FORMULA 1 GRANDE PRÊMIO HEINEKEN DO BRASIL 2018  São Paulo
Autódromo José Carlos Pace 4.309km×71Laps=305.879km
winner:Lewis Hamilton
 (Mercedes AMG Petronas Motorsport/Mercedes F1 W09 EQ Power+)

 F1第20戦ブラジル。1周が短いので周回遅れが出やすい、
ちょっとしたミスで予選順位が変わりやすい、暑いからタイヤに厳しい、
そんなイメージのインテルラゴスこと
アウトドローモ ホゼ カルロス パーチェですが、レースはまさに
そんな要素を体現したような内容となり、ルイス ハミルトンが
今季10勝目、メルセデスはコンストラクターズ選手権の
5年連続獲得が決定しました。

 予選ではルイス ハミルトンがPP獲得、セバスチャン ベッテルが0.093秒差、
3位がバルテリ ボッタスでベッテルから0.067秒差、4位の
キミ ライコネンがボッタスから0.015秒差。1周67秒しかないので
すごい僅差になります。
 5位マックス フェルスタッペン、6位ダニエル リカルドは前方からは
0.3秒"も"離されましたが、お互いの差はたったの0.002秒。
ただ残念ながらリカルドはPU交換でグリッド降格です。

 決勝のスタートではボッタスが2位へ、フェルスタッペンが4位へ上昇。
ライコネンは一旦フェルスタッペンを抜き返したものの、
マックス君は今週もゴキゲンで、3周目に再びライコネンを抜くと
4周目に続けてベッテルも抜き、ペースの上がらないボッタスも
10周目に抜きます。ブラジルのお客さんは元気な若者に大歓声。
抜かれた後ベッテルははみ出てしまいライコネンが先行。
もうドライバー選手権争いは決着して、あとはコンストラクターズで
メルセデスに食い下がるしかないので、フェラーリとしては
ライコネンがいいペースならわざわざ順位を意図的に戻す必要も
なさそうです。

 ボッタスはタイヤを守らないと全然ダメな感じでライコネンの
防御で手一杯、一方フェルスタッペンはハミルトンも追い上げて
たまらず19周目にピットへ。
 タイヤ交換直後こそフェルスタッペンを上回るペースで走ったものの、
そこが終わるとペースはむしろフェルスタッペンがわずかに優勢で、
フェルスタッペンは引っ張ってオーバーカットを狙う構え。
リカルドも降格した後方から同じく速いペースで引っ張っており、
レッド ブル+タイヤ管理職人のコンビがメルセデス無双を許しません。

 ベッテルは27周を終えてピットに入ると超速の1.97秒ピット
ライコネンを後から入れて順位入れ替えにも成功(?)しますが、
ベッテルはボッタスをコース上で抜けずに困っていたので
タイヤが新しいライコネンを攻撃係に任命した模様。また
順位が入れ替わります。忙しいな、ていうかそういう機動的な
作戦をもっと前から採れば良かったのに^^;

 35周を終えてフェルスタッペンもピットへ。さすがに
オーバーカットはできませんでしたが、ハミルトンがミディアムで
既に16周使っているのに対し、フェルスタッペンは
新しいソフトなのでコース上でも十分抜ける条件を整えました。

 39~40周目にあっさりとストレートで抜いてフェルスタッペンが
とうとうリード。フェラーリとメルセデスの計4台を全員
コース上で抜いてのトップ浮上と見事なレースです。
見ていて爽快ですね。

 ところが44周目、信じられない映像が。
 周回遅れのエステバン オコンが外から抜いてラップ バックしようと
した結果、接触してスピン。
 フェルスタッペンは1位の座を失い車両も破損。
ハミルトン、完全に負け試合で再びリーダーが転がり込んできました。

 フェルスタッペンはそれでもじわじわと再びハミルトンとの
距離を詰めていき、もしハミルトンが周回遅れにもたつけば
ひょっとして、というところまでは行きましたが、
結局失った時間は大きすぎて1.5秒ほどの差になったところで時間切れ。

 もちろんハミルトンにとってはタナボタではあるんですが、
かなり厳しいタイヤの状況できちんと管理して逃げ切ったのは
決して運だけではなく、やはりチャンピオンを獲っている
ドライバ―の管理力、というところも大きかったと思います。

 そして3位にはライコネンが入りました。ボッタス攻略係は
見事に仕事を完了して、何なら壊れたフェルスタッペンも倒してやろうか、
というぐらいの良いペースで周回を重ねていました。
キミさん絶好調です。あ、今日「知られざるキミ・ライコネン」
買ってしまいました。年末年始に読もうと思います(・∀・)

 一方のベッテルは、もたついてたらリカルドに抜かれてしまい
結局2ストップ作戦に変更、といっても何かを起こせたわけでもなく5位、
ボッタスも2ストップになったため、リカルドが4位となりました。


