FORMULA 1 PIRELLI 2018 UNITED STATES GRAND PRIX Austin
Circuit of The Americas 5.513km×56Laps=308.405km
winner:Kimi Räikkönen(Scuderia Ferrari/Ferrari SF71H)
F1第18戦アメリカ。もはやタイトル争いも決着間近、
フェラーリはお得意の内紛が始まったようでレースも面白味も何も
あったもんじゃ、と思っていたレースになんとサプライズ。
キミ ライコネン、なんとロータス時代の2013年開幕戦以来、なんと
113戦ぶりの優勝!!!!!!!!!!!
ウルミコスさんは普段は見てない北米ラウンドを無視の知らせで
今回たまたま生で見てこの歓喜の瞬間を見れたそう。
zawawaさんも朝に途中から見て同じくGT SPORTのニュースフィードに
喜びの投稿がありました。ライコネンが勝って喜ばない人なんて
世の中にいないですよね☆(言いすぎ)
F1公式動画は埋め込みが許可されていないので
タイトルをクリックしてYouTubeのサイト上でご覧くださ~い。
予選ではルイス ハミルトン、セバスチャン ベッテル、ライコネンが
僅差の争いとなりますが、ハミルトンがPP。
ベッテルは金曜日のフリー走行で、赤旗が出たのに減速が不十分だった、
として3グリッド降格となっており5位から、ライコネンが繰り上げ2位。
この赤旗裁定、以前ダニエル リカルドもあったケースですが
「いや、俺は十分安全を確認した上で帰って来たんだから、そんな
杓子定規な減速義務おかしいだろ」というクレームがつきます。
しかし、少なくとも規則に明確に書かれていて、しかも
ベッテルとすれば前例から状況のいかんを問わずペナルティーだというのは
分かっているはずなので、残念ながらそんな話は通りません。
本人も、今更逆転チャンピオン、とは考えていないでしょうが、
それにしても出足から躓きすぎです。
躓きと言えば、マックス フェルスタッペンはQ2でオレンジ縁石を
踏んだらサスペンションがポッキリ。
この縁石、昨年フェルスタッペンが最終周にコース外から
ライコネンを抜いたために、コース外走行を防ごうと追加されたもので、
彼の名前をもじって『Verstopper』と名付けられた(?)んですが、
ものの見事にご本人様がお踏みになられましたw
決勝、スタートではウルトラ ソフトを履いたライコネンが
偶数列ながら好発進、狙い通りトップを奪います。
後方は接触があり、フェルナンド アロンソはお怒りのご様子。
「どのぐらいのダメージがあるか分からねえ。
こいつらとレースするのは不可能だ!」
ベッテルはターン13でリカルドと接触してまたくるりんぱ。
インに入るのはいいが曲がれてねえぜ・・・

トップのライコネンはハミルトンと2秒程度の差を維持。
ハミルトンは無線で「付いて行くのに苦労している」。
9周目、リカルドは不運にもトラブルで停止。毎年レッド ブルが
止まっているのを見ている気がするぞアメリカGP。
Monster Energy NASCAR Cup Seriesの裏でやってるから呪いか?
