2017 DTM Round3 Budapest
Hungaroring 4.381km
Race 1 winner:Paul Di Resta
          (Mercedes-AMG C 63 DTM/Mercedes-AMG DTM Team HWA)
Race 2 winner:René Rast
(AUTO BILD MOTORSPORT Audi RS 5 DTM/Audi Sport Team Rosberg)

 DTM第3ラウンド ブダペスト。ル マンの裏でやりますかねえw
 
 土曜日のレースはアウディーが予選でトップ5を独占し、
レースでも速さを見せましたが、SCのタイミングが影響して
13位スタートのポール ディ レスタが大逆転優勝しました。

 予選ではレネ ラストが前戦での初表彰台に続いて初のPP獲得です。
 ラストはあまりドイツ人ドライバーの中でも目立たない存在ですが、
ドイツのポルシェ カレラ カップを2度、ポルシェ モービル1 スーパーカップを
3度制している30歳のドライバーです。
 RS5はこのレースではウエイトが軽い状態で、切り返しが多く
ウエイトが効きそうなハンガロリンクなので速さが桁違い。
 これはレース2での実況で出てきた話ですが、メルセデスの
ロバート ウィケンズが「15㎏重いと1周で0.3秒遅い」と言っていたそうです。

 スタートでは2位のジェイミー グリーンがラストに並びますが、
ターン2まで粘って並走した結果、逆に3位のマティアス エクストロームに
順位を奪われてしまいます。
後方ではマキシム マルタンがオカマを掘られて前後が壊れている模様。

 17位スタートのブルーノ スペングラーは1周しただけでピットへ。
そして6周を終えるとディレスタとティモ グロックもピットへ。
後方の人は失うものが無いので早めに仕掛けます。そしてこれが奏功します。
 8周目にマルタンがターン3の先で停止。ダメージがあって
走れなくなったようですが、安全な場所に置かずに思いっきりコース上に
置いたせいでSCが入ります。これでレースが一変。
 今年の規則では、SC中にピットには入れるものの、ピット義務回数には
数えない、という規定のため、これでこの時点で3人しかいないピット組で
最上位のディレスタが圧倒的に有利になります。
というか、この3人が表彰台に乗るのが濃厚になりました。
 スペングラーはピット組で2位でしたが、タイヤが古いのを嫌って、
順位を1つ捨ててもう一度ピットへ。おそらくスタート時のタイヤに戻します。

 リスタートは(たぶん)不評の2列方式。ラストに対して
エクストローム先輩が容赦なく仕掛けリーダーになります。
 中団では選手権リーダーのルーカス アウアーが当てられて破損。
車が重く予選から苦しむメルセデス、レース前に代表のウルリッヒ リーツは
「今日はダメージ リミテーション」と言っていましたが、
アウアーは無得点に終わります。

 エクストロームは16周でピットへ、この時マイク ロッケンフェラーも
同時にピットへ入ります。
 彼らが実質的に4・5位となり、21周まで引っ張ったラストは実質6位。
この中で後半にペースが良かったのはロッキーで、22周目にエクストロームを
抜いて、前を行くスペングラーを追いかけていきます。

 ペース的には先にピットした組を1秒以上速いペースで追うロッキーですが、
差が大きすぎます。最後の数周でようやくスペングラーに追いつき、
なんとか表彰台の1つぐらいは!という感じでしたが、
スペングラーがこれを阻止。
1つの順位を犠牲にタイヤを替えたのが良かったのかは微妙ですが、
ディレスタ、グロック、スペングラーの表彰台となりました。
 4位以下にピットで損したアウディー勢が集まりますが、6位フィニッシュの
グリーンはフロントのスプリッターに違反があったようでレース後に失格を
食らってしまいました。

 ちなみのこのレースから、テロップでDRSの残り回数が表示されるようになり
分かりやすくなりました。


 そして日曜日のレース、PPはまたラスト。今度こそ、DTM初勝利を挙げました。

 RS5は予選でトップ6に5台。ロイック デュバルだけが遅いです。
ルマン勝者でGT500王者なのに、DTMではここまでさっぱり結果が出ていません。
 しかし予選5位のロッキーはグリッドへ向かう際にブレーキから
液体漏れが見つかり、修復のためピットからのスタート。

