FIA Formula E Hydro-Quebec Montreal ePrix
2.745km×35Laps=96.075km
winner:Lucas di Grassi(ABT Schaeffler Audi Sport/ABT Schaeffler FE02)

 コース外では新規参入の話題が続くFEですが、選手権はいよいよ
第3期の最終ラウンド。選手権リーダーのセバスチャン ブエミを
ルーカス ディ グラッシが10点差で追う中、モントリオール2連戦です。
Hydro-Quebecはフランス語読みでイドロ ケベックと呼んで
ケベック州の電力会社だそうです。

 レースの方はニューヨークで不調だったディグラッシが復調し
今季2勝目。あ、まだ1勝しかしてなかったのね、と思い出しましたが、
選手権に大波乱です。

 波乱はフリー走行から始まりました。ブエミが大クラッシュを喫してしまいます。
これでブエミの車両は大破、バッテリー交換で10グリッド降格が決まった上、
この車体はモノコックまでダメージが入ったそうで修復作業が必要。
とにかくもう1台の車で予選と決勝の第1スティントを走って、乗り換えまでに
2台目を用意しないといけません。

 PPを獲ったのはディグラッシ。ブエミは2位で通過し12位スタートです。
 比較的道幅が広くてWTCCぐらいやれそうなモントリオール市街地。
ただ意外と高低差があって、ストレート正面のカメラからグリッドを撮ると
車の上半分しか見えないほど上り坂があります^^;

 ディグラッシはスタートを決めますが、ブエミは慎重にトラブルを避けつつ
出ていったところターン2で接触されてしまいます。
 放送席の2人は気づくまでずいぶん時間がかかっていましたが、この瞬間に
右前サスペンションのアライメントが狂ってしまい、ステアリングを
右に切らないと車がまっすぐ走りません。大ピンチです。

 これで16位まで落ちたブエミでしたが、なんとかタイヤが
きちんと回転する範囲での損傷だったことと、幅が広くて比較的
抜けるコースであることが幸い、ここから真っすぐ走らない車で
追い抜きを続けていきます。

 ブエミは14周目には10位まで順位を回復。で、抜かれたロイック デュバルを
さらにニック ハイドフェルドが抜きに行きますが、デュバルが壁に追いやって
接触。デュバルは復帰しますが、右前サスペンションが壁に当たった
ニックさんはピットへ戻れずにコース上に停止。これでFCYとなります。

 35周のうちの15周ということでほぼ全車ピットへ。ここで一悶着があります。
やっと曲がった車を乗り換えることができるブエミ、2台目はちゃんと
準備できています。しかし目の前にはディグラッシのチームメイト、
ダニエル アプト。アプトがピットをやや低速走行しているのか、
ブエミは後ろからつついてイライラ。
制限50km/hだけど最低でも48km/hは出さないといけないという解説なので、
下限で走っていたのかもしれません。
 
 さらに乗り換え終了後、ここでブエミはアプトの鼻先で前に出て
コースへと戻りますが、ピット出口でアプトがいきなりブエミに追突。
 ブエミがやや減速したようにも見えますが、一方でアプトは明らかに
ピット リミッターを解除しています。
FCY中はコース上でもリミッターを使っていないといけませんので、
解除する意味が分からないんですが、アプト側からすると
ブエミがアンセーフ リリースだろ、という怒りがあります。
結局この件は審議の結果お咎めなし、その経緯をきちんと解説してもらいたいですが、
レース後口論になっていました。


 17周目の途中からグリーン。ブエミとアプトは2台連なって
追い抜きながら前を追っていきます。いつもなら離されて行って
役に立たないのに今日は速いです。

 一方トップ争いは、ピット前はディグラッシがリーダー、それを
ステファン サラザン、フェリックス ローゼンクビスト、ジャン エリック ベルニューが
追っていましたが、ピットで時間のかかったローゼンクビストが4位後退、
さらにリスタート後にベルニューとサラザンが入れ替わって
ベルニューがディグラッシを追います。
 ベルニューはペースが良いようで、ディグラッシとの差をじわじわ
詰めていきます。

