2018 AUTOBACS SUPER GT Round 2 FUJI GT 500km RACE
富士スピードウェイ 4.563km×110Laps=501.93km
GT500 class winner:MOTUL AUTECH GT-R 松田 次生/Ronnie Quintarelli
            (NISSAN GT-R NISMO GT500/NISMO)

 SGT第2戦富士。出かけてたので録画で後から観戦です。
開幕戦ではNSXが速かったですが、この第2戦ではLC500に対して
MOTUL GT-Rが孤軍奮闘する構図となりましたが、最終スティントに
ドライバーとチームの技と車が見事に合致したMOTULが勝利を飾りました。

 土曜日は濃霧で予定が大幅に狂い、フリー走行短縮&予選は20分
一本勝負ということに。
ZENT CERUMO LC500の立川 祐路が23度目のPP獲得。
2位にWAKO'S 4CR LC500、3位にMOTUL。


 WAKO'Sのチーム ルマンは、去る4月22日・スーパーフォーミュラの
開幕戦決勝当日の朝に、エンジニアだった山田 健二が急性心筋梗塞により
54歳の若さで亡くなりました。
ちょっと国内トップ カテゴリーに詳しい人なら名前を知っているであろう
有名なエンジニアで、数日後にAS webで知った私も信じられませんでした。
 当日のSFを含め、チームは走れる状態でない、という気分と、
山田さんの作った車なんだからこれで走ってこそ、という気持ちが入り混じる
複雑な中でのレース ウイークを過ごしていた様子がいくつかの記事からも
感じられます。
今回の訃報を受けてGTではエンジニアの移動があったようですが、
今回のWAKO'Sの基本セットはテストで山田エンジニアが決めたセットを
そのまま持って来たそうです。正真正銘、「山田さんが作った最後の車」
でのレースということになります。改めてご冥福をお祈りいたします。


 さて、レースのスタートは開幕戦でうっかりフライングがあった
(由良 拓也情報ではブリーフィングでけっこう揉めたらしい)せいか、
3位のMOTULは警戒してかなり距離を空けている雰囲気。
そして、スタートするとその空けた距離を生かしたのか、WAKO'Sの
インに入って抜き、さらにダンロップ コーナーでZENTも抜いて
一気にリーダーになります。
 レース後のロニー クインタレッリのコメントでは、パレード ラップの段階で
自分は全くタイヤのグリップが感じられないのに、周囲はあんまり一生懸命
熱を入れている様子が無いから、これはやばい、と必死にスタートまでに
熱を入れに行った、という話。
 ただ、スタート後の様子を見ていると、MOTULは真っ先にタイヤを作動させて
いたように見えます。開幕戦でもそうでしたし、確か昨年もそうだった
気がしますが、ミシュランの作動温度領域はライバルよりも低いのかなという
印象を受けます。もちろん熱の入れ方と腕の部分も大きいでしょう。


 熱が入りだすとMOTULの独走でもなくZENTも追いついていきましたが、
それ以上にDENSO KOBELCO SARD LC500のヘイキ コバライネンが
非常にいいペースで5位スタートから17周目に2位へ浮上。
 開幕前のテスト、開幕戦、その後のテスト、と異様に遅かったDENSOですが
何か致命的に問題があった部分に対策が見つかったのかもしれません。
そしてとうとう23周目にトップになりました。相棒は今回WECと
日程かカブったため、いつもはGT300のHOPPY 86 MCに乗っている坪井 翔。
トップに出た後にカメラが姿を捉えますが、ちょっと固い表情で
映ったから無理やり楽しそうにしてみた感がありました。
サッシャ「よっしゃ!よっしゃ どうしよぉ・・」
まさにそんな感じに見えましたw

 33周あたりから一度目のピット サイクル。上位2台は37周を終えて同時に
ピットに向かい、4.5秒ほどの差でルーキー坪井発進。
まずは冷えたタイヤでなんとかベテランの松田に抜かれないように、
自滅しないように走らないといけません。
 私は周回の後半では追い回されるのではと予想しましたが、
アウト ラップからその差はずっと変わらないまま、坪井はまずは
最初の関門を突破して見せます。

 その後、MOTULはむしろ少し前と離れ、蚊帳の外になりかけていた
ZENTとau TOM'S LC500が接近。auの関口 雄飛がZENTの石浦 宏明を
抜いて3位に浮上しつつ続いていきます。
 結局この関口と石浦の争いは次にピットに入るまで終わりませんでした。
見ているとauの方が少しウイングが寝ていてストレートが伸びるのかな、
という印象を受けました。

