2018 AUTOBACS SUPER GT Round3 SUZUKA GT 300km Fan Festival
鈴鹿サーキット 5.807km×52Laps=301.964km(GT300 leader:49Laps)
GT300 class winner:K-tunes RC F GT3 新田 守男/中山 雄一
            (Lexus RC F GT3/K-tunes Racing LM corsa)

 GT300クラスの鈴鹿戦は相変わらずのピット作戦競争。
これがエライ混戦を呼びましたが、練習走行から速さを見せた
K-tunes RC F GT3がポール トゥー ウインを成し遂げました。

 スタートから後続を引き離すK-tunes。2位のHOPPY 86 MC 松井 孝允は
スタート直後のに前を窺ったものの、以降は後ろから攻勢を受けて順位を
下げていってしまいました。彼らは開幕戦で坪井 翔をスタートに選び、
その坪井が目の前の争いにタイヤを使いすぎて無交換作戦が失敗。
失敗して学べたことが収穫、としていたチーム監督の土屋 武士でしたが、
今回は経験の多い松井に序盤を託し、ある種想定通りの順位低下と
いったところでしょうか。

 後続を5秒以上離したK-tunesでしたが、SC導入でそのリードが帳消し。
タイヤ無交換作戦の人にとっては、引き離されたものがリセットされるので
非常にオイシイ展開です。
 実際、この時点でHOPPYは25秒差の7位、そして同じく無交換が濃厚の
UPGARAGE 86 MCは27秒遅れの9位でした。


 リスタートされると同時にGT300は数台がピットへ。無交換の86は
両方ともここでピットに入ると、HOPPYはドライバー交代に時間が
かかった様子で、UPGARAGEの方が5秒以上先行して、ピット組では
一番にコースへと戻っていきました。仮にステイ アウト組が
4輪交換だと仮定すると、実質的なトップです。

 一方コース上の上位はK-tunesに続いてグッドスマイル初音ミクAMG、
SUBARU BRZ R&D SPORTの3台が優勢で、このうちBRZはリア2輪を交換。
K-tunesは4輪交換を行い、ここでUPGARAGEがピット出口の段階で逆転する
アンダーカットとなります。
 さらにBRZもアウト ラップのうちに捉えたい感じで追いつきましたが、
その前にRC Fのタイヤに熱が入りました。
 K-tunesとすると、SCが無ければ4輪替えても余裕でトップに
いられるはずだったので、SCに泣かされた形になっています。
ここから追い上げていかないといけません。

 初音ミク号は引っ張り作戦、Hitotsuyama Audi R8 LMSも同じく
引っ張りで1秒強後ろに付いていましたが、そのR8が右リア タイヤの
破損で無念の脱落。良い位置にいたので残念な結果。
 その同じ周に初音ミクもピットに入ります。すると彼らは給油のみで
コースへと送り出され、UPGARAGEより前でコースに戻ることに成功、
実質トップです。
 ちなみに、これで唯一コース上にとどまっている植毛GT-Rが
ラップ リードを記録しますw
 
 ところが、走り始めるとすぐに追いつかれる初音ミク号。
谷口 信輝によれば、走り始めた瞬間から既にグリップが無かった、
ということで、かなり厳しい状況に陥ります。
 しかし、直線では86より速いAMG、いくらペースで勝っても
UPGARAGEには抜く場所が無く、そうこうしている間に
8秒以上離していたK-tunesがどんどんと追いついてきてしまいます。
 K-tunesとしたら、初音グッジョブ!UPGARAGEからしたら、
おいおいどう見ても失敗の無交換でやめてくれよ、といった感じでしょうが
これでどんどんと痛車渋滞が伸びていくことになります。

 ピットで出遅れたHOPPYの坪井も追いついて、抜かれてしまった
UPGARAGEの小林との争いに。坪井はダンロップ コーナーで
インに入ろうとして、小林が仕方なく外を走る展開が何度か見られました。


 実は先ほどGT500の車載を見て、GT500でMOTUL AUTECH GT-Rと
au TOM'S LC500が接触した場面を見てきたんですが、
リスタート後にダンロップでインに入ったMOTULをauが閉めて接触
してしまったようです。