これでVSCとなりレースが動きます。ところで、ちょうどこの少し前に
放送にやたらと猫の鳴き声が入ってるんですが、これフジテレビ側の
音声ですかね?他の放送で見た方がどうだったのか気になります。
これを受けてハミルトンに無線
「もしVSCが続いていたら、ライコネンの逆をやるぞ」
ライコネンはコースにとどまり、これでハミルトンはピットへ。
スーパーソフト→ソフトで、VSC中のためロスはたったの7秒と
GT SPORT並み( ゚Д゚) バルテリ ボッタスの後ろの3位で復帰、
当然ボッタスは譲ってくれるので、順位の損失は事実上無しです。
ライコネンとすると、入ればボッタスに捕まってしまうため、
入るわけにはいかない展開、そういう点でメルセデスは2台いる利点を
生かしてライコネンの身動きを取れなくしていました。
ここまではメルセデスの思惑通りと言えます。
ハミルトンは毎周1秒以上早いペースで19周目にはもうライコネンの
後ろに戻ってきました。
「ヤツを抑えられないよ」とライコネン。1ストップで走るには
もう少し我慢しないといけないので、これはもう諦めるだろうな、
と思いました。
ところがライコネンは言葉とは裏腹に嫌らしいラインでハミルトンを阻止。
もちろんハミルトンが無理してぶつかることはしないだろう、という
読みもあったでしょう。ちょっとブレーキング中にライン変えてる気も
しますが、どこかの誰かさんたちみたいに人の目の前で進路変更はしません。
結局抑えきって21周終わりでピットへ退却。ソフトに換えて
これで最後まで行く構えです。
トップに立ったハミルトンからすると、次に入ってもまた
後ろで戻るわけですから、まあこのソフトを潰れるまで引っ張り、
履歴の新しいソフトをもう1セット投入して追い上げるのが
セオリーだろうと思いました。ライコネンが挑む35周というのも
かなりの長距離なので最後にガクンと落ちる危険性があります。
一方その後ろの3位争いも面白いことに。フェルスタッペンは
ギアボックス交換もあって18位からのスタートでしたが、
ソフトで速いペースで走って見かけ上の3位、ボッタスの約2秒後方まで
迫ると、22周を終えてピットに入りスーパーソフトへ。
ソフトでスタートしたら、通常は引っ張れるだけ引っ張って、あとを
軽い車+柔らかいタイヤ、というのがセオリーですが、これを無視した
タイミングでボッタスのアンダーカットに成功。とはいえ、
これで最後まで走り切れる気がしないので、きっと2ストップだろう、
と思いました。
ハミルトンは2ストップの可能性が高そうだ、とはライコネン陣営も
予想したところでしたが、ハミルトンはどうも無理やりこのタイヤで
最後まで行きそうな展開になってきます。
しかし、映像を見ると明らかにリアにブリスターができており、
左右ともけっこうヤバそうでとても最後まで走れるとは思えません。
ブリスターとアブレーションでもうリア終わった、と言う
ハミルトンに、バランス確認と情報を再度求めるエンジニア。
さすがにマヌケだろ・・・
1分39秒後半で維持していたペースが32周目以降ガクンと落ちて
明らかに崖に来た模様。これは無理だ、と37周を終えてピットに入ります。
彼らはスーパーソフトを1セットしか持っておらず、選択肢が
ソフトかウルトラだったので、ここもソフトで。
これでライコネンの12秒以上後方まで離されてしまいます。
前にはフェルスタッペンがいますが、こちらも2ピット、と思いきや
フェルスタッペンへの無線
ジャンピエロ ランビアーズ
「ハミルトンはブリスターに苦しんでもう一度ピットに入ったぞ」
フェルスタッペン「ソフトは良いタイヤじゃないんだよ」
もう1セット柔らかい何かしらをつぎ込んでもおかしくないタイミングでも
特に動かないレッドブル。フェルスタッペンも1ストップ!?