 さて、問題の場面ですが、オコンの言い分としては、自分の方が
速かったのでラップバックをしようとした、という
単純な話のようです。
 しかしながら、じゃあそんなに速かったのか?と言えば、
確かに彼はタイヤをスーパー ソフトに換えたばかりで
非常に速いタイムを記録してはいましたが、フェルスタッペンも
ほとんど変わらない、コース上では最速クラスのタイムを記録しています。
この直前、フェルスタッペンにとっての43周目、オコンにとっての
42周目のタイムはというと

フェルスタッペン 1'13.116
オコン      1'12.876

確かに僅かに速いですが、その速い要因の1つはそもそもオコンが
フェルスタッペンのDRSを取っていたからであり、
インフィールドではフェルスタッペンの方が速いですから、
どうせまた青旗が振られます。だいたい、このペースは
新品SSのおかげでポッと出たタイムで維持できるわけが無いので、
はっきり言ってこれでラップバックしたって彼には一切
利益は無いどころか無駄にタイヤ使って譲ってタイムを失うので
損しかありません。
 接触した後なので破損等があるかもしれませんが、オコンは
実際この後それほど速いタイムはもう出ていません。 

 確かに、ラップバックを試みてはいけない、という規則が
あるわけではないですし、フェルスタッペン側としても、
アホなことをする人がわざわざ並んできたら、警戒して
インを開けておけば接触はしないで済んだかもしれませんが、
それはフェルスタッペンの反省点ではあっても、オコンを
擁護したり、フェルスタッペンが非難されるものではありません。
 よほどのタイム差があったのなら別として、1周回って
似たようなタイムでしか走れないなら、部分的に速くても
ラップバックしてリード ラップ車両を抜きにいかない、というのは
基本的にレースをする上での不文律だと思いますし、
オコンのケースが常識的に考えて抜いてよいケースでないことぐらい
レースを知ってれば誰でも分かることだと思います。

 あまりに無謀で無意味だったこと、オコンがメルセデス傘下の
ドライバーでありながら、来季のメルセデス系シートが埋まっていて
飼い殺し状態が確実なこと、レース後に妙に
へらへらしていたこと、などの要因から、
「オコンがメルセデスの手助けをするためにわざとぶつけたのでは?」
という見方もされていますが、個人的にはそこまでの
考えがあったとは思えません。

 フォース インディアの中での力関係を見た時に、
オコンは元々新人らしからぬレースの巧さがあり、ずっと
上手くレースを運んでいてタイヤ管理にも定評があった
セルジオ ペレスが焦りからミスをしたり同士討ちを起こしたりして、
どちらかというとオコンが優等生、ペレスは悪童、みたいな関係が
当初の立ち位置だったと思います。
 ただ、どうもオコンに来年の椅子が無さそうだという雰囲気が
出てきたせいか、あるいはかつてのペレスのようにちょっと調子に
乗ってしまったのか、いつの頃からかオコンの方もやや
走り方に放漫さが感じられるようになってきていました。
 
 DTM時代から知っているドライバーで優秀だと思っていたので、
ここ最近は「いいドライバーなのにシートないのもったいないな」
という思いがある一方で「前に思ってたほどいいドライバーじゃないかも」
という両方の考えを持ちつつ見ていましたが、やはり
立場が不安定であるというメンタル面での問題が
レース運びにすごく悪影響を与えており、それが噴出したのが
今回の一件、そんな印象を受けました。

 アンチ フェルスタッペンもたくさんいるとは思いますが、
さすがにこの件は、フェルスタッペンの味方になる気が無い人でも
オコンの味方をする気にはなれなかったのではないかと思います。
 逆に考えて、仮に周回遅れのフェルスタッペンが
「俺の方が高速コーナー速かったから」って妙な場所で
ベッテルを抜きに行って接触したら、絶対フェルスタッペンが
非難されて、出場停止だ、ライセンス停止だ、と騒ぎますよね?
そういうことです。

 ただ結果的に、ではありますが、オコンの暴走によって
順位を失い、フロアにダメージがあると言いながらも
腐らずに最後までハミルトンを追い続け、レース後感情を
露わにしてオコンを突き飛ばしたフェルスタッペンは、少しばかり
ファンを増やしたかもしれません。
 あまり日本びいきしたことは書かない私ではありますが、
来年はこのチームにホンダPUが送り込まれるわけで、
こうしたエネルギー、結果的に受けるかもしれないファンの声援を
さらなる糧として、来年の活躍に繋げてもらいたいと思います。
悪質プレーは許しませんけどね。


 次戦は最終戦アブダビです。ライコネンはフェラーリでの
(たぶん)最後のレース、フェルナンド アロンソは
F1の(たぶん)最後のレースです。
注釈を付けるのは、二人とも何かの時にお助けマンで
呼び戻される日が来ないとは言い切れない気がしているからですw
 ライコネンの優勝がもう一回みたい(・∀・)