             この動画の42分20秒あたり

 インにはハンドルを切る前にいたし、曲がれる速度、並走可能な状態で
走っていたのでMOTULに非はないと思いますが、多くの場合
あそこで入っても並走したら外が有利で互いに時間を消耗するだけですし、
リスタート後や確実に一発で仕留める自信がある時、周回遅れの関係で
隙ができた時なんかはいいんですが、常時入る動きを繰り返すというのは、
「お前ハンドル切ったら当てるからな」という、前の車にリスクを
与えるような動きにも思えるので、あまりフェアではないかなという気がします。
 解説の福山 英雄も「並走だ、危ない」と思わず声に出ていたので、
基本的には並ぶようなコーナーではない、という認識を持っている人も多そうです。
GT SPORTでもここでの安易な仕掛けは私は推奨しませんね。
私のGT-R Gr.4はとても動きが鈍いので、タイヤが減ってドアンダー出てるなら
入ってきても仕方ないと思ってはいますけど。


 さて、K-tunesはなんとか初音ミクAMGを抜くことに成功、
痛車渋滞は残りがもう5周ほどというところでBRZの井口 卓人が
ようやくシケインで外から仕掛けて抜き2位へ浮上。
これで加速が鈍った初音ミク号はその次のターン1でHOPPY坪井にも
外からやられてしまい、結局8位まで後退してチェッカーを受けました。

 最終的には15秒差でK-tunesが勝利、これで新田は通算19勝目で、
前戦で高木 真一に超えられた最多勝利記録をまたタイに戻しました。
2013年第2戦富士にPanasonic Prius apr GTで優勝して以来5年ぶりの勝利。
ただ、このレースは500km、その前に優勝した2009年の富士も400kmで、
300kmレースの優勝に限ると、2008年ARTA Garaiya時代の第5戦SUGO以来です

 K-tunesは岡山トヨペットのディーラー チームで、この車は
昨年までの51号車・大阪トヨペットのディーラー チームであるLM Corsaとの
連携という形で新しい車番で参加したチームですから、純粋な
新規チームではありませんが、チームの初勝利、ということにもなります。

 ディーラー系チームには、トヨタの若手ドライバーの受け皿という
側面もありますし、高速化が進むGT300において、51歳の大ベテランが
そういつまでも名前と実績だけで地位を得られるわけでもありませんから、
相当苦しんできた中での結果だったと思います。


 HOPPYはピットでの失敗で順位を落としたところを渋滞に救われた
格好でもありますが、2位は非常に大きい結果だと思います。
UPGARAGEの6位も、初音ミクにやられた、な感じはありますが、
SCが無い状態での初期目標から考えればそこまで悪くない成績ですから、
勝てなかったことをそこまで引きづることもないかなと思います。


 一方、無交換が大失敗だった初音ミク。四輪交換でもそこそこの
順位は得られていたはずなので、かなり無茶な勝負だったと思います。
よく「GTでは取りこぼしは厳禁」と言いますが、過去に何度か
書いてきている通り、今のハンデ制度では、シーズン終盤までは
先に点を稼いだ人は重くなりっぱなしで次第に入賞できなくなり、
次に点数を稼いでくる人を上で待つ形にしかほぼならないので、
この時期の取りこぼしは挽回も可能です。
 チャンピオン経験がある彼らとすれば、
「勝てたら儲けもの、失敗したらもう無得点で次のレース、ないしは
 富士500マイルで勝ちに行けばいいや」ぐらいの割り切った
 考え方をしていたのではないかと思います。
ドライバーとすればあまり面白い話ではない仕事になりますが、
それをできるのもベテランならではかもしれません。
彼らはそこまで、これを『失敗』とはとらえていないでしょう。

 気づいたら渋滞に追いついて4位になったマネパ ランボルギーニ GT3も
侮れない存在です。
チャンピオン争いまで行けるかどうかは分かりませんが、
特性的にもてぎでは速い車なので、彼らに戦闘力があると
最終戦のレース展開の面白さが全然違ってきます。
フェラーリがいない今季、ウラカンは花形車両と言える存在なので、
ぜひがんばってもらいたいです。



 なお、植毛GT-Rは予選26位、決勝22位でした。
予選タイム2'00.862って、私がGT SPORTで
出してるタイムとほぼ同じではないですか!w