FORMULA 1 GROSSER PREIS VON ÖSTERREICH 2017 Spielberg
Red Bull Ring 4.318km×71Laps=306.452km
winner:Valtteri Bottas(Mercedes AMG Petronas Motorsport/
                                                                  Mercedes W08 EQ Power+)

 F1第9戦オーストリア。元々1周があっという間なのに今年の車は
速くなったので、予選ではタイムが1分4秒台。確か富士スピードウェイの
最終セクターがやたらと低速な理由の1つは、F1開催のためにある程度の
ラップ タイム以下になってないといけないから遅くするため、というのが
あった気がするんですが、これなら富士も超高速で良かったんじゃないの?w

 それはさておき、今回ルイス ハミルトンにギアボックス交換の
5グリッド降格が決まっており、”鬼の居ぬ間”とも言うべきレース。
ギアボックスはアゼルバイジャン後に壊れていたそうで。。。
 鬼の居ぬ間に勝ったのはバルテリ ボッタス。ロシア以来の2勝目ですが、
ロシア同様に終盤はセバスチャン ベッテルに追われました。


 せめて予選で1になって6位から出たい、いや、本当は奇数の方が良いから
2位→7位か良いかもしれないハミルトンでしたが、なんと予選3位で8位スタート。
ボッタスがPP、2位ベッテルとなります。

 タイヤはウルトラ ソフト、スーパー ソフト、ソフトの3種類ですが、
決勝では路面温度が50℃近く、特にUSとSSはブリスターの発生が問題になります。
 ブリスターというのは、タイヤが高温になりすぎて簡単に言うと内部で
気泡ができてしまって表面に破れが生じてしまいどんどんボロボロになる現象です。
レース映像では黒い筋が見え、スロー映像だと表面がボロボロになって
表面からゴムがどんどん飛び散っている様子が分かります。

 発生要因や箇所はいくつかありますが、こことかスパとか、
高速で直線を走る機会が多いコースだと、ネガティブ キャンバーを付けた
前輪においては、直線ではタイヤの内側の一部分しか路面と接しないため、
そこだけが過負荷で高温になってブリスターが発生しやすくなります。
アゼルバイジャンにUSを持ち込む決断が出来ない理由の1つはこれだと思います。
 リアはコーナー進入時にスライドさせたりすると、引きづられて加熱し
発生することがあり、これは特に低ダウンフォースで滑りやすいモンツァで
よく見られる現象です。
 USとSSは作動温度領域が低いタイヤなので、特にこういった高い路温では
ブリスターが起こりやすくなります。
 Sは唯一の高温作動型なので、対ブリスター性が高く決勝で役に立つだろうと
思われました。


 という前置きをした上でレースがスタート。
ん?ボッタスの動き出しがジャンプ スタートに見えたぞ・・・?

 後方ではダニール クビアトがフェルナンド アロンソに突っ込み、アロンソが
弾みでマックス フェルスタッペンに接触。クビアトは立ち去りますが、2台は脱落。


エンジニア「フェルナンド、ダメージある?」
アロンソ「すごいよ、すごいダメージだ。リアに。何であんなに派手に
     ぶつけてくんのか意味わかんねえよ、ボーリングじゃねえんだから」

フェルスタッペンはクラッチに問題が発生していてスタート大失敗、
がこの結果に。本当に運の無いリタイアが多いです。
 予選でQ1落ちしたフェリペ マッサはSスタート、この混乱に乗じて
一気に入賞圏へ。車載を見ると、ストフェル バンドーンの車だけ
周囲より明らかに車速が伸びずにあっさり抜かれていてホンダPUの
戦闘力の低さを見せつけられる映像な気がします。一応スペック3と呼ばれる
新型なんですけどね・・・

 一方で逃げるボッタス、追うベッテルはというと

ベッテル「あいつジャンプスタートに見えたけど?」

 ベッテルも同じように思っていたようです。これはたぶんやっちまったなあ、
とこの時の私は思いました。
 ところが、その後テロップに表示、ボッタスの反応時間0.201秒とのこと。
こんなテロップ初めて見たが、まあそれはさておき、これだと違反ではなさそう。
規則では信号が消えてから0.2秒未満で動くと
「それは人間の反応速度を超えているから、山勘でスタートしたとみなす」
とペナルティー対象となります、たしか。

 で、しばらくするとスタートのリプレイ。・・・やっぱ動いてね?
レース後に改めて映像を見ましたが、確実にシグナルが消える前に
ボッタスのタイヤはもう転がっていました。
 ただ、結論から言うと、このほんのわずかに動いたのは、ざっくり言うと
許容範囲内というやつだった、ということなんですが、そんなこと知ったこっちゃない
ベッテルはたぶんレース中ずっと納得いっていなかったことでしょう。
規則上違反ではなかったものの、ベッテルと私の目が間違えていたわけでも
無かったので、ある意味安心しましたw