 スタートではラストが信じられない好スタートを切ります。
一方、RS5に割り込んだBMWのマルコ ビットマンは大失敗。
 ただこのスタート、リプレイをよく見ると、ラストはシグナルが
3つ点いたあたりでちょろっと動いて、もう1回止まってスタートしています^^;

 消えた瞬間には静止していたし、グリッド位置からは外れていなかったので
違反ではないということでしょう。むしろ、あれをやって冷静に
スタートできたのはある意味すごいかも。

 このレースもピットでのギャンブルは続き、1周で
マルタンとロッキーがピットへ。それぞれ最後尾とピットスタートなので
失うものがありません。
 3周を終えると2位だったエクストロームを含む数台もピットへ。
ここで、テロップが前日からさらにアップデートされていることに気づきます。
 今まで、ピットにはいた人にはPマークが表示されましたが、
このレースから数字に変わりました。どのドライバーが何周目に入ったのかが
一目でわかり、タイヤの履歴差をいちいちメモらなくても知ることができます。
SUPER GTもこういうのやってよね。

 周回数が増えると意外な事実が分かってきます。
ピット前に2位にいたエクストロームとそう離れていない場所を、
ビリからスタートのマルタンが走っていて、各車がピットに入ると
その都度順位が上がっていきます。ということは、ピット後にかなり飛ばして
事実上はかなり良い位置に付けていることになります。

 ラストは11周を終えてピットに入りますが、ここまで飛ばしてきた
エクストロームがピット出口の段階でラストを抜いて実質的にリーダーに。
 ただ、タイヤが8周新しいラストはエクストロームを追撃します。

 この戦いはじりじりとした展開。ラストは1秒以内に入っても
全然DRSを使わないので、ひょっとしてオーダー出てるのか?
と思わされます。
 エクストロームのペースがじわじわと落ちる一方で、マルタンは
まずまずのペースなので、周回が進むと2~3位もじわじわと接近。
 さらにそのマルタンをニコ ミュラーが追っていたため、
だんだんと1~4位が1つの集団になりそうな雰囲気になってきました。

 解説の人が「レースは残り10分を切ってから動く」と言っていて、
その10分を過ぎても何も起きず、はて未だにミュラーはDRSを使わんし
このまま終わりかなと思っていた残り約5分・30周目の最終ターン。
立ち上ると同時にミュラーのDRSが初めて開きます。
 「おお、来た!」と思ったら、ミュラーはそのまま見事に一発で
エクストロームを仕留めて再びリーダーに。
結局このまま最後まで逃げ切りました。

初優勝に雄たけびを上げたかと思うと今度は歌い始めるラスト。

「優勝して選手権リーダーなんて言葉にならない。
 新人で選手権リーダーなんてね嘘みたいだ」
と語り、
「車内で歌って踊ってましたが、次は何しましょう?」と聞かれると
「1年目に達成したいことはみんなやってしまったよ。
 表彰台を獲れて、ポール ポジションを獲れて、勝つことができて、
 みんな達成して、今選手権リーダーだなんて信じられないけど、
 これをできるだけ続けていきたいね」
と控えめ。ただ当然こう聞きたくなるわけで
「口にはしなかったけど次に達成したいのはチャンピオンということですよね?」
と聞くと
「いやいや、シーズンはまだ長いから」
と控えめなコメントの30歳のルーキーでした。
 阪神タイガースの広沢 克己はかつて
「次にお立ち台に立ったら六甲おろし歌いま~す」と言って、
後に公約を達成してくれましたが、ラストもチャンピオンを獲ったら
また何か見せてくれるでしょうか。

 インタビューの通り、この2戦を終えてラストが選手権リーダーに。
アウアーは日曜日もピットできちんと止まれないミスで時間を失い、
最後はトラブルでリタイア、まさかの無得点で1点差の2位に後退しました。
 3位グリーン、4位エクストロームとアウディー勢が固まります。
エクストロームは次戦ノリスリンクがワールド ラリー クロスと
日程重複のためどうするかが注目されていましたが、
彼はDTMを選択し、3度目のDTM王者獲得を優先して活動するそうです。