 一方ブエミは23周目に6位まで浮上、前にいるのはチームメイトの
二コラ プロストなので次は譲ってもらえそう&アプトを抑えてくれることが
期待できます。
 しかし24周目、ホゼ マリア ロペスが自滅してクラッシュ。
これで今度はSCとなり、各車の間隔が無くなってしまいました。
 DSバージン レーシングはこのレース、予選でなぜか2台とも
最高出力200kwの予選モードに入らず、170kwの決勝モードで
予選を走るという信じられないことが起こって下位グリッド。
そこからサム バードと共に追い上げている最中でした。

 28周目、リスタートが切られると追撃を避けるためディグラッシは
ファン ブーストを使います。しかしペースではベルニューが上回っているらしく
すぐさまその差は無くなってしまいトップ争いは緊迫。
 一方リスタート後にプロストに譲ってもらったブエミですが、
プロストはアプトにもあっさり抜かれてしまい防波堤になりません。

 アプトの攻撃をしのぐため、4位のローゼンクビストを追うことができなくなった
ブエミでしたが、そのローゼンクビストは3位のサラザンを追っていて
最終ターンで壁に当たって自滅。
左前サスペンションを曲げて直進しなくなり、これでブエミは労せずして4位に。
さらにサラザンを追っていきます。

 最後の数周はトップと3位がそれぞれ接近戦。
ブエミはサラザンのインに入り接触しながらの激しいバトルを演じますが、
サラザンは譲らずブエミはさすがに撤退。
 ディグラッシもなんとかベルニューを振り切り、予選と併せて28点を獲得しました。


 レース後のブエミはあちこちで口論。
まず、アントニオ フェリックス ダ コスタを捕まえます。
ブエミ「おい、スタートの後のターン2で俺にぶつけただろ!」
ダコスタ「いや、俺じゃないんだけど・・・」
ブエミ「インに飛び込んできやがってクレイジーな奴め!ステアリング壊れただろ!」
ダコスタ「俺じゃないんだって・・・」
ブエミ「あいつかお前かどっちかだろ!間違いなくお前だ!」
横にいたクルー「それはロビン(フラインス)だよ」
ブエミ「あ、ロビン」

 最初に人違いしたのでカッコ悪いです。この後フラインスとも口論、
しかし態度の悪さにフラインスが逆上
「だったら次はお前のリア ウイングへし折ってやるよ!」

 次にアプトも捕まえますが、ちょうどいいところで横を救急車が通って
サイレンで口論が聞こえない神業w
 ただ、ぶつけただろ、と主張するブエミと、いやお前が先にぶつけたろ、
アンセーフ リリースだし、と反論するアプトもやはり平行線でした。

 正直、ブエミはピット出口に最も近いピットで、かつ出てすぐ右に曲がる
形状のピットだったために、車を走行レーンに戻さなくても
ピットを出ることができ、仮に他車と並走するように出しても
走路妨害になりようがない、というたまたまの要素が無ければ、
アンセーフリリースだったと思います。
 4位という結果は、ここに来る時点から考えれば想定外の悪さ、
車を壊した瞬間からすると上出来な結果です。
 選手権は今季初めてトップが入れ替わり、ディグラッシがブエミを
6点リードで明日の最終戦を迎えます。。。


 ところがレース後数時間、ブエミの2台目の車に規定最低重量違反が発覚。
2台目の車が4kg軽かったということで、ひょっとしたら
緊急組み立て工事でチェック体制に綻びがあったのかもしれません。
 これでブエミは失格、点差は18に。
ディグラッシは4位以内なら自力でチャンピオン獲得です。
さあ、まさかのディグラッシ王手で迎える最終戦。
3台目FE王者は果たして・・・