
1050mm
880kg
総重量(ドライバー含む)
900kg
320kg
バッテリー重量
385kg
200kw
最高出力
250kw
180kw
レース時最大出力
200kw
28kwh
バッテリー容量
54kwh
150kw
最大回生量
250kw
※SRT_01Eの数字は2017-2018シーズンのもの。
 微妙に情報ソースによって数字が違ったりするので
 旧車のスペックはやや曖昧です。

 斬新なデザインが目を引きますが、やはりスペック上で
驚くのは、バッテリー容量が1.9倍になったにもかからわず、
重量は1.2倍にとどまり、車両の総重量はわずかな増加
とどまったということです。
 そしてこうした車両の大幅刷新でレースの方式が変わりました。

〇距離制から時間制へ、乗り換えは消滅
 今までは周回数制のレースでしたが、今季からは45分+1周の
規則に変更となりました。
 そして、FEの風物詩だった『車両乗り換え』は、
バッテリー容量強化によって消滅、1台の車で50分弱のレースを
走り切ることになりました。
 回生量が増えていることからも分かる通り、とにかく
賢く電力を使い、回生で巧みに航続距離を伸ばす走り方、
そうした酷使に対しても熱害を起こさずに耐えられる
パワートレインが必要ということになりそうです。

〇『マリカー』みたい?アタック モード
 今季からの目玉企画その2が、アタックモードと名付けられた
新しいシステム。本当にマリオカートをヒントにしたそうです( ゚Д゚)
 各イベントに、アタックモード検知ポイントを設置。
ドライバーはここを入り口から出口までに設置された検知点を
きちんと通過するとアタックモードが発動。
通常200kwの最高出力が225kwになります。
ただし、このゾーンはレコード ラインからはやや外れた位置にあるため、
取りに行くとタイムを一時的に失います。
集団で走ってると下手したら順位も失います。
うっかり検知点を踏み損ねると、アイテムを取りに行って
失敗したようなもんで、ただの大バカ者になりますw
 もちろん、25kwの出力アップにより追い抜きが容易になるので
頭を使う必要がありそうです。

 そしてこのアタックモード、使用できる回数と継続時間は
レース開始1時間前に発表されます。
 これは、各チームが予め綿密なシミュレートを行うのを防ぐためです。
また、この制度はピット義務の代わりという位置づけもあるため、
必ず使い切る必要があります。ラリー クロスのジョーカー ラップとも
近い考えかもしれません。
 当然ながら、高出力=電力消費も増えますし発熱も進むため、
アタックモードだからと言って丸々得するわけでもありません。
やはり頭を使います。もちろん、権利だけ得て一切パワーは上げないで
義務だけ消化することも一応できます。

〇ファン ブーストは対象拡大
 ファン投票の上位ドライバーにレース中に一時的に
高出力モードを使用可能とするファンブースト制度も継続されます。
今季は上位3人→5人へと対象が広がりました。
 昨季は乗り換えた後の後半の車両で使用できましたが、
乗り換えが無くなったため、レース開始後22分が経過した時点から
使用が可能となります。
アタックモードの際に使用することで225kwの出力にさらに
15~25kwの追加出力を、総量100kJまで追加することができます。
前半でアタックモードをさっさと使い切ったら意味無いですねw


 そして最後にチームとドライバーです。
(▲体制等に変更有 △移籍 ●〇新規参入/新人)
Envision Virgin Racing    Audi e-tron FE05
    Sam Bird
Robin Frijins

Panasonic Jaguar Racing    Jaguar I-Type III

    Nelson Piquet Jr.

    Mitch Evans

HWA Racelab    Venturi VFE05

Stoffel Vandoorne

Gary Paffett

Geox Dragon Racing Penske EV-3

Maximilian Günther

José María López

NIO Formula E Team NIO Sport 004

Tom Dillmann

 Oliver Turvey

Audo Sport ABT Schaeffler Audi e-Tron FE05

 Lucas Di Grassi

 Daniel Abt

Venturi Formula E Team Venturi VFE05

Felipe Massa

   Edoardo Mortara

Nissan e.dams Nissan IM01

Oliver Rowland

 Sébastien Buemi

DS Techeetah Formula E Team DS E-Tense FE 19

   Jean-Éric Vergne

 André Lotterer

BMW i Andretti Motorsport BMW IFE.18

Alexander Sims

   António Félix da Costa

Mahindra Racing Mahindra M5Electro

Jérôme d'Ambrosio

Pascal Wehrlein


 特に変更がないのが、パナソニックジャガー、アウディー、
の2チーム。
 昨年圧倒的な強さだったテチーターはサプライヤーがルノーから
DSへ変更、F1的に言えば『ワークスパワートレインを手にした』
とでもいう感じでしょうか。
 そのルノーは撤退して、それを引き継ぐ形で日産が参戦。
セバスチャン ブエミは継続で起用されますが、相方は
当初アレクサンダー アルボンを予定していたのが、ドライバー不足の
レッド ブル陣営に引き抜かれてF1のトロ ロッソへ行ってしまい、
オリバー ローランドになりました。

 DSが抜けたバージンはアウディーのカスタマーになり、
個人的にイチオシのロビン フラインスが加入。
 HWAはメルセデスの『先遣隊』と見られ、ベンチュリーの
PTを使用します。
 そのベンチュリーにはフェリペ マッサが加入。
HWAのストフェル バンドーンとともに、また元F1が増えました。

 一足先に参加のBMWはアンドレッティーと組む形となり、
BMWのドライバーとして有名なアレクサンダー シムズが加入。
暴れん坊のアントニオ フェリックス ダ コスタがアンドレッティーから
継続起用されます。

 マヒンドラはエースのフェリックス ローゼンクビストが
インディーカーへ転向するため離脱、昨年までドラゴンにいた
ジェローム ダンブロジオとパスカル ベアラインのコンビに
なりましたが、ベアラインはまだメルセデスの契約が年末まで
残っているようで、開幕だけローゼンクビストが乗ります。
あ、ここも元F1コンビですね。


 かなり顔ぶれも変わりましたが、何せ車の癖が強くて、
レースのやり方も特殊なので、最初の数戦は経験者が圧倒的に
レースで強いのではないかと思います。4~5戦しても遅い人は
残念ながら適応力が無い、FEのレースのやり方と合わない、という
ケースが多いので、新人さんたちは最初の3戦までで
きちんと学びきって、シーズン中盤から慣れた人たちと同等に
戦えるようになるかどうか、が大事になると思います。

 日産に日本人起用できないの?と思われた方も
いるかもしれませんが、データ集めには力量のある人が
必要不可欠ですし、チーム運営はe.DAMSが中心なので
当然日本人の方がコミュニケーションも取りづらいです。
 そして、意外と知られていませんが、現在
フォーミュラEに出場するためには、FIAの
スーパー ライセンス ポイントが直近の3シーズンで20点必要なので、
日産配下で条件を満たせる選手はあまりいない、というのが実情です。