Monster Energy NASCAR Cup Series
Bojangles' Southern 500
Darlington Raceway 1.366miles×367Laps(100/100/167)=501.322miles
winner:Denny Hamlin(Joe Gibbs Racing/Sport Clips Throwback Toyota Camry)

 MENCSサザン500。珍しいエッグ シェイプ(卵型、もてぎのオーバルもこれになる)の
形状、中途半端なサイズ、外側だけが持ち上がった皿のようなバンク角。
他とは異なる走り辛さから"The Track too tough to tame"
このトラックは手なずけるのが難しい、という愛称を持ちます。

 1950年開場の歴史あるトラックとイベントなことから、近年は復刻スキームを
まとって走るイベントにもなっていますが、今年はなんか再現度合いが
中途半端だったり、車の形状が違うからあんま似合ってなかったり。
 そんなレースを制したのはデニー ハムリンでした。ハムリンのスキームは
NASCARよりもモディファイド ストック カー レーシング、と言われる
ジャンルで活躍し”ミスター モディファイド”と呼ばれたレイ ヘンドリックのスキーム。
 カー ナンバーに羽が生えたデザインは個人的このレースのベスト スキーム
だったので、ちょうど良かったですw

 PPはケビン ハービック、2位におなじみマーティン トゥルーエックス ジュニア。
 スロウバックということで特別に、リチャード ペティーが現役時代の
43号車に乗ってペース カーの後ろを走行します。が、
仕込みなのかマジなのか、キングはどうも予定周回数を超えてもコース上から
退出しない模様。
ハービックに対してスポッターから

「まだスタートしないよケビン。もう1周追加するようだ。
 43がコースを離れたくないみたいだ」

ハービック「彼を攻めようとは思わないよ。俺だってずっと運転してたいもの」

ブラッド ケゼロウスキーも

「キングはラップ リードを取りたいんじゃないの?」

 そうしたらなんと
オフィシャルから黒旗が掲示されましたwこういうのがアメリカっぽくて
いいですよね。日本だと絶対効はならないし、チームが
「燃料の計算が狂う」とかマジギレしそう。

カート ブッシュ「ハハ、43に黒旗だよw」
オースティン ディロン「ハハ、おもしれえw」

 キングが満喫したところでレース開始です。
開始から10周と経たないうちにライアン ブレイニーが壁にこすって
ダーリントン ストライプ第1号に。壁際ギリギリを走るのがベストな
トラックであるが故、失敗して車体を壁にこすりつけ、側面にこすった痕を
付けることをこう呼びます。
 そして16周目、今度はトレバー ベインが壁に当たり、後ろで
A J アルメンディンガーが急ハンドルを切ってスピン。しかも接触。
早くもコーションとなります。
 このコーションでハービック陣営は作業に手間取り大きく順位を失い、
カイル ブッシュがリーダーでリスタート。しかし2位のカイル ラーソンが
リスタートを決めてリードを奪います。
 45周目、リッキー ステンハウス ジュニアのクラッシュによるコーションを挟んで
ラーソンはリードを続けますが、ロング ランで速いのはトゥルーエックス。
ステージ終盤にかけてラーソンを追い詰めていくと、100周目の
ターン4を出た先で逆転。トゥルーエックスが半車身差でステージ勝利を
手にしました。ハムリンもこの終盤に大きく追い上げてきました。

 Wikipediaのダーリントン レースウェイ日本語ページには、
『タイヤの差が出にくい』と書いてありますが、現実のこのレースで起きているのは
タイヤのデグラデーションの大きさ。今回タイヤが13セット供給(予選1+決勝12)
ということもあり、各陣営コーションのたびに4タイヤ交換です。

 ステージ2はピットで逆転したラーソンをリーダーに開始。
このステージでも125周目にダニエル スアレスが、156周目には
マット ディベネデトー、コディー ウェアー、アルメンディンガーの3台の
アクシデントが発生。
 しかしロングランで速いトゥルーエックスは変わらず、197周目に
グレイ ゴールディングがスピンしてコーションとなると、このまま
コーション中にステージ2が終了しました。

 ところがこの後のピット。トゥルーエックスは右前タイヤを外すのに時間がかかり
5位まで順位を落としてしまい、ハムリンが先頭でピットを出ます。
ハムリンはステージ2の158周目から21周の間はレースをリードしていました。


 205周目にステージ3が始まりますが、207周目にデービッド レーガンの
スピンで早くもコーション。さすがに走行距離が短いのでここは
中団以降しかピットには入りません。
 この後はようやく長いグリーン フラッグ走行となり、250周目あたりから
ピット サイクルが始まります。
ということはタイヤ的には、早いチームは40周程度で替えた方が良いと
考えていることになります。
このサイクルで、引っ張ったハムリンを、先に入っていたトゥルーエックスが
ピット後にコース上で抜いてまたもやレースをリード。
そしてその3周後にデブリーでコーションとなります。

 しかし今日のハムリンのクルーは切れ味が鋭く、このピットで再逆転。
266周目、残り102周でリスタートが切られます。
 燃料ウインドウは70周程度なので、距離的には1ピットで走り切れる
周回数ですが、さっきの話からすると50周もたせるのは結構ギリギリに
なりそうな気配。
 ここ2年のレースを見ていると、そういう時でも2ストップにはしたくないので
我慢をしなければいけない反面、中団グループは
”とりあえずウインドウが開いたら入ってあとはコーションで
もう1ピットできることを祈る!”な考えでレースを動かしに来るので、
その際にアンダーカットをカバーするのか、一時的に順位を落としてでも
タイヤのライフを考えて保守的に動くかが悩みどころです。
 
