2018 AUTOBACS SUPER GT Round 5 FUJI GT 500mile RACE
富士スピードウェイ 4.563km×177Laps=807.651km
          2.834miles×177Laps=501.61miles  
winner:au TOM'S LC500 中嶋 一貴/関口 雄飛
        (LEXUS TEAM au TOM'S/LEXUS LC500)

 SUPER GT第5戦は今年が初開催となる富士500マイル。
なぜマイル表記をしたいのか謎ですが、一応マイルでの距離も書いてみましたw
 富士スピードウェイはスピードウェイという名前が表す通り、
元々はデイトナ インターナショナル スピードウェイのコピーを作り
オーバルのレースをやる構想でした。日本NASCAR株式会社という会社も
立ち上がりましたが、様々な事情に加え、桃田 健治
(自動車ジャーナリスト・日テレG+ NASCAR解説者)の話によると
会社の設立に関わったドン ニコルズがお金を持ち逃げしてしまって
話が宙に浮いたのも一因だったとのこと。ニコルズはかつて存在した
シャドウというF1チームの創設者で、昨年92歳で他界しています。


 マイルの話題はこの辺にして、レースは耐久レースとなり、
au TOM'S LC500が優勝、同じトムスのKeePer TOM'S LC500が2位に入り
トムスがGTでは初となるワンツーを達成しました。

 フリー走行ではZENT CERUMO LC500がターン1進入のブレーキで
ブレーキがぶっ壊れたようで、ターン1イン側を横切って看板破壊しながら
滑走、GT300のModulo KENWOOD NSX GT3を巻き込む大クラッシュ。
 ドライバーの立川 祐路と道上 龍は無事ではあったものの、
立川は左足がかなり腫れているということで無傷では明らかになさそう。
LC500はスタッフが徹夜で直したものの、NSXはほぼ全損で
予定していた鈴鹿10時間の参加すら怪しいとの見通しでした。


 予選ではハンデ62kgを無視するようにMOTUL AUTECH GT-RがPP。
2位にフォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R。GT-Rがトップ5に
4台で、NSX勢は総じて苦戦。このレースからレクサスとホンダは
2基目のエンジン、日産だけ継続使用な中NR20Aエンジンが輝きます。

 レース序盤はトップ2のGT-Rが快調、そこにauと7位スタートから
上げてきたKeePerの2台のトムスLCが続きます。
 4位スタートのCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rはペースがすぐに鈍化。
MOTULとCRAFTSPORTSは同じミシュランですが、わりといつも
仕様違いのタイヤを使うことが多くて、どうやら今回も少しモノが
違う様子。こっちは条件に合っていなさそうです。

 徐々にフォーラムエンジニアリングも離れていき、一方で一度
順位を失っていたカルソニック IMPUL GT-RがKeePerを抜いて
4位へ浮上。序盤このあたりがレースを引っ張っていきます。

 20周を過ぎたあたりからフォーラムエンジニアリングもペースが鈍って
auがこれで2位。そして25周を超えたあたりからMOTULも
ペースが落ちて一気にauが距離を詰めてきます。
周回遅れの影響かと思いきや、車がかなりタイトな印象。
タイヤが落ちてきています、というかタイムが2秒近く落ちるとなると
これはもう『崖』に近いです。
 抜かれかけた31周終わり、逃げるようにピットへ。
ここで、背後にいたauの関口が、ピットに入る雰囲気の車相手に
スリップに入った挙句、車体を右寄りにしていて追突寸前に。
当たらなかったから良いですが、「いやあ元気があっていいですね」
で済む問題ではありません。常識的な頭で考えて、最悪でも左に
車がいるべきで、これはチームと運営がちゃんと注意すべきです。

 177周のレースに最低4回のドライバー交代を行うことが義務付けられて
いるので、できれば35周程度は走りたいこのレース。
タイヤが落ちて予定より早く入ってしまったMOTULに対し、auは
36周終わりと予定通りな動きでピットへ。しかし、
右後輪の装着時、斜めに入ったホイールを締めに行って、当然
閉まらず時間を失うと、締めた後にジャッキを落とす担当の人が
棒立ちしていてなかなか発進せず、合計で10秒以上のロス。
 実はこのジャッキさん、この直前に給油担当が抜いた給油リグが
頭部を直撃して軽く意識障害のような状態になっていて、
思考が回らないために自分の仕事がうまくできなくなっていたようです。
映像を見直すと確かにすごい勢いで頭を殴られています。


 第2スティントはMOTUL、カルソニック、フォーラムエンジニアリングの
GT-R3台を、ピットで下がったauが追う展開。
 勢いはカルソニックで、粘るMOTULを55周目のターン1~2で
ようやく抜いてリーダーに。
 MOTULはこのスティントを長く走りたいところですが、
やはり30周あたりで崖到来の様子。今度はすんごいルースに見えます。

 この後2度目のピット サイクルを終え、MOTULもなんとか
作戦の軌道修正はできたので、ここからは安全に、という感じ。
カルソニックはトップ、auは2度目のストップも最初のミスのせいか
やはり着脱に問題が起きてまた順位を失い、これでMOTULは未だに
2位に踏みとどまります。auは完走できるのかちと心配でした。

 カルソニックは快調ですが、MOTULはまたスティント20周あたりから
崖が来たようでペース悪化。これ、たぶん持ち込んだタイヤの
ウエア(物理的なゴムの消耗)的にもたないやつなのかな、
という気がしてきました。序盤にタイムが出ているから
作動していないわけではないはずなので、セットや路面状況の問題で
ブリスターができてしまうとか、解決できないパターンな気がします。

