2018 AUTOBACS SUPER GT Round 1 OKAYAMA GT 300km RACE
岡山国際サーキット 3.703km×82Laps=303.646km
GT500 class winner:KEIHIN NSX-GT 塚越 広大/小暮 卓史
(Honda NSX-GT/KEIHIN REAL Racing)
2018年のSUPER GTが始まりました。昨年の開幕の時点では
LC500無双だったGT500クラス、今年は岡山テストから「NSXが速いのでは?」
と言われていましたが、その前評判通りと言うべきか、KEIHIN NSX-GTが
開幕戦を制し、RAYBRIG NSX-GTが2位でなんとワン・ツー達成!
ホンダ車による開幕戦勝利は2013年のRAYBRIG HSV-010 小暮 卓士/伊沢 拓也以来で、
ワンツーも同じくこの時以来。
この時の2位はKEIHIN HSV-010 塚越 広大/金石 年弘だったので、並びが逆で
ドライバーは半々ですね。
この時期としては寒くなった今週の西日本、予選の気温もおそらく想定より
低いと思われ、予選ではブリヂストン+レクサスがタイヤを作動できなかったと
思われ、Q1で4台が落ちる波乱。
さらにQ2は雨が落ちたせいで条件が悪く、
「あー、こういうのは塚越無双やな・・・」と思った想像通り、
塚越が最速を叩き出しました。
昨年の最終戦で追突事故があったため手順が変更されたスタート。
まずパレード周回終了後に一度停止して隊列を直し、さらに
「GRID」のボードが掲示されたらきちんと2列に並んで、加減速は原則禁止、
信号が緑になるまではちゃんと自分がいるべき列に留まる、ということになっています。
でも、そもそもパレード周回が追加された目的に1つって
「GT500のカーボン ブレーキが1周で温まらないから危ない」というのが
1つだったはずなんですが、一度停止してたらまた冷えますよね、もうちょっと
走りながらなんとかできんもんでしょうか。
で、そんな新しいスタート、PPのKEIHINは良かったんですが、2位の
ARTA NSX-GTは今一つだったようで後続がやや渋滞。
そんな中、6位のフォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R、8位の
MOTUL AUTECH GT-Rが大外から襲い掛かりARTA埋没(._.)
特にMOTULは「ウォーマー使ってんの?」というぐらい一人だけ
動きが違って、2位に浮上した上に、KEIHINも追い回します。
でもちょっと反則スタートっぽい気が・・・
タイヤに熱が入るとKEIHINもペースが安定、4位にWAKO'S 4CR LC500、
個人的にジェンソン バトンよりも推したいフェリックス ローゼンクビストです。
5位に昨年のチャンピオンであるKeePer TOM'S LC500が9位から
上げてきて続きます。ニック キャシディー、と聞いて、一瞬『Nik_Makozi』と
頭に浮かぶのが、昨年までの観戦と違うところですw
このレベルの車が40台で混走するには狭すぎる岡山、上位3台は
迫ったり離れたりを繰り返していますが、ニックさんはローゼンクビストを
抜いて4位になるとさらに追い上げ、22周目にフォーラムも抜いてMOTULに接近。
するとこの後、疑問に思った2台のGT-Rにそれぞれスタート違反で
ペナルティーが課せられます、やっぱりな・・・
スタートに話が戻りますが、かつては結構順位変動も多くて接触も
ある場面でしたが、近年はお互いに空気を読んでいるのか、ブリーフィングで
言われているのか、結構車間距離が空いて何も起きないスタートの方が
多くなっていました。ある種GT SPORTのローリングに似た感じです。
それが新制度で車間距離も近くなり、そこにARTAがなかなか加速しないという
要因が重なったことで、ついこの2台は抜きにかかってしまったのかなと思います。
『まずは綺麗に2列で発進する』というのは、慣れてないと意外と
できないもんだなと、去年DTMのリスタートを見ても思いました。
普段NASCAR見てると当たり前のことですからね^^;
かくして抜く相手が減ったKeePer、38周目に強引に入ってKEIHINをパス。
確かに小暮がステアを切る前に車は入ってるけど、ぶつからないと
曲がれてないし・・・
プロ同士だから許されるけど素人のゲームでこれを当然の抜き方と
思ったら間違いなのでやめましょう。ニックさ~~ん(T T)
抜かれたKEIHINは40周を終えてピットへ。
ところがその前方にRAYBRIGがいます。この3周前にピットに入っており、
