FIA Formula e Berlin ePrix
2.277km×46Laps=104.742km
winner:Sebastien Buemi(Renault e.DAMS Formula e Team/Renault Z.E. 16)

 FEベルリン2連戦の日曜日。路面温度が50℃を超えるような暑さになりました( ゚Д゚)
レースは前日と同じコースを、前日より2周長い46周でのレース。
1台で52kmも走らないといけませんからこれはなかなか大変です。
 レースは前日に続いてフェリックス ローゼンクビストがトップでチェッカー、
しかしレース中のペナルティーで10秒が加算され、セバスチャン ブエミが
今季6勝目を挙げることになりました。前日の失格をいくらか取り返すことに
成功して、次戦のニューヨーク戦をスキップです。
というかその前にまずル マン24時間でトヨタTS050に優勝をもたらさなくてはいけません。

 予選ではローゼンクビストが予選5位からスーパー ポールで大逆転の1位。
ブエミは2位に付けます。
 3位ホゼ マリア ロペス、4位サム バードとDSバージンの2人も前日に続いて好調。
残念だったのはマヒンドラのもう1台、ニック ハイドフェルドがトラブルで
タイムを出せずに20位スタートになってしまったこと。そしてこれが結果的に
ローゼンクビストから勝利を奪い去る決定打になります。
 ルーカス ディ グラッシは7位で、やはりブエミとディグラッシはスタート順位が
離れることが多いです。

 スタートでは、ブエミを警戒したのかローゼンクビストがかなり
ペースを上げていきなり秒単位のリード。ブエミの方はDSバージン2台が
くっついてきて、こっちはこっちで最初に抜いてしまってブエミの
邪魔をしたい雰囲気です。
 後方ではいくつか接触があるものの本日もSCが出ず。そしてブエミはすぐに
自分のペースで走り出し、DSバージン勢は3位争いを先導していくことになります。

 トップ2は最初に2秒差になったものが1.5秒近辺まで詰まり、そこからは
一進一退といった様子。いつもなら、ブエミがどこかで仕掛けると前を行くドライバーは
成す術なくやられてそのままブエミがぶっちぎるわけですが、
ローゼンクビストも同等のペースを保っていることがうかがえます。

 3位以下はロペスを先頭に8位の二コラ プロストあたりまでが一つの集団。
ただ、何せエネルギーの制約が大きいこともあってなかなか仕掛けづらい状態で、
膠着していました。なんかバードに対しては「もうちょっとエナジーをセーブしてくれ」
とか無線が聞こえるので、ちょっと余らせて、そのちょっとを利用して
どっかで抜きたいんでしょうか。

 ところがその均衡は17周目に崩壊、バードが外から仕掛けたものの、
ロペスが引かなかった上に粘りすぎて外に膨らみ同士討ち。
バードは外へ飛ばされて2つ順位を落とした上にこの後ペースが鈍化、
ロペスもやはり多少影響があったのか、この後続々と後ろからやられていきます。
 これでジャン エリック ベルニューが3位、ディグラッシ、ダニエル アプト、
という並びに。
 DSは昨年もバードとベルニューが同士討ちしてしまい、それがベルニュー離脱の
原因となったようですが、ドライバーが変わっても同じことをやっているのは
ちょっとチームの統率力に問題があるかもしれません。

 トップ2は車両乗り換えが迫ったスティント終盤に、ブエミが距離を一気に詰めて
0.5秒ほどの差にしておいて、互いに23周終わりでピットへ。

 そしてここで悲劇、作業を順調に終えたローゼンクビストが出ようとしたところに、
チームメイトのハイドフェルドが入ってきて交錯。
 ローゼンクビストは一旦停止で時間を失い、ハイドフェルドは避けようとしたため
ガレージに綺麗に入れず。
 お互いに損をしてしまい、これでブエミが逆転か!?と思ったら、ブエミも
アンセーフ リリースを警戒して慎重だったのか、ローゼンクビストが通過するのを
見てから走行レーンへと入っていき、順位自体は変わりませんでした。
時間的には規定の48秒に対して2~3秒遅く、後続に対してややリードを吐き出した
形です。

 そしてこのローゼンクビストの動きが危険な発進とみなされ、スチュワードは
10秒のタイム加算ペナルティーと判定、ブエミ相手に10秒を稼げるはずもなく、
ローゼンクビストの2連勝は、少なくとも自力では不可能な情勢になりました。