 結局崖が来てauにも抜かれ、ツルッツルのMOTULは
100周を終えてピットへ。本来は105周程度までは引っ張りたいはず。
残りが77周、ということは1スティント38~39周は燃料ウインドウ
ギリギリ。どうもここで新品タイヤを入れたようなので、
ジョーカーで持っている別スペックのものをつぎ込んだ可能性がある、
と解説の高木 虎之助。そうするとタイヤの状況は深刻と考えられます。

 その後3回目のピットサイクルはauもようやく、あまり早くは
ないものの作業をこなして一安心。
カルソニックが20秒以上のリードで独走、MOTULは一応auを
抜き返したものの抜き返され、その後方に淡々とKeePer。この後
 そして125周を終えるとMOTULはもう4回目のピット。
どう考えてあと53周は燃料的に走れないので、これは
「タイヤがもたないから5ピットに戦略を変えた」と考えるべきなのに、
放送席はなぜか「燃費がいいんですね」「ニスモはもつんでしょう」
となぜか走り切れる前提の会話。オイオイ、放送席はエアコン
付いてなくてみんな熱中症かよ・・・

 唯一考えられる可能性は、この頃からコース上に妙にガスが出て
雨が降りそうな雰囲気があるので、各陣営が4回目のピットに入る
142周目前後~自分たちが5回目に入る150周目あたりの時間帯に
大雨が来て全員もう一度レインに替えるという確証があり、
どっちみち全車5ピットだと考えているパターンなので、
念のためスマホでナウキャストを見たりしたものの
雨は降っていない様子。ただそれは賭け事すぎます。
(現場に行ったGT SPORT仲間、ARTA8-43さんの情報では
19:30ごろから雨が来たそうです)

 というわけで私の中ではMOTULはもう実質は入賞ギリギリの
争いだろうと断定。カルソニックの優勝も決まりだろうと思っていました。

 ところが148周目、ちょっと画面から目を離した瞬間に
カルソニックが失速。ノロノロと最終セクターを走り、ピット、
へ向かわないでもう1周(´・ω・`)してから結局ガレージへ。
 インタークーラーのパイプが外れたのが原因、だそうで、
付け直したら元気に走行、ルマンでのトヨタを思い出すな・・・

 カルソニックに関して言えば、実は予選から、他車と比べて
カルソニックはバンプでのフロントの跳ねが大きく、突き上げに対する
衝撃吸収が少ないな、と思って見ていました。もちろんそれが原因で
外れたという確証はないですが、長い距離のレースなので、
そのちょっとした振動が積み重なって思わぬ問題を招いた可能性は
ゼロではないのかな、と思いました。


 相次ぐGT-Rの脱落でauがとうとうトップ、2位にKeePerが付けると、
ハンデが重いはずのKeePerが接近。
最終スティントはニック キャシディーなので、なんか
空気無視してぶつけそうでちと怖いです。相手は関口だから絶対引かないし^^;
 ただ、これは関口はブレーキを温存していた部分が大きかったらしく、
激しい争いになることもなくそのままチェッカーへ。
チーム史上初のワンツーでトムス首脳陣言うこと無し。
重いハンデで2位のKeePerは選手権リーダー、auの関口も2位となり、
シリーズでのワンツーも狙えそうですw

 ちなみに、私が覚えている中でトムスがワンツーに近かったのは
2005年のSUGOで、この時DYNACITY TOM'S SUPRAがワンスリーでした。
片岡 龍也/山本 左近のGT500初優勝のレースでしたね。
2位に割って入ったのがデンソーサードスープラGTで
アンドレ クート/ロニー クインタレッリでした。この頃はまさか
クインタレッリが日産のエースとしてトップに君臨するとは
想像もしませんでしたよ( ゚Д゚)
このレースの後、スポンサーのダイナシティ―は経営者が
覚せい剤取締法違反で逮捕されたため、この車名で走った最後のレースでした。
 次のレースはTOM'S SUPRAというそっけない名前で参加し、
国際映像のテロップの略名がなぜか『36 SUPRA』『37 SUPRA』で
笑ったのを覚えています。数字はその左に書いてあるんだから
『TOM'S SUPRA』で良いんじゃないのか!?って突っ込んでました。

 
 3位には相変わらず決勝でコツコツ上げるKEIHIN NSX-GT。
トラブルで予選を走れなかったところから大幅アップ。
5位までNSXが連なり、フォーラムGT-Rがなんとか6位。
MOTULは5ストップで攻めたものの、コース上でZENTを抜けず9位。
 車両大破&エンジン交換(変えた新型をまた交換したのでかなり勿体ない)
のペナルティーがあり、立川は明らかに足を引きずっていましたが
8位は見事な成績です。
 ここからも分かるように、LC500は基礎段階が非常によくできており、
事前のセットのデータがあれば、基本通り組み立てたらそれなりに
競争できるレベルにはなってしまう扱いやすさがあるのでしょう。

 MOTULはタイヤの特性と現場でのセットが、実際のレース環境で
タイヤを破壊してしまう条件になってしまったのということだと
思います。元々ハンデが重く、燃料流量も絞られる中で
タイムを出すような車に仕上げたわけで、かなり攻め込んだものと
思われます。ウイングも寝かせていましたから、コーナーでは
タイヤに頼った旋回を余儀なくされたでしょうし、おそらくそれが
想定していたより過負荷になってしまったのでしょう。
 これを失敗と捉えるか、普通に安全策でもどうせ中団以下なんだから
攻めた結果、と捉えるのかは外からは判断しづらいですが、
個人的にはタイヤがズタボロになったことも含め、悪いことでは
なかったと思います。このレースで表彰台に乗れなければ
選手権を取れないというわけでもないですし、良い経験とデータを
得たと考えれば決して損ばかりではないでしょう。