FORMULA 1 2018 ROLEX BRITISH GRAND PRIX  Silverstone
Silverstone Circuit 5.891km×52Laps=306.198km
winner:Sebastian Vettel(Scuderia Ferrari/Ferrari SF71H)

 F1第10戦イギリス、21戦もあると、一桁のうちは「まだ全然進んでないな」
と思うのが、10になると「あ、中盤だな」と思えてきます。
 非常に暑い条件となった今年のイギリス、タイヤは
ゲージの薄い仕様が用意されていますから、ブリスターの不安は
それほど大きくありませんが、昨年は長距離を走りすぎた
フェラーリに最後の最後にタイヤの問題が出たりしましたので、
タイヤに厳しいコースであることに変わりはないでしょう。

 レースはやや荒れた出来事が複数重なりましたが、セバスチャン ベッテルが
ルイス ハミルトンのイギリスGP5連覇を阻みました。
※F1公式動画は埋め込みを認めていないので、Youtubeへ移動してご覧ください

 フリー走行ではトロ ロッソのブレンドン ハートレーが大事故。
いきなりサスペンションがぶっ壊れるという恐ろしい事故でした。

 予選ではルイス ハミルトンがPP、セバスチャン ベッテル、
キミ ライコネンと続きます。3位までで0.1秒差の接戦。ライコネンは
セクター2でもう少し早ければ、というところでしたが、映像を見てると
やや高速でアンダー気味のセットにも見えるので、仕方ないかもしれません。

 決勝のスタート、ハミルトンが遅れてしまいベッテルがいきなり
トップに立つと、バルテリ ボッタスにも抜かれて、ライコネンと並んでの
3位争い。そしてターン3でインにいたライコネンがロックしてしまって
ハミルトンンとタイヤの側面同士がドスン。ハミルトンはスピンして
後方へと落っこちてしまいました。
 これでライコネンには10秒加算ペナルティー。レース後潔く非を認め、
ハミルトンも受け入れたそうです。生活を賭けたプロですらそうなんだから、
ゲームで謝れもしない人って。。。まあいいです。
 後方集団ではターン1でスピンしたセルジオ ペレスが巻き込んで、
本来安全なはずのピット レーンスタートの車に正面衝突しそうになるという
笑えないアクシデントもありました。


 相手が減ったベッテルは5周でボッタスに5秒差を付けるとその後は
だいたい同じペースで走行。
スタートの混乱で3位になれたマックス フェルスタッペンは前には付いていけず、
ライコネンはここに抑えられて抜けません。
目には見えませんが、似たペースの車同士でこのコースを走ると
後方乱気流の影響で1秒以内を走るのは至難の業、3秒は離れていないと
アンダーステアで前輪を無理にこじることになりタイヤを傷めてしまいます。

 接触もあったし抜けないしでライコネンは13周でピットへ。
これは1ストップで行くにはちょっと長い距離なので2ストップの可能性が
あります。ところで、10秒ペナを消化している最中にクルーが
タイヤの内側を、イメージ トレーニングみたいな感じで
ポンポン触ってたんですが、あれ厳密には違反じゃないの?

 トップ争いはベッテルが20周、ボッタスは21周でピットへ。
いずれもソフトからミディアム、1ストップ濃厚です。
ボッタスはスティント終盤にかけてややベッテルを上回るペースで走り、
かつベッテルのピット作業がそこまで早くなかったので、ピット後は
4秒ほどの差。そこからじわじわと接近していきます。
やはりメルセデスは固いタイヤの方が戦闘力が高そうです。
近づいても抜けないと分かってはいますが、それでもこういう展開になると
何か起こりやしないかとワクワクします。

 既に何か起こってしまったのはザウバーのシャルル ルクレールで、
今回も入賞できそうだったのに、すごい早さでタイヤを換え、たら
ちゃんとハマってませんでした。無念のリタイアです(T T)