 このアクシデント、先に書いたように、ハイドフェルドが最後尾だったことが
遠因になりました。一般的なレースでは、同じチームの2台の車両で
アンセーフ リリースはまず起こり得ない状況なので、見ている方もそういうことが
あるという認識がありませんでしたが、冷静に考えれば、予定している
リリースのタイミングから、何秒差の車が交錯する恐れがあるかは判別可能で、
それが身内なら事前に何か手を打てたはずで、マヒンドラはバッテリーの
マネージメントは格段に進歩しましたが、レースのマネージメントで
ぽっかりと穴が開いていた感じです。
 ハイドフェルドは最後尾から、ややエネルギーを消費しながら10位まで(!)
順位を上げていましたが、なんとか23周まで引っ張るために後半からガクッと
ペースを落とし、結果13位まで後退。結果論ですが、ガンガン攻めて1周短くして
22周で入っていれば、交錯することはなかったので、その点でももったいなかった
気がします。


 さて、ペナルティーを食らってガックリのローゼンクビストではありますが、
引き続きペースはよく、ブエミとすれば、無理して抜く必要もないし、
戦闘力の差が無いので後ろで様子見。
 その後ろの3位争いは引き続きベルニュー、ブエミ、アプトでしたが、
32周目にディグラッシがターン1で綺麗に抜いて行きました。
 ベルニューはコースの真ん中の中途半端な場所を走り、鬼ブロックのラインで
守りを固めていましたが、ディグラッシはベルニューが鬼ブロックに来ることを
逆手に取り、フェイントでベルニューに非常にタイトなラインを取らせ、
まんまとアンダーステアを誘発しました。

 これで3位になり、さて、ペナを食らうローゼンクビストはどこまで落ちるのかな、
と思ってみると、なんとディグラッシはローゼンクビストの12秒も後ろにいるので
このままだと1つ順位を落とすだけ。ディグラッシからすると、なんとかあと2秒
差を詰めて2位になりたいところです。

 しかし、ローゼンクビストのペースはやはりホンモノで、待てど暮らせど
差は縮まらず。
ローゼンクビストは結局最後までブエミとも、ディグラッシとも
差を保ち続け、1位ではないトップ チェッカーを受けました。

 レース直後のインタビューではペナルティーについて
「ピット ストップで何があったのか見てみないといけないね。
 厄介な状況だと思ったよ、規則では誰かをブロックしてはいけないとなっているけど、
 僕は本当にニックをブロックはしていないかったんだ。」
とやや不満げ。インタビュー、レース後コメントを通じては、
この結果には残念だけど、週末を通して考えれば素晴らしいものだった、
という話でした。

 一方のブエミは、
「まずフェリックスにおめでとうと言いたい、今日の彼は勝利にふさわしいと思う」
「今回僕らは新しいアップデートを持ち込んだんだけど、レースでは適切に
 機能するのが難しいかもしれなかった。昨日はうまくいかなかったから、
 今日はパリとモナコでの仕様に戻して、それがすごく上手くいったんだ」

と、土曜日の不調はアップデートした何かしらが適切に働かなかったと明かしました。
この週末は路温が非常に高かったのでその辺が関係しているのか、
あるいは路面とのマッチング等足回りの話なのか。
いずれにしても、スパッと諦めて戻す、という決断が好結果を生んだようです。
多くのライバルが2日を通じたセットを上げていく中で、一旦戻すというのは
なかなか大変な気がしますが、このあたりはさすが最強チームと
言ったところでしょうか。
 そして、
「車はとっても速かった。たぶん(ローゼンクビストとは)ほとんど
 同じペースだったんじゃないかな。結果にはとても満足しているし、
 いつもとはまた違った味わいさ」
と、ローゼンクビストをまた称えつつ、決断をして、一日で問題を取り返し、
簡単には抜けない強力な相手とレースした上で勝った、というレースに
満足しているようでした。

 マヒンドラ フィーバーが今回たまたまなのか、まだ判断はできませんが、
次戦ニューヨークでは、鬼の居ぬ間に大量点を取りたいディグラッシにとって、
大きな壁となってくれるとレースが盛り上がるので、ぜひ次回も頑張って、
また表彰台でビバンダム兄弟の競演が見たいです。