FORMULA 1 GRAND PRIX DE MONACO 2018 Monte Carlo
CIRCUIT DE MONACO 3.337km×78Laps=260.286km
winner:Daniel Ricciardo(Aston Martin Red Bull Racing/
Red Bull RB14-Tag Heuer)
F1第6戦、絶対抜けない、こともないモナコ モンテカルロ。
レースは結果だけを見れば退屈ではありましたが、内容はものすごい出来事で、
ダニエル リカルドがモナコでの初勝利を挙げました。
2018 Monaco Grand Prix: Race Highlights
フリー走行から速いレッド ブル2台。しかしマックス フェルスタッペンは予選前のFP3で車を壊してしまい、なんと修理が間に合わず予選不出走。
練習でも壊さないようにしないとモナコで勝つことはできません・・・
予選ではリカルド無双でセクター3を驚異の速度で通過しPP獲得。
予選ではリカルド無双でセクター3を驚異の速度で通過しPP獲得。
セバスチャン ベッテルが攻めまくったものの2位、ルイス ハミルトンが3位。
去年ベッテルの捨て駒にされた疑惑のあるキミ ライコネンが4位。
スタートでの大事故も特になくリカルドのリードでレースが進行。
今回のレースは初めてハイパー ソフトが投入され、
ハイパー ソフト、ウルトラ ソフト、スーパー ソフトという3種類。
何でしょう、特急、通勤特急、快速特急、みたいなこの並びはw
モナコは1ストップでとにかくトラック ポジションを重視しないと
いけないのがトレンドなので、特にHSでスタートした上位は、とにかく
次に履くタイヤで最後まで走り切れる距離になるまでタイヤ交換を
我慢しないといけません。
が、ハミルトンはタイヤの劣化に耐え切れずわずか12周でピットへ。
しかも、SSではなくUSに交換したので、ひょっとして2ストップ?という
状態になります。
さっさとタイヤを捨てた人は無視しておきたいところではありましたが、
ベッテルも16周目にピットへ。こうなると、他の人もお付き合いするしか
無い状況になって来たので、17周目にリカルド、ライコネン、ボッタスもピットへ。
みんなハミルトンに合わせてUSでコースへ戻りますが、なんと
一番最後に入ったボッタスだけがSSに交換。
既に25秒ほど置いて行かれたボッタスですが、SSなら1ストップがほぼ
確実な情勢なので、メルセデスは2台で作戦を分けて、ライバルに
揺さぶりをかける方向性のようです。
USを履く他の上位勢、レース前の予想を基にすると走り切れないであろう
残りの周回数を、我慢して走り切るか、思い切って2ストップで
飛ばしまくるか。そんなにらみ合いが起こりそうな展開でした。
リカルドとベッテルは2秒以内の差、ハミルトンは9秒ほど置いて行かれ、
そこにライコネンがお付き合い。
ところが、28周目に流れたリカルドの無線でレースは一変しました。
「パワーを失っている」
最高速を30km/h近く失い、加速時に後部ライトが点滅することから
MGU-Kが無くなっているのは明らかで、これでリカルドは約160馬力を
失ったまま戦うことになります。これは絶望的です。

これは私がいつも参考にしている情報サイトのギャップ グラフなんですが、
トップのリカルドと2位以下との周回ごとのタイム差を表しています。
元々ベッテルは2秒ほどの差にいましたが、30周目あたりを境に、
3位以下の人たちもどんどん近寄っているのが分かります。
ラップ タイムのグラフを見ると

一旦戻りかけますが、31周目以降1分19秒中盤~後半へ1秒程度
ペースが低下しています。
これではもう勝負にならない、かと思ったら、ここは絶対抜けない
モナコ・モンテカルロ。確かに長い直線の度にベッテルは最高速で
20~30km/h程度上回っていて、ナイジェル マンセルvsアイルトン セナ
どころの騒ぎじゃない差なんですが、抜く距離に迫ることができません。
上記グラフのように張り付いたまま膠着します。
異様にコーナーが速い今日のレッドブルは、最高速の無さをコーナーで
補ってしまっているのです( ゚Д゚)
そして上のグラフに戻ると、44周目あたりで追いついていたハミルトンの
ペースが鈍化して横ばい状態となり、こちらはUSがそろそろヤバくて
タイムが上がらなくなっている様子が窺えます。
そして不思議なことに54周目、ぴょこんとタイムが落ちてグラフが跳ねている
部分がありますが、それを境になぜか展開が変わります。