 トップの坪井はあんまりテストもできていない、上に午前中の練習走行も
取り上げられた中での走行ですが、安定したペースで追われる気配なし。
富士は道幅が広くてブレーキング箇所も全開区間も多いので、相対的に
他よりはGT300を抜きやすいコースだとは思いますが、うっかりハマって
急に追いつかれることは全く見受けられません。
 結局MOTULとの差を5秒程度で守ったまま、75周を終えてピットに入りました。

 MOTULは1周遅らせてピットへ。以前アンダーカット/オーバーカットの
説明をした記事に書いた通り

過去記事

GTでは相手より1周遅らせるのがセオリーです。じゃあどうしてわざわざ
先に動くのかと言うと、単に燃料がそこで尽きるから、というわけです。
 1回目のピットの映像が無かったので給油時間が分からないんですが、
静止時間は2台ともほぼ同じだったと思われるので、
おそらくですが松田の方がやや燃料を節約することに成功して1周分
延ばすことができたのではないかと考えられます。
 かくして、1周遅らせて前に出たMOTUL。映像上DENSOの静止時間が
分からなかったのでピット作業自体でどのぐらい差を詰めたのかは
判別できませんが、元々5秒も差があったんだから当然追いつ、、、、、
かねえええ!!!!!!!!
 なんと1周して戻ってきたらまだ2秒MOTULがリード、そしてもう
タイヤは作動している模様。
 既にレースから時間が経過しているので手元にオートスポーツ誌の
タイム チャートがあるのですが、これを見ると両者のアウトラップのタイムには
5.8秒の差があり、さらにピット後2周目のタイムでもMOTULが1.7秒上回っています。
アウトラップのタイムにはピット内での時間も含まれているので、
この5.8秒のうちドライバーの分がどれだけかは分かりませんが、
いずれにしてもMOTUL×クインタレッリはまたしても冷えたタイヤを
真っ先に作動させてリードを奪うことに成功したわけです。
この後ピット後3周目にレースの最速ラップを記録しています。

 この後は徐々に差を広げていって約10秒差でのトップ チェッカー。
恐るべしMOTUL GT-R。開幕戦でもペナルティーが無ければじゅうぶん
表彰台を狙えていたわけですが、取りこぼしを取り返しました。
 路面温度が一番下がる最終スティントにMOTULのタイヤはいちばん
合っていたかもしれません。

 坪井のデビュー戦勝利、とまでは行きませんでしたが、DENSOの2位も
明るい材料、そしてZENT、au、WAKO'SとLC500が続きました。
 
 ブリヂストン×LCは、タイムの並びだけを見ているとタイヤの発動に
ライバルより少し長くかかっているように見えるのと、多くの車が
路気温が下がる最終スティントに自己ベストを出したのに対して、
DENSO、au、WAKO'Sの3台はスタート5周以内に出したのが最速でした。


 カルソニック IMPUL GT-Rは6位。こちら予選でヤン マーデンボローが
コース外走行でタイムを消されて13位スタートでしたが、こつこつ追い上げました。
レース30周の段階でトップから24秒遅れで、最後は36秒遅れのチェッカーと
いうことを考えますと、ペース的にはほぼLC500勢と同じかやや速かった
ことになりますので、良い仕上がりだったと思われます。


 一方、ちょっとまずかったと思われるのはヨコハマを装着している
3台で、これら全ての車で左後輪にトラブルが発生。
履き替えて出ていってもまたトラブル、となっていて、偶然何かを
踏んだにしては重なりすぎているので、なにか致命的に問題があったと
考えるのが自然です。
 推奨内圧を間違えた、構造に問題があった、など色々ありそうですが、
今年富士ではもう1つ長距離レースがあるので、きちんと解明しておかないと
非常にマズいです。

 NSX勢はあまりお得意でなさそう&有力者がハンデを背負っているので
低調な展開となっていました。
今年『エンジンはNo.1じゃないか』とも言われているんですが、
ウイングの角度が立て気味な様子。
『パワーがあるから立ててもストレートで速い自信がある』
とも読み取れますが、寝かせた方が燃費でも有利なはずなので、どちらかというと
『立てないとバランスが悪い』
のかなと思いました。シリーズを考えた時に、八方美人政策をやめて、
富士を捨てて他の6戦で稼ぐ!という割り切った考えだったら
それはそれで面白そうです。


 次戦は5月20日に鈴鹿、久々の鈴鹿300kmレースです。