2017 AUTOBACS SUPER GT Round 6
第46回 インターナショナル SUZUKA 1000km
鈴鹿サーキット 5.807km×173Laps=1004.611km
(規定により時間制レースとなり171周で終了)
GT500 class winner:EPSON Modulo NSX-GT Bertrand Baguette/松浦 孝亮
(NAKAJIMA RACING/Honda NSX-GT)
SUPER GT第6戦鈴鹿1000km。1000kmとして開催されるのは、
(来年からの10時間耐久が失敗に終わらない限り)今年で最後です。
来年からは夏の富士が500マイル≒800kmレースになるとのことですが、
正直長時間耐久は今のGTにはいらん・・・
レースは予想外と言っては失礼ですが、EPSON Modulo NSX-GTがまさかの優勝。
2007年最終戦以来10年ぶり、装着するダンロップのタイヤとしてもその時以来の
優勝となりました。
予選ではフォーラムエンジニアリングADVAN GT-RがPP獲得。
ジョアオ パオロ デ オリベイラがまあビックリするタイムを出して来ました。
さすがにウエイトのせいもあっていつもとは違う上位陣の顔ぶれとなり、
エプソン号は4位スタートです。
しかし私は、ヨコハマもダンロップも、たいてい1000kmは最初行けそう感を
出しながら気づいたらタイヤズルズルで消えていくイメージなので、
あんまり期待していませんでした( ゚Д゚)
スタート直後は後続をスッと離したフォーラムGT-R。2秒程度のギャップを
維持していく考えかと思いきや、10周もしたら2位以下が急接近。
どうみてもタイヤのグリップ力がありません。ダンロップコーナー~デグナーの
前回区間で追いつかれているところを見るとあの小さい舵角のコーナーですら
自信を持って踏めないひどい状態だったのではないかと推察しましたが、
チーム側の情報だと、このタイヤにトラブルがあって苦戦したとのこと。
予選Q1で使ったタイヤなんですがトラブルって何でしょうね。
そして3位スタートのKEIHIN NSX-GTが13周目にフォーラムを抜いてトップに。
フォーラムがなおも後続を蓋したため、KEIHINはすごい勢いでギャップを
築くことに成功しました。
一方蓋が外れない2位争いは15周目のヘアピンの先、スリーワイドから
S Road CRAFTSPORTS GT-Rがコース外に押し出されてしまいリアを破損。
広いウイングがバリアに刺さりました。
この後は第2スティントまでKEIHIN独走、2位はWedsSport ADVAN LC500が
スタートの順位を維持し、そこからはるか離れて3位にエプソン。
このまま進行すると早くも優勝争いの興味が失せる感じでしたが、
42周目にGT300のアクシデントでSC導入。
48周目にリスタートになりますが、KEIHINの小暮 卓史は、たいてい
シケイン手前から加速して行くのを、慎重に行ったのかシケイン後から加速。
しかも気合が空回りしたのがタイヤも空回り。しかしいくら空回ろうと
スタート/フィニッシュまで抜けない規則なので後続で渋滞発生、
MOTUL AUTECH GT-RがカルソニックIMPUL GT-Rに接触してカルソ号の
左後部が破損。リスタートはクリーンにお願いしますよ小暮さん^^;
リスタート後もKEIHINは速く、一方ウエッズ号がややペース鈍化。
2回目のピット サイクルを終えると、EPSONがウエッズスポーツを
オーバーカットして2位に浮上。
ウエッズスポーツの第3スティントは小林 可夢偉が運転しますが、ペースが
今一つ上がらないようで、ピットで7位から4位に上げてきたMOTUL GT-Rが
これを追いかけ回す展開に。この壁を抜けてきたMOTUL GT-Rが3位となります。
ハンデをかなりもらっているのにものすごく速いです。
KEIHINとEPSONの差は15秒以上でまたトップ争いの興味は失われつつ
ありましたが、EPSONとMOTUL GT-Rの差は5秒前後まで詰まってきており、