なんとタイヤ無交換。バトン、まさかのデビュー戦で無交換作戦遂行。
これでアウト ラップでのペースも含めて17秒以上稼いできました。
KEIHINからすると今飛ばしてKeePerをアンダーカットしたいのに
まさかの邪魔が入った形ですが、44周目になんとかここを突破。
そして、なぜか合わせずに留まっていたKeePerはちょうどこの周で入りました。
そして、ピットを出るとKeePerはKEIHINよりもRAYBRIGよりも後ろ。
タイヤに熱が入る前にWAKO'Sにも抜かれます。
ステイ アウトしていた4周でコース上で2秒以上失っているのと、
給油時間もKEIHINより3秒ほど長く、加えて左前輪の交換にも手間取りました。
なお、今季の競技規則改定では、ピットでの給油中に同時に行って良い
作業項目に窓ふき/フィルム剥がしが追加されています。
当然RAYBRIGは落ちていくだろう、と思った後半戦でしたが、
山本は塚越と変わらないペースで走行。KeePerの平川 亮はWAKO'Sの
壁を突破しますがNSXとの差は詰まらず10秒程度で膠着。
残り10周、同士討ちを覚悟しない限りこのまま終わりそうな雰囲気が一変、
KEIHINのフロントに他車の部品が刺さってます( ゚Д゚)
どうやらZENT CERUMO LC500から飛んだラテラル ダクト部分の
大型フィンのうちの1枚と思われ、ちょうど真正面に向かって
突起物を突き出す妙な格好に。尖っててあぶねえ。
オレンジ ディスクが出されれば一貫の終わり、性能に影響しても
致命的ですが、比較的真っすぐ『前ならえ』状態だったのが幸いしたようで
極端な影響は無し。
終盤にかけて平川が追いかけては来ましたが追いつくほどではなく、
NSXのワンツーとなりました。
KeePer、WAKO'Sに続いてはペナを食らったMOTULとフォーラムで、
彼らは30秒以上遅れてのチェッカー。
仮にペナが無かったと仮定して、速さという点ではこの5台とそれ以外が
随分と極端に開いていた印象です。
RAYBRIGと同じ無交換だったARTAは11位まで転落。
それにしても部品の刺さり方次第ではエライことになっていました。
岡山は鈴鹿ほど高速でないとはいえGT500は空力車両。
放送で解説が(数回話が途切れながら)されていましたが、本当にGT500は
限られた領域を特化して開発したために、それを生かして走るための
セットの範囲が狭く、わずかなことでバランスが崩れたり、冷却が
ダメになったりします。
(特にホンダは研究が頭でっかちになって、数字ではいいけど実戦では
うまく行かないことが多いです。インディーカーのエアロ キットも
あれこれ盛りすぎて『重すぎてたわむ』『ちょっと当てたら壊れる』と
実戦では問題を露呈することになりました)
テストではLC500に、距離を重ねていくとアンダーが強くなる傾向がみられ、
その要因が、走ってスプリッターが路面にあたってちょびっと削れるせいだ、
というものがありました。
ですから、部品の刺さった角度次第ではセクター1や最終コーナーで
特に遅くなっていたかもしれません。
RAYBRIGの2位は驚きの一言。バトンはタイヤの使い方に優れた
ドライバーとはいえ、GT初戦なら、気にせず攻めさせてますはレースの
感覚を覚えさせるのが普通と思います。
それを、いきなり、いわば自分との戦いになる無交換とは大胆です。
たいてい、無交換をする際には、ピット前にドライバーに
「このタイヤで行けそうか?」と質問して確かめ、その上で
ピットでタイヤ技術者が目視の最終確認を行います。
新人さんには行けそうかどうかの判断も普通はできないので、そんな
作戦をしようとは思わないです。
岡山テストでは、ある1日を全てバトンにだけ走らせる、というこれまた大胆、
一歩間違えれば山本が拗ねてコンビ仲に影響しそうなことも実行しました。
オートスポーツ誌での山本のインタビューからは、やはり複雑な
気持ちはあることを正直に話しています。
正直に話せる、というのはそれだけ彼が状況を理解して、引っ張る立場として
全体で物事を見ることができている、という証拠だと思うので、
チーム側は、下手したら確執ができそうな判断を今のところうまく
コントロールしてるんだな、と思いましたが、この無交換成功は
集中走り込みがあったからこその作戦ではないかな、と思いました。
開幕で2位というのは、勝てないままウエイトを積んで
ずっと勝てないパターンにハマるやつなので初優勝は遠のいたのかも
しれませんが、この成功はチームをかなり強くするかもしれません。
正直バトンもそれなりに苦労すると私は思っていたので
そんなに注目しないつもりだったんですが、これはRAYBRIGに
注目せざるを得ないですね。