Monster Energy NASCAR Cup Series 第3戦 Pennzoil 400 presented by Jiffy Lube
at ラスベガスはケビン ハービックが圧勝しましたが、
レース後の車検でハービックの車両に違反が見つかりました。

 違反項目は
 Sections 20.4.8.1 Rear Window Support and Structure b. & c.;
  20.4.18 Rocker Panel Extensions .b

規則20条4項8の1、後部窓の保持と構造に関するb規定、及び20条4項18
ロッカー パネル 付属物のb規定違反、
とでも訳せばよいでしょうか。
 クルー チーフのロドニー チルダースには5万ドルの罰金
(先週はナット違反で1万ドルだったので2週間で約630万円払ったことに)、
カー チーフのロバート スミスは今後2戦のカップ戦出場停止、
そして陣営にはドライバー・オーナー両ポイント20点はく奪の処分が
下っています。

 この件に関してはFOXの解説動画がありました。
 真面目に翻訳したわけではないのでざっくりした理解ですが、
前者の違反は、後部の窓の形状が変形してしまっていることの違反です。
こちらの写真を見ると
イメージ 1
 ハービック車の窓が明らかに内側に凹んでたわんでいるのが分かります。
これはどうやら
イメージ 2
 赤い線で示された部分によって窓は支えられているんですが、
左側のバーは正常に支えているのに対し(ルーフ内側まで到達している)
右側のバーは壊れてしまっています。
その奥に見えている太いバーよりは手前に存在しているはずが、
折れて倒れてしまい、その向こう側に落ちてしまっているようです。
 これによって右側の窓が支えを失い、走行中の風で圧力が加わって
凹んでしまったということです。

 この凹み、レース中にチェイス エリオット陣営が気づいたようで、
クルーチーフのアラン ガスタフソンとチェイスの間では
ハービックのウインドウ凹んでないか?という無線のやりとりがあり、
これは普通レース中にドライバーとクルーチーフが交わす無線としては
あまりないことだ、と紹介されています。

 動画内でも紹介されている通り、規則では
「取り付けられたバーとサポートは全ての方向でリア ウインドウ ガラスの
 剛性を保つ必要があり、常にNASCARのテンプレートに合致している必要がある」

 と定められています。折れて仕事をしていないバーはこの規則に
反しているので、故意であれ過失であれ罰則は避けられません。
というか万一横転する事故があった際に安全を保てるのか疑問が出てきます。
 そしてやはり気になるのは、この凹みが性能に影響したかということで、
ルーフを通過してスポイラーに当たる空気の流れに影響しますから、
1.5マイルのトラックで速度に全く関係ないとは言えないでしょう。
 チルダースのインタビューを聞くまでもなく、チーム側はこれによって
利益を得ていないと主張しますし、ひょっとしたらむしろ悪影響かもしれないので、
「このインチキのおかげでハービックが速かった」とは言えないでしょう。

 サスペンションの違法改造のように、明らかに速くするために攻めた結果
やって良い範囲を超えたことによる違反では無いので、
昨年のロガーノのようにプレイオフ ポイントはく奪や
優勝のプレイオフ進出要件からの除外(ただしハービックは前週に既に
勝っているのでこれを適用しても実質的に無意味)とはならなかったんだと思います。
 が、普通壊れないようなものだと思われる(そうなら頻繁にこういう違反がいるはず)
ものが壊れた事実は重いと思うので、処分はきっちり受けるべきでしょう。

 これがF1とかだったら規則に違反してれば過失でも問答無用に失格だと思うので、
これはカテゴリーごとの基準で、NASCARはあんまりリザルト除外を
しない主義ですから、失格まで求めるのは過去の事例と照らし合わせても
ちょっと無理があるでしょう。
 が、もし頻発するようなら、ここに何か細工をしている可能性もあるので、
NASCAR側も引き続ききちんと精査してもらいたいところです。

 また、ハービックにはもう1つ後者の違反があり、こちらは、
イメージ 3
赤で記された部分の部材に関する違反となっています。
詳細が分からないようですが、規定されているアルミニウム以外の
部材を使用していたようです。
この部分、ちょうど下向きの矢印をしたあたりは、レースになったら
左側のこのあたりをピットの際に手で曲げてダウンフォースを得る
インチキが流行して、怒られて、また復活して、な感じで、かなり
車体のダウンフォースに影響を及ぼす部分です。

 何年前のNXSだったか忘れましたが、チャンピオン争いのさなか、
苦戦していた、リッキー ステンハウス ジュニアだったか、
とうとう壁にぶつけてしまって絶望的、と思ったら、ぶつけて凹んだ車体で
空力性能が変わり、急に車が良くなってチャンピオン獲れた、という、
日欧のカテゴリーでは信じられないようなことがありました。
NASCARは改造範囲が狭く、空力的に合理性のある形状を最初から
作っているわけでもないので、ちょっとした変形が思わぬ効果を生む時があります。
 ピット作業で車体に体当たりして凹ませてダウンフォースを増やす、
というインチキも一時期流行りましたが、このレースはホント
放っておくとどんどん頭の悪い(誉め言葉)インチキを考えてきます。


 今回は2つの事案をまとめての処分なので、NASCAR側がどちらをより
問題視したのかまで分からないわけですが、好調なだけにハービック陣営は
あらゆる部分をきちんとしないと、今後も違反連発になるかもしれません。
急にSHRの車が遅くなり出すと、それはそれでまた疑惑を生みそうですが。。。