これでレースは
やや長い距離をソフトで走るライコネン
スーパーソフトで異様い長い距離を走るフェルスタッペン
タイヤがズタボロになったから2ストップで追うハミルトン
と三者三様の展開となることが分かってきました。
今日は戦略が全然読めねえw
後ろの2台が少しずつライコネンよりペースが良いため間隔は
じわりじわりと詰まって行き、無線では
「最後の3周で追いつかれる」と伝えられています。
一方フェルスタッペンは中盤に
「ブレーキのストロークが長くなっている。感触は良くない」
と訴えかけており、そのせいか終盤のこの局面で
「ブレーキング ゾーンまで50mリフトしてくれ」と
言われています。
とうとう各車が1秒ちょっとの間隔となり、もういつDRSを取っても
おかしくない状況。1ミスが命取りです。
まずフェルスタッペンがDRSを取ったもののまだ遠く、
その後は逆にハミルトンはDRSを取ってフェルスタッペンに接近。
そして残り3周、フェルスタッペンは後ろを気にしすぎたか
ターン12で突っ込みすぎて隙ができ、ハミルトンがここぞとばかりに
仕掛けてきます。
さあ、もうコース外は走れないぞフェルスタッペン、、、

フェルスタッペン君、珍しく正々堂々とバトルして相手を退けました(失礼)
ていうかこういう能力あるんだから普段からこうしてればいいのにと
いつも思います。
このバトルのおかげでライコネンは逃げてしまい勝負あり。
ライコネン、もう無いと思っていたフェラーリでの優勝を果たしました。
正直、VSCが出るまでは「どうせタイヤの差で負ける」
出た後は「どうせ挟み撃ちで負ける」、終盤は
「まあフェルスタッペンに刺されて終わる」と、絶対最後に
オチがあると思って期待していなかっただけに、心底驚くとともに、
「あ、絶対何かあると決めつけてごめん」って思いましたw
今回メルセデスは珍しく作戦がちぐはぐだったと思いました。
ハミルトンに1ストップをさせるつもりだったのなら、
タイヤ交換直後に攻めまくってライコネンを追ったのは明確な間違いです。
1ストップで行くということは、タイヤは古くなるけど、
VSC中に入ることでピットのロスが12秒ほど削減できるので、この
利益を生かして逃げ切る、というのが考えの趣旨のはずです。
にもかかわらず、ペースを上げてしまったのだから、そりゃあ
ブリスターで自滅します。
そしてもう1つ、フェルスタッペンがスーパーソフトで
34周も走った、というのもまた驚きでした。
これほど長く走ったドライバーは他にいません。
途中彼は「the soft is not a fantastic tyre.」と言っていましたが、
その理由として考えられる理由を川井 一仁が解説していました。
ソフトは確かにこの3スペックの中では一番固いものの、
作動温度領域が高いわけではないので、対ブリスター性能が
高いというわけではない。
一方で、コンパウンドが固い=ゴムが少しずつしか減って行かないため、
結果的に内部に熱が溜まりやすく、実は一番固い、ということが
むしろブリスターを起こしやすくしている。
こういった趣旨です。昨年までは、ソフトは作動温度領域が高い
タイヤであったため、そこそこグリップ、対ブリスター性バツグン!と
結構使い勝手の良いタイヤだったんですが、今年から
コンパウンドと作動温度領域の並び順は同じになったので、
従来ほど耐熱性が高くありません。
(そもそもソフトが高温型だったのは、おそらく2スペック制のルール下で
高温と低温がセットになるように組み合わせるとそうするしかないから)
レッドブルはタイヤのライフが比較的長く、フェルスタッペンもまた
異様にライフが長いドライバーなので、そういった要素も組み合わせてこそ、
だとは思います。
実は未放送の無線では、第2スティントに入り、ボッタスを
アンダーカットした後のフェルスタッペン対してにランビアーズは
「もうピットには入らないつもりだから、タイヤの状態に気を付けろよ」
「(使い終わった)ソフトの左リア(の摩耗)は限界だったぞ。
このタイヤで最後まで走り切るのは簡単ではないが、左リアに気を付けろ」
と無線を入れていたそうです。
ソフトの第1スティント22周で限界まで使ったのを判断材料に、
かなりの未知の領域であるスーパーソフト34周を成功させた、
というのはなかなかの大仕事。スーパーソフトで長く走る、
という決断を下したチームを含め、見事な決断とレース運びだったと思います。
ライコネンとすると、まずベッテルがフリー走行で無意味に
ペナルティーを食らったことが大事でした。
スタートをきちんと決め、ベッテルの自爆でオーダーの呪縛からも
解放され、ハミルトンとの攻防は見事の一言。
メルセデスの支離滅裂ともいえる作戦にも助けられ、結果的には
フェルスタッペンが奇策を取ったことがうまいぐあいに脅威にならず
防波堤にだけなった、というものありました。
散々見放された運にようやく恵まれ、そこに実力が重なっての
ようやくの優勝、ホント長かった。
くるりんぱしたベッテルはボッタスを抜いて4位となり、ハミルトンは
3位だったためにタイトル争いはメキシコに持ち越し。
でも今回はそんな話より、見事な優勝を果たしたライコネンと、
奇策で18位から2位になったフェルスタッペン、そしてハミルトンの
レースが熱かった、それだけで十分でしょう。