3回目のピットサイクルでEPSONを逆転、とうとう82㎏ハンデ
(48㎏のウエイトと最大燃料流量約5.5%ダウン)の車が2位になります。
しかしMOTUL GT-Rはこのピットの際にアンセーフリリースの嫌疑。
レース序盤ではMOTUL MUGEN NSX-GTのジェンソン バトンの初陣に
いきなり同じようなケースがあり結果はペナルティー。今回も
ペナルティーを受ける可能性があります。
さらにKEIHINには、このピットで『出口でマッハ号に引っかかる』という
珍事に見舞われタイムを失う不運も。マッハ号はトラブルを直してちょうど
走行レーンに送り出され、た直後にエンジン ストールで止まってしまいました。
ただ、依然KEIHIN優位は動きません。
しかしこの頃、私はこう思っていました。
「KEIHINってこういう時なぜか勝てない。GT300でR8ばかりやたらリアの
タイヤトラブル起こしてるし、GT500もヨコハマのNSXにタイヤトラブル。
KEIHINはHSV時代にタイヤトラブルで車が粉々になったことあるし、
案外また起こったりするかもしれん」
95周目、プリウスが130Rでクラッシュし、いつも反応の遅いGTの
競技長ですらかなり迅速にSCを決断。またギャップが無くなりました。。。
このSC、非常に変でした。ストレート上に2クラスに分けて、本来なら
GT500の集団がある程度集まったらSCが動いてGT500集団から再始動のはずが、
なぜかKEIHINとMOTUL GT-Rだけが並んだあとにすぐKEIHINが再始動。
MOTUL GT-Rがそれに続いていきます。ただしSCを置き去りにして。
SCがその後を追いかける妙な展開で、SC手順違反でペナルティーが
出るんじゃないかと思いましたが、レース後のリリースでも何も出ていないところを
見ると、何か指示があった、とも思いにくいので、オフィシャルの誘導ミスでしょうか。
103周目にリスタート、小暮さん、今度は130Rの先あたりから加速です。
そしてリスタートからほどなく、MOTUL GT-Rにアンセーフリリースで
ドライブスルー ペナルティー。SC前と比べると順位という点で大ダメージ。
リード ラップ最後尾の12位まで落っこちてしまいます。
別にニスモの肩を持つわけではないですが、事案発生からSC導入まででも12分、
SC後通知が行われるまでには40分経過しています。
審議案件が多い、多角的検証が必要、人員が限られている、色々あるとは思いますが、
ちょっと審議時間が長すぎます。見ているお客さんからしたら
「え?何のペナルティー?いつ?」と分かり辛いですし、レース終盤の案件だと
レース後にずれ込んで、最悪、優勝者がレース後に順位降格とかになりかねません。
審議の迅速性は是非確保してもらいたいです。
がっかりなMOTUL GT-Rに代わってここからレースを盛り上げたのは
RAYBRIG NSX-GT。山本 尚貴が9位リスタートからどんどんと抜いて行き、
コース上でEPSONまで抜いてしまって2位まで浮上してみせます。
まあ、KEIHINはもう10秒先に逃げてるんだがな。
しかしこの後訪れた4回目のピットサイクル、EPSONは第4スティントを
短く切る変化球を投じて給油時間も短縮しアンダーカットを狙いに行きます。
これでRAYBRIGをアンダーカット、さらに、テレビに映ってないので
気付いてもらえませんでしたが、この後KEIHINもアンダーカットして
事実上のトップに立ちます。
ここからはEPSONのバゲットと、KEIHINの塚越 広大の激しい争い。
当初マージンを築いてはいたEPSONでしたが、タイヤが7周古いせいもあってか
スティント後半にかけては1秒以内の接近戦に。
さすがにホンダ同士討ちはマズいと思うので無理はせずミス待ちな感じですが、
バゲットはミスをせず非常に綺麗な走り。正直いっつも後方にいる車なので
彼がどんなドライバーかよく分かってないんですが、非常に丁寧に乗っているな、
と感じました。
作戦的にはEPSONは113周終わりで4回目のピット、フューエル ウインドウは