 レッド ブルは今一つ目立たないダニエル リカルドに、失うものがないから
2ストップ戦略を投入させレースを動かしに行きますが、
ほどなくターン1で大事故発生。ザウバーのマーカス エリクソンでした。
 原因は単純に「曲がるのにDRSが開いたままだった」からでした。
今年、F1は抜けないからつまらん批判に対抗すべく、やたらDRSゾーンを
増設しにかかっていますが、ここでも新たに最終コーナー~ターン1を
DRS区間に追加しました。
 しかし、DRSというのは、開いたやつを閉じるにはスロットルを
戻してやるか、ボタン操作で自分で閉じない限り効果が切れません。
大抵はDRS区間の先はブレーキを踏むので大きな問題にはならないですが、
このターン1はターンに入りつつスロットルを戻すだけの場所なので、
予め自分で戻しておかないと、開いたまま進入を開始して、
当然ダウンフォースが無いのですっ飛ぶことになります。

 もちろん閉めてないドライバーが悪いんですが、そもそもここをDRS区間に
したところで追い抜きなんて不可能だし、ここで前の車に0.2秒
詰め寄ったとしてもターン1を乱気流で曲がれないからどっちみち
意味なんて無いに等しいです。つまり、危険性だけをプラスしています。
こんな場所にDRS区間を作ったことがそもそもの間違いです。

 この大事故でSC導入となり、ベッテル、フェルスタッペン、ライコネンは
ピットに入って2ストップ。元々1が怪しかったライコネンはラッキー、
リカルドは既に入ってしまったので損でした。
 一方メルセデス2台はステイ アウトを選択、ボッタスがトップ、
そしてハミルトンが3位です。ハミルトンは25周まで引っ張っていました。


 38周目にリスタートするとフェルスタッペンとライコネンが
激しい争い、今回はなかなかF1ドライバーらしい好勝負、そして
並ぶとやばいターン9ではライコネンが引いて一旦フェルスタッペンが前。
 ところが中団ではニコ ヒュルケンベルグとロマン グロージャンが
同じ場所で接触してクラッシュ。またSCとなります。
並走したらインにいたグロージャンがアンダーを出して
そのまま壁に向かってもつれていきました。
タイヤ同士が乗り上げていたら相当危険なことになっていたので、
この程度で済んだのは幸運だと思います。


 これで残り11周の短距離走になってしまい、履歴の古いタイヤで
前を走るボッタスと、新しいタイヤだけど乱気流の中を走るベッテルの
どちらが正解か、という勝負に。
 DRSを使うベッテルをボッタスは防御ラインできちんと抑えていき、
こりゃあ抜けねえな、と思った残り6周、一度は攻勢を強めつつ、ここ数周は
「狙いにはいくけど引く」を繰り返していたターン6で、
今回は不意打ちのようにインへ。ボッタスがステアリングを切った時には既に
インに入り込んで、一発で仕留め、トップを奪い返します。
これは見事な動きでした。
 ボッタスは中国GPでもやや安易にクリッピングを起こした瞬間を
リカルドにインに入られていたと思いますが、やるなら徹底して
鬼ブロック!というタイプのドライバーではないんでしょうね。
良い人ですがチャンピオンを獲るには優しすぎるかもしれません。

 抜かれてヘロヘロのボッタスはハミルトンにも道を明け渡し後退、
あけてもらったハミルトンは最後まで母国GP5連覇を諦めませんが、
さすがに追いつくような展開ではありませんでした。

 ベッテル優勝、ハミルトンもスピンを考えれば2位はスタート1分後の
状況からは望みうる最高の結果です。

 中古タイヤvsダーティー エアーの勝負は見ごたえがありました。
ただ、それを導いた事故はいずれもちょっと軽率な事故で、
放送で片山 右京も言っていたし私も時々言いますが、
「レースが危険なものである」という意識がやや希薄になってしまって
いるなと感じてしまいました。
「超えてはいけない一線」を忘れてはいけませんし、運営も
目先のことばかり考えて、無意味な施策を乱発するのは止めて欲しいです。

 次戦はドイツGP、ハンガリーとの連戦で、その後夏休みです\(^o^)/