 さて、たぶん心の中ではやべえと思っていたボッタスはお咎めなしで
快調にベッテルを引き離します。ハミルトンは5位まで上がってくるのに
少し時間を要し、既にボッタスから16秒遅れ。
上位で唯一SSスタートのハミルトン、次のターゲットはライコネンです。
 
 US勢はもうタイヤがひどいだろう、ていうかSSのハミルトンもひでえ、
これはSに乗り換えた方が、と思っていたのが、なかなか入らない上位勢。
何年前からだったか、ピレリはブリスターができてもなぜかそんなに
タイムが落ちないとは川井 一仁の解説。
とはいえ、タイヤの構造が痛めつけられていて壊れる危険性がけっこうあるし、
ゴムが一定以下まで減るとガクンとタイムが落ちるので、あんまり
引っ張らない方がいいんじゃないかと見てる側は思うわけですが、
チーム側はセンサーやらタイムの落ち幅やらでまだまだいけると考えた模様。

 やっとこさ動いたのはハミルトンで31周目。キミ ライコネンに
追いついたものの全然抜けないためでした。そして残り39周を
走るために選んだタイヤはUS。でもボッタスは既にUSでスタートから
31周してるので、まあ大丈夫と言えば大丈夫なんでしょうが・・・

 アンダーカットされるに決まっているのでライコネン陣営は無視の決断。
次に34周目にベッテルがUS→SS。どうやらほとんどの人はSを使う気が
無さそうです。マッサの走りを見てても悪いタイヤには見えないんですけど
まあプロの判断が正しいんでしょう。

 リーダーのボッタスはさらに引っ張り。入るとライコネンの後ろに出てしまうので
先に入っていただくか、ウインドウ外へ追い出したいところですが、
文句をいいながらも意外とライコネンのペースも落ちないので根競べ状態。
ローマ法王を決めるやつではないです。
 結局根負けした?のかボッタスは41周でピットへ、引っ張った分だけ
ベッテルとの差を吐き出しました。
 ライコネンに対しては、いい仕事だ、ハミルトンはバランス悪いって言ってるぞ、
と、終盤でハミルトンを食うためのレースということで盛り立ててますが、
なんかそういう建前でボッタスの頭を抑える役を押し付けた気がしてしまうのは
私だけでしょうか?

 これでまたこの2人がぶつかったら笑いものですが、44周目、多少ボッタスに
乱気流を浴びせた後抜かれてライコネンはピットへ。

 国際映像の関心は3位のダニエル リカルドを徐々に追うハミルトンを追います。
リアの摩耗に苦しんでいる様子ですが、かといって2ストップに切り替えるわけにも
いかない感じで、タイヤが爆発しないことを祈って走るのみ。
 あんまり国際映像にもタイム差が表示されないので推移が今一つ
掴めない展開でしたが、気づいたらベッテルはボッタスとの差をずいぶんと
縮めていた様子。一方ハミルトンもリカルドに迫りつつあったので、
映像がこっちを追ってしまい、なかなかトップ争いの削り合いが映りません。

 残りが3周から2周へと移る中、最速ラップで追い上げるハミルトンvsリカルドの
その前方でトップ争いもDRS圏内へ。でも映らない!w
 最終周ではさすがに攻める機会が不足、ベッテルはとりあえず何かやろうと
ものすごく変なラインを取ったりして糸口を探るも、ボッタスが逃げ切り、
リカルドも3位で逃げ切りました。


 結果としてはボッタスのスタートは合法だったわけですが、
違法との差はたった0.002秒。長い赤に我慢しきれずにクラッチを
繋いでしまったのは事実で、チャーリー ホワイティングがあと0.005秒でも
遅くボタンを押してればペナルティーだったわけですから、
すんごいスタートではありましたが、決して褒められるものではなかったと思います。
 
 選手権ではベッテルとハミルトンの差は20に。ハミルトンからすると、
ボッタスが勝ってくれたことでダメージが少なくて済んだ、ということに
なりますが、たぶんまだアゼルバイジャンでベッテルが重罰を受けなかったことを
根に持っていて、何で俺が20点差で負けてるんだ、と思っているでしょう。
 ベッテルからすると、今後PU関係のペナルティーを受ける可能性が
ある程度考えられるので、できるだけ点差を広げたい中でボッタスに
勝てなかったのはちょっとマイナス要因、で、結果今回の両社はまあ
痛み分けかな、という感じに思いました。

 5戦連続表彰台のリカルドは、まあ毎回誰かしらコケてくれて運もありますし、
フェルスタッペンが前にいて然るべきだったレースもあったわけですが、
それも含めてやはりレースがうまいな、と思わされます。
 唯一受けたハミルトンからの攻撃も得意のブレーキングで堂々と
守り切りました。追い抜きじゃないので地味に映りましたが、あれは
素晴らしい防御だったと思います。

 次戦は連戦でイギリス。私は連休に旅行に行くので、見るのはちょっと
先になりそうです。