黄旗が振られていたタイミングと思われます。全車2秒ほどペースが
低下しています。
で、その後なんですが、リカルドはなぜか低迷していたペースが回復して
18秒台前半からさらに17秒台へとペースを上げていきます。
ベッテルも追随しますが、ハミルトンとライコネンがここからペースを
上げることができなくなり、どんどんと離れていったことが分かります。
ハミルトンはかなり早い段階でUSが限界だと訴えており、摩耗が
激しくてSSの方がよかったと思っていたようですが
(ただしフリー走行ではSSを嫌っていたようなので、エンジニアからしたら
「どっちやねん」と言いたくなるかもしれません)
たまたまここでタイヤの崖が来た、ということもあると思いますが、
ひょっとしたらほぼ摩耗してしまい薄くなった状態のタイヤで、
たかだか2秒とはいえ、コースの中ではタイヤへの入力が小さい部類の
ターン1前後の部分でペースを落としたためにタイヤの温度が低下して
作動温度領域を外してしまい、ペースを取り戻しづらくなったのかも
しれないとこのグラフを見て感じました。
表面が薄くなると熱が出ていきやすくなるため、温度管理が
難しくなる傾向にあるそうです。前戦のスペインで、最初から
ゲージを薄くしたタイヤを使用したことに対して文句が付いた一因も
このタイヤの温度管理特性の変化が原因でした。
フジテレビ解説陣は、6位にいるエステバン オコン以下の方が
ペースが速いので、最後には全部追いついて団子になる計算、みたいな
話でしたが、実際にはここからハミルトンとライコネンが遅れているので、
せいぜい3位が集団になる状態でした。誰もここに突っ込み入れてなかったです。
こうなると、リカルドの車が壊れない限り勝てそうな雰囲気に
なってきましたが、72周目、ブレンドン ハートレーに対して
「後ろにいるルクレールが問題を抱えてるから可能な限り差を広げろ」
という無線が放送された直後にルクレールがシケインで追突。
GT SPORTやってるおかげで前の車とのぶつかる感覚はなんとなく
画面でも理解できるので、減速に入った瞬間大事故が瞬時に想像できて、
思わず「危なーーーーーい!!!!!!!!!!!」と叫んでしまいました。
いやはやお恥ずかしい^^;
車両は大破しましたがけが人は出なくて済みここでVSCに。
74周目にVSCは解除になりますが、このVSC中にピットに入った
周回遅れのストフェル バンドーンがあろうことかリカルドとベッテルの間で
コースに復帰。その後に解除されたため、ベッテルにはいい迷惑です。
バンドーンが「あれ?トップなのに異様にストレートおせえな」
と思ったかどうかは分かりませんが、周回遅れなので抜くに抜けず
ピッタリとリカルドの背後でテレビに映ります。
一方ベッテルは、なぜか急激に差が開いて、単にバンドーンが
邪魔なだけではなさそう。トラブルかと思いました。
VSCが途中まで入っていたので分かり辛いんですが、この周に
リカルドはベッテルより3秒速いタイムで周回、翌周は似たペースでしたが、
グラフの通りその後ベッテルもペースが落ちてフィニッシュ。
これもおそらく、タイヤの熱が入らなくなってしまったせいではないかと思います。
2年前のモナコ、ピットに行ったらタイヤが用意されてなくて優勝を逃した
リカルドが、車が壊れた状態でモナコ初勝利、しかも
自身初のポール トゥー ウイン。レースが単調だったという
批判も出ているようですが、モナコって事故らない限り元々そういうもんですし、
この手に汗握るトップ争いとストーリーは他では見られない
モナコだからこそのものなので、個人的には楽しんで満足しました。
MGU-Kが壊れての優勝というと、2014年のカナダGPでのニコ ロズベルグを
思い出します。高速のモントリオールでのトラブルで絶望的かと
思われましたが、ロズベルグはメルセデスのエンジン単体のパワーと
コーナー出口のトラクションでセルジオ ペレスを引き離し、一度でも
入られたらオシマイのDRS圏にとうとう一度も入れさせずに勝利をもぎ取りました。
その時にも書いたんですが、回生ブレーキを前提とした車では、
放電ができない(結果的にはオーバーヒートで安全装置が働いたらしい)
状態になると、バッテリーがいっぱいになったらもう回生は使えなく
なってしまうので、本来回生ブレーキに頼る部分を全て
ディスク ブレーキに置き換えて走らないといけません。
当然負担は増えますし、乗り味も変わってしまいます。
パワーが無いからブレーキング ポイントも変わってしまいます。
そんな状態で、しかもこんなミスできないコースで、パワーが
無くなったからとすぐに対応してしまう対応力はすごいの一言。
電動アシストが無いので、エンジン回転を引っ張るように指示されて
いましたが、ステアリング操作とペダル操作とシフト操作って
一連の動きとして体になじませているところがありますから、それが
変わるだけでも一大事です。
後半のペース向上にはそうした慣れの面もあったでしょう。
また、ブレーキ負担が増えて過熱気味になっていたことは、ひょっとしたら
VSC明けのタイヤの発熱を助けたかもしれません。
一旦抜かれたらオーバーヒートに見舞われてさらに順位を
落とすことになったかもしれません。
フェルスタッペンが普通にちゃんと予選に出ていたら、どんな
ことになっていたかは知る由もありません。
もちろん他のコースでこんなトラブルが出たらひとたまりもないわけで、
モナコだからこその様々な要素が絡んだ末での、見た目は退屈でも
中身を考えるとすごいレースでした。
そのフェルスタッペンは最後尾から追い上げてかなりコース上で
抜きましたが9位。
ピエール ガスリーが7位、エステバン オコンが6位とレースが上手い
若手がうまくまとめて大事なポイントを持ち帰りました。
MGUが壊れてても勝てるんだから、金輪際モナコでは
「ノー パワー!」は負けた言い訳にできないですねw
そのノーパワーおじさんは前述の通り、残念ながら
トラブルでリタイアとなってしまいましたが、レースでの強さは
やっぱり相変わらずでした。
データ画像元
このサイトすごいです。執筆して下さる方々に感謝します。