FORMULA 1 PIRELLI MAGYAR NAGYDÍJ 2017 Budapest
Hungaroring 4.381km×70Laps=306.63km
winner:Sebastian Vettel(Scuderia Ferrari/Ferrari SF70H)

 F1も夏休み前の折り返しまで来ました。
メルセデスの優位性が比較的小さくなるハンガリー。
今年はフェラーリのパフォーマンスが良く、セバスチャン ベッテルが
モナコ以来の今季4勝目。ただ、チーム内での立場や考え方が
色々と表出したレースでした。


 予選では、まずウィリアムズのフェリペ マッサが体調不良状態の週末で、
とうとう予選を前に欠場を決断。リザーブ ドライバーのポール ディ レスタが
急きょ予選からぶっつけ本番です。ディレスタは現役DTMドライバー。
これでコース上にはエステバン オコン、パスカル ウェーレインの元DTM選手を
加えて3人もDTMドライバーがいます。みんなDTMではメルセデスです。

 PP争いはセバスチャン ベッテルがPP獲得、2位にキミ ライコネンで
跳ね馬ワン-ツー。2列目メルセデス、3列目レッド ブル。
そしてマクラーレンも8・9位で、7位のニコ ヒュルケンベルグが
グリッド降格ペナルティーを受けたので4列目まで綺麗に同じ色の車が横並びです。

 そして決勝、ターン1まで比較的距離が長いハンガロリンクですが、
フェラーリ2台は好発進。ライコネンの方がわずかに速くベッテルを伺いますが、
この動きのおかげでメルセデスは打つ手なし。
逆に3列目からレッドブル2台が4位スタートのルイス ハミルトンに襲い掛かり、
さらに3位のバルテリ ボッタスにも仕掛けていきますが、
ターン1で外に追いやられたマックス フェルスタッペンはターン2で
取り返そうとブレーキを頑張りすぎたか、チームメイトのダニエル リカルドの
横っ腹に体当たり。
リカルドのラジエーターが一発で壊れてしまいリカルド脱落&SC導入。
比較的戦えるレースでレッドブルまさかの同士討ち。
 フェルスタッペンはライン取りが危ないとか色々言われていて確かに
危険行為がありますが、それはどちらかと言うとブロックの話で、
抜く側に関しては良い見切りで鋭く勝負できるドライバーだと私は思っています。
それだけに、比較的”珍しい”失敗だなと思いました。
一応レース後に和解したようですが・・・

 6周目にリスタート、フェルスタッペンはここでボッタスも狙ってやろうと
ラインを変え、たら逆に自滅してハミルトンに追い立てられます。
でもここは悪名高い鬼ブロックで阻止、ただ、接触に関して10秒ペナルティーの
裁定が下ります。

竹下 陽平「そしてヨス、あヨスじゃないです、マックス フェルスタッペンに
      10秒ストップペナルティーが下りました」

未だになぜかヨスと言ってしまう竹下さん。聞いた瞬間、
自宅でテレビ見てたらなぜかペナルティーを受けて消化する
ヨスを思い浮かべてちょっと笑ってしまいました。

 気温が高い上にコーナー成分が多いハンガリーでは相手の後ろを
接近して走り続けるのは困難。ベッテル、ライコネン、ボッタス、フェルスタッペン、
ハミルトン、みな少し間隔が空いています。
この中でペース不足で終えずに間隔が空いたのはのはボッタスかな、という印象。
ベッテルは快調に見えました。

 20周を終えてピットに入ったロマン グロージャンはタイヤ装着ミスで
レースを終えることに。なんでも今のナットは3回転とかで止まる、
という話で、どうりでここ数年、ウィリアムズあたりの作業は本当に
インパクト レンチを「ちょん」ってやっただけで作業を終えてるな、
と思いました。そんなんで360km/h出るとか怖えよ^^;

  快調に見えていたベッテルにも思わぬ問題発生。
「ステアリングを確認してくれ、左に取られてる」とベッテル。
明らかに車が直進しなくなり、チームからはとりあえずの安全策として
縁石使うな、の指示。ここは縁石をまたぐことが多く、特にシケインは
高い縁石をかっ飛んで走るので、使うなと言われると当然ペース低下。
これは大変なことになってきました。
 結局レース後の時点でも原因は調査中。縁石に乗せた衝撃で
アライメントが狂った可能性が高い気はしますが。


 ピット作戦は30周を終えてボッタスから開始。このレースはSS→Sの一択。
摩耗が大きければ2ストップもありですが、抜けないコースなのでよほどの
確証が無ければ上位勢には不要な策です。
 翌周にはハミルトンもピット、後ろが動いたので翌周にベッテル、
さらに翌周にライコネンと玉突きでピット サイクル終了。
 ただ、ハミルトンにアンダーカットされて防ぎようがないフェルスタッペンだけは
引っ張って奇跡のSC待ち作戦。どっちみち5位は確定的なので
違うことやって奇跡に賭けた方がお得というものです。