32周前後で、かつ残り60周の段階で先手を打ったことを考えると60を
2で割っていると考えるのが妥当で、143周あたりに入るだろうと想像できます。
燃料はほぼフルに入れないといけません。
一方追うKEIHINは120周終わりで入って恐らく燃料をフルで入れていたはずなので
次のピットはウインドウが開いた後ならいつでも構わず、なおかつ
給油量は5周分程度EPSONよりも少なくて済むと考えられます。
ならば定石は、EPSONが入った次の周に入ってEPSONより数秒短い作業時間で
コースへ戻ってオーバーカットすることでしょう。
残念ながら作業ミスを考慮しなければKEIHINの圧倒的勝ちゲーム、
そう思って見ていました。
EPSONは意外と引っ張って146周で最後のピット、さすが中嶋企画、
ミスなくコースへと車を戻します。
これはKEIHIN陣営にも重圧が、、、と思った8秒後、映像に飛び込んできたのは
タイヤが爆発してリアを大破したKEIHINでした( ゚Д゚)
ええ、私の妄想は完全に当たってしまいました。これでKEIHINは脱落、
その頃、EPSONの松浦はデグナー2個目ではみ出しており、予定通り
オーバーカットに行ったらほぼ確実にKEIHINが前でした。
これでライバルが消えたEPSON、どことなく走りに力みが見えるのは
そう思って見ているせいなのか。。。
2位には気づいたらリードラップ最後尾からごぼう抜きしてきたMOTUL GT-Rがいます。
アンセーフリリースが無ければ彼らがトップだった可能性が高いです。
順位が固まったトップ2に続いては、再び山本になったRAYBRIGが
ハンマータイム、いや、山本だからヤンマータイム?農機みたいだな・・・
3位のDENSO KOBELCO SARD LC500に果敢にアタック。
何度も何度もタイヤをロックさせて、あんまりやると君も爆発するぞ、、、と
思いましたが、レース残り10分弱でとうとう3位に。
抜かれたDENSOの平手 晃平は争いすぎてタイヤがズルズル。
たぶんスタート直後のフォーラム号状態で、残り1分30秒あたり、デグナー2個目を
直進してレース終了でした。
平手によると、チームからは争は無くて良いと言われていたのを意地で
争っていたらタイヤが無くなって、最後は慎重にブレーキ踏んだのにそれでも
止まらなかった、ということ。
チーム側として考えれば、選手権に貴重な10点を台無しにしたので
激怒しても不思議ではないミスだと思います。
が、見る側とすれば非常に面白い争いを延々と展開してくれていたので
レーサーの個人競技として見れば、この上ない仕事だったと思います。
まあ、しっかり反省してね^^;
今回のレース、見ていて感じたのは2名のドライバーの差でした。
RAYBRIGは山本の時だけ異様に速く、KEIHIN塚越、EPSONバゲットは
速かったのに対してチームメイトは並の速さ。
フリー走行に雨が重なってセットが詰めにくく、片方のドライバーに
合わせこんだ割り切りセットで挑んだのかなとも思いますが、
そんな中、MOTUL GT-Rは2人とも速かった印象で、これがハンデを
寄せ付けないレースの速さに繋がっていたんじゃないかと思います。
元々最大燃料流量が制限されていて必然的に燃費は良い=給油時間が短いので、
2名のドライバーの速度差を無くせば、作業まで含めた全体のレース時間は
かなり短縮できます。まさに耐久レースの戦い方です。
小林はさすがにほとんどテストもしていないのでGT500で走って
いきなり速いとはいかず。これは仕方ないですが、勝負の世界としては
うーん、そもそも話題性で起用したってことがどうなんでしょう、とも
ちょっと思います。
一方バトンはテストもそこそこしていたので、そんなに悪くはなかったと思います。
でもどうせならフル参戦しないといけませんね。
さて、ゾンビGT-Rの活躍で、ドライバー選手権は
松田/クインタレッリ組が11点差でトップという、2か月前には
想定外の展開。ただ、SUGOから2基目のエンジンを使うGT-Rには
ライフの問題が影を落とします。
次戦はタイです。