 で、蓋を開けてみると、やはり296周辺りからピットサイクルがスタート。
ハービックが真っ先に動いた模様。中団は普通に走っててもどうしようもないので、
当然の策でしょう。
 すると、2位だったトゥルーエックスもそっちに乗って304周目にピットへ。
気付けば上位勢でステイ アウトしたのはハムリンとカイル ブッシュのみ。
 ハムリンは残り周回をほぼ半分に割る考えで、314周目にピットへ、
向かおうとしましたがまさかのミスでピットに入れず。
これで10秒以上失って、カイルがリーダーに。そして315周目に
2台揃ってピットに入ります。
 しかしこの2台、カイルが13秒近いストップでやや遅かったため、
ピットを出たのはハムリンが先でした。

 サイクルが一巡するとハービックがリーダーでしたが、元々今日は
ロングランがイマイチな上にタイヤも古いのでズルズルと後退、
325周目にトゥルーエックスがカート ブッシュからリードを奪います。
 一方、ピットに入り損ねたせいで14位、23秒も離されていた
ハムリンは、トゥルーエックスと比べて10周新しいタイヤで
猛烈に追い上げ。
 2位まで上がってきたハムリンは、トゥルーエックスとの差が
段々詰まらなくなり始めたので、10周のライフの差がこの段階では
イーブンになっているのかと思いましたが、残りが15周を切ったあたりから
再び差が縮まり始めます。
 トゥルーエックスのタイヤの履歴は50周に迫っており、”崖”が
近づいているのではないか、最後まで走る前に壊れるのではないか?と
思えました。
 明らかにトゥルーエックスの動きは悪化していき、周回遅れを抜くために
ラインを替えるのが苦しい様子。それでも3位以下のドライバーよりは
ペースは良いんですが。
 ハムリンの車も良い状態ではなくなってきているとはいえペース差は明らか。
そして残り3周、いよいよハムリンが捕まえようか、というターン3で
とうとうトゥルーエックスのタイヤがダウン。
 ハムリンは労せずしてリードを奪い、そのままチェッカーへと向かいました。

 あれだけ小刻みに出ていたコーションが最後の102周はコーション フリー。
結果、タイヤのライフを前提に考えたハムリンの作戦が正解となり、
トゥルーエックス陣営はアンダーカットされることを警戒しすぎ、
動くのが早すぎました。JGRが違う動きをするとは思わなかったかもしれません。

 ハムリンからすると、後ろが全部動いたのに、リーダーがわざわざ
違う動きをするというのはリスクの方が大きかったと思いますが、
結果的に非常に良い判断となりました。ピットに1回で入ってれば
もっと楽に勝ててたんですが、結果的に面白くなったのでまあ良いでしょうw

 これでハムリンは今季2勝目で通算31勝目。ダーリントンは2勝目で、
現役でダーリントンで複数勝利しているのはジミー ジョンソンに次いで2人目。
 また、ハムリンは前日のXfSでも優勝していてこの週末の2レースをスイープ。
ハムリンにとって2度目のことで、前回達成したのも2010年のダーリントンでした。

 最近影が薄いジョンソンは今回12位で、これで12戦連続で
トップ10圏外となっています。またプレイオフに入った瞬間
目が覚めるんでしょうか?

 一方、このレースでハムリンと並ぶ最多タイの124周をリードした
ラーソンは14位フィニッシュ。彼が120周以上リードしたのは通算4度目ですが、
いずれのレースでも勝っていません。

 プレイオフ進出には勝つしかない立場にいたクリント ボイヤーは
レース序盤にトラブルでリタイア。
 ジョーイ ロガーノも電気系と見られるトラブルの影がちらつき、
車も勝てる車には仕上がっておらず18位。
 一方、17位以下の人が勝ちさえしなければポイントでの進出が
確定したチェイス エリオット、マット ケンゼス、ジェイミー マクマーリーの
14~16位の3名ですが、なんと3点差にひしめき合ってしまいました。
 次戦リッチモンドで突然ロガーノが復活したりなんかしたら、
この3人による2枠争いは激しいぶつけ合いにでもなりそうです。

 下の方は大変ですが、トゥルーエックスはレギュラー シーズンの最終戦を
待たずしてチャンピオンが確定。プレイオフ ポイント15点を獲得し、
今季の選手権ポイントもちょうど1000になりました。


 ここ数年のダーリントンは車の性能向上のせいか、イン側のラインから
難なく追い抜き出来てしまう場面が目立ち、全然tough to tameじゃねえよ、
と突っ込みたい状態でしたが、今回は数年ぶりに壁すれすれを走って
失敗してガリガリこする人がいて、ダーリントンらしい姿を見れました。
 ひょっとして「インから抜けるようにVHT撒きました」とかやられてたら
どうしようかと思っていたので変な細工とか無くて良かったですw

 次戦はレギュラーシーズン最終戦リッチモンド。
リアルな時間で言うともうレースは終わってるはずなので、
ネタバレを避けつつ次戦の放送を待ちたいと思います。
 いきなりエリック ジョーンズが勝って下位勢がわたわたポイント争いする
様子を見たいなあw