 依然として問題があるベッテルはペースが上がらず、それに引っかかるライコネン。
絶好調のベッテルには追いつけないボッタスも、これなら追い上げが可能。
そしてそれより速いペースでハミルトンが追いかけます。
 ハミルトンはレース途中から無線に問題が出ていたようで、
かなりの時間を要して復旧。
 すると復旧した途端べらべらと喋り出すハミルトン。
思わず「あれ?これ走りながら喋ってるんだよね。どんだけ余裕あるの?」
と思うほどふつ~に喋ってます。
暑いしコーナー多いし、「コーナーで話しかけんな」って言いたくなる
コースのはずなのに、恐るべしハミルトン。。。寂しかったのか?w

 で、そんなハミルトンに対し、チームは作戦を発動。
ボッタスと順位を入れ替えてフェラーリを攻撃させ、もしダメだったら
順位を返そう、という話でした。
カナダではフォース インディアがそれを提案したら先行するセルジオ ペレスが
断固拒否して不成立でしたが、ボッタスは良い人なので、
白けるぐらいゆっくり走って道を譲ります。

 フェラーリもベッテルを諦め、ライコネンを先行させてライコネンに
勝ってもらう策を取るべきだと思いました。
川井 一仁も同じことを言ってましたが、全くその通りです。
ひょっとしたら、コース特性上どうせ抜けやしないと思っていたのかも
しれませんが、ライコネンもこの状況にいら立ちを募らせており、
明らかなナンバー2扱いも苛立つ要素。ベッテル車が必ずしも最後まで
走り切れるとは限らないわけで、こういう時ぐらいライコネンが勝てる策を
取るべきではないかと思います。

 で、ハミルトンが追い付いて行くわけですが、なかなか1秒以内に入るのも
簡単ではない状況。追い抜きのための、たぶん最大出力が出るモードを
5周使っていいぞ、という指示が出ていましたが、なかなか使わせても
もらえなさそうな感じです。
 一方ボッタスは譲った後3台に置いて行かれて、逆にタイヤの新しい
フェルスタッペンがじわじわ接近。万が一背後に来られたら順位の
返還どころではなくなります。

 泰然自若というか、優柔不断というか、ベッテルを1位に据え置く決断を
下したフェラーリの判断は結果的には成功。
ハミルトンは最後までライコネンにすら手が出せず、ベッテル車が
壊れることも無くトップでチェッカー。
そしてハミルトンは最後にはペースを落としてボッタス待ちに。
ボッタスの近くまでフェルスタッペンが迫っていたので下手したら
フェルスタッペンにも抜かれる難しい局面でしたが、ハミルトンは
きれーに譲ってボッタス3位、ハミルトン4位、という並びでした。


 既に書きましたが、フェラーリの策は結果論としては成功ですが、
思考プロセスとしては失敗だったと思います。
選手権のほぼ絡んでいないライコネンが勝ったところで意味はなく、
どっちみちこのレースでハミルトンにやられるぐらいならチャンピオンは
無理だから賭けに出た、と好意的な解釈もできますが、
どちらかというと現状維持に固執したんだと思います。

 一方メルセデスはうまく2人をコントロールできました。
ボッタスも選手権争いに加われる位置ですから、ナンバー2扱いは
ごめん被りたいところですし、これを見て
「なんだやっぱりハミルトンがナンバー1扱いか、つまらん」
と思う人もいるでしょうが、実際問題ボッタスはフェラーリを追う
ペースを維持できなかったので、チームとして入れ替えるのはある程度
仕方ないです。
ただ、譲り方が少々見た目の悪いものだったので、もうちょっと
バトルしてるっぽく道を開けてほしいですねw
 最後に順位を返したハミルトン、これも大事なことです。
ボッタスとは上手くやっていきたいという意思表示の面もあったのでしょうか。

 レッドブルは、まああれは別にチームメイトとどうこうという話でなく
単純にフェルスタッペンが下手でそこにいたのが身内だっただけですが、
やはり同士討ちは避けたい結末でした。

 そしてマクラーレン、フェルナンド アロンソがカルロス サインツとの
争いを制して6位でフィニッシュ、リード ラップの最後尾だったので
単独でテレビに大写し、しかも最速ラップも記録のオマケつき。
 ストフェル バンドーンも10位で初入賞、本来居たい位置とはかけ離れていますが、
ダブル入賞は励みになったでしょう。

 Fインディアはスタート直後にこちらも身内で接触があったようですが、
8、9位でダブル入賞。
 そして代走のディレスタは60周でリタイアとなったものの、
車を壊すことなく仕事をこなし、レース中の最速ラップでは
ランス ストロールと0.5秒ほどの差。
 解説の途中で話題が変わってしまったのでよく分かりませんでしたが、
メルセデスも「もし代走がいるならディレスタ使おうかな」と言っていたほど
ぶっつけとしては現場でも評価が高かったっぽいです。
Fインディア時代ディレスタ応援してたのでちょっとうれしいですね。


 さて、F1はしばしの夏休み、の前にハンガリーでテスト。
初日はフェラーリ期待のシャルル ルクレールが高評価を受けたそうで。
そして2日目にはあのロバート クビサが帰ってきます。
結果次第では後半戦からジョリオン パーマーのシートを奪う可能性が
あるとかなんとか。
 そして、ホンダとの契約を撤回したザウバーから松下 信治も
参加するようです。スーパー ライセンスを仮に獲得しても
もはやシートは・・・