2017 DTM Round1 Hockenheim
Hockenheimring 4.574km
Race 1 winner:Lucas Auer
       (Mercedes-AMG C 63 DTM BWT/Mercedes-AMG DTM Team HWA)
Race 2 winner:Jamie Green
       (Hoffmann Group Audi RS 5 DTM/Audi Team Rosberg)

 2017年のDTMが始まりました。開幕戦はお馴染みホッケンハイム。
今年から2レースとも55分+1周に長さが統一されましたが、
土曜日の観客席はどうも空席が目立つような・・・

 そんな土曜日の開幕戦は、ルーカス アウアーが優勝しました。
昨年のラウジッツ以来の通算2勝目です。

 PPを獲得したアウアー。アウアーの叔父は今年からDTMの運営団体の代表になった
元F1ドライバー・ゲルハルト ベルガ―です。決して癒着・八百長ではありませんw
 アウアーはPPから好スタートを決めると後続をどんどんど引き離す展開、
一方2位には、こちらは自分が元F1ドライバー・ティモ グロックが4位スタートから
浮上しましたが、ペースが上がらず後続を鬼ブロック状態に。
3位以下の人たちは軒並みDRSを使用できます。
 昨年までのウイングを後傾させるDRSは使っているか分かりづらいので、
今年のフラップ開放型なら分かりやすくなるのかな、と思いましたが、、、
ウイング高がルーフ高と同じに制限されているため、正面のカメラからは
ウイングが見えず、結局正面の映像では使ってるかよく分かりませんでしたw
後ろの映像は去年より分かりやすいですね。

 今年から摩耗がより早いタイヤとあって、上位勢は無難にレースを半分に
割ったあたりでピットへ。今年からレンチが片側に付き1つ、と決められ、
前後輪に分けての交換が必要な規則となったため、各陣営でピット作業ミスが
相次ぎます。装着を終える前にギアを繋ぐ、ナットが転がっていく・・・
トップのアウアーも、ロリポップが上がらずに結局強引に突破する羽目になります。
 幸いリードが大きかったために順位に変動は無し。
 そして、今年からウォーマーが禁止され、見た目上オーバーカットからの勝負、
というSUPER GTと同じ形になりましたが、見たところソフト化され、
100km程度の距離を走ればよいDTM用ハンコック タイヤ、発熱特性は良好で、
1周と経たずにほぼ熱が入っているようでした。

 ピットで大きくレースを動かしに来たのはアウディー勢で、
マイク ロッケンフェラーは人知れず、開始15分あたりで真っ先にピットに入っていて、
なんと気づいたらアウアーとグロックの間に割って入る実質2位で走行。
 一方、マティアス エクストロームは引っ張り作戦で、しかもタイム的には
1分34秒台と、交換後のドライバーがタイヤのおいしい部分を終えた後の
安定したタイムと遜色ないレベルを維持し続けます。

 アウアーは後半のタイヤでペースに苦しみだし、ロッケンフェラーを抜いた
グロックが逆に接近。前半とは真逆の展開でアウアーが必死に逃げることになります。
じわじわと追っていくグロック、1秒以内に入ってDRSが使えるかが焦点となります。

 一方エクストロームは結局残り13分30秒というところまで引っ張ってピットへ。
戻った位置はピット前と大差ない8位でしたが、一人だけタイヤがとても元気なため、
ここから追い抜きを開始しました。
 トップ争いはとうとうグロックがDRSレンジに入りますが、相手がミスをしないと
あと一歩足りない雰囲気。グロックも攻める間にややタイヤを使ったのと、
乱気流の影響かやはりセクター3で少し離されてしまい、パラボリカでDRSを使っても
抜ける距離まで行けない状態。
 そしてとうとう最終周、ここでグロックはDRSを逃してしまい、万事休す、
と思ったら油断したのかアウアーもミス。
最後まで分からない展開でしたが、ギリギリでアウアーが脱げ切りました。
 最終的に上位5台が5秒差以内でチェッカー、よくできてます。
八百長でも忖度でもないですよw

 エクストロームは5位まで追い上げて終了ですが、17位スタートだったことを考えると
作戦とロングでの安定性が力を発揮、3位のロッケンフェラーも同様に16位スタートで、
RS 5は予選では全て8位以下だったのに、決勝ではトップ6に3台。
相変わらずレース向けの車づくりに巧さを感じました。

 レース2は前日の段階から天候不良が予想されている中でのスタート。
途中から本格的な雨となり、ジェイミー グリーンが優勝しました。

 PPは前日に2位だったグロックで、今度はトップ6にRS 5が3台。
ウエイトの影響もあって、土日で簡単に勢力図が変わります。
 グロックはスタートを決めましたが、後続で接触があり、ロバート ウィケンズが
ターン1の外側で停止、これでSCが入ります。

 今年からSC後のリスタートはNASCAR式。先頭の人はターン1に対してイン側、
という規則、もちろんラインを通過するまでは抜いちゃいけないんですが、、、
慣れてない人がやるとカオスになるのは必然で、どう見ても2位のグリーンが
反則リスタート、その影響を受けてグロックはラインも乱れて
2つも順位を落とします。オーマイグロック!

 グリーンには5秒ペナルティーが科せられますが、2位に浮上した
アウアーよりもペースが良く、このまま行ったらペナを食らっても
リードを保てそうな雰囲気です。

 そして、雨が降りそうだ、と言っているのに、中団から後ろの人たちが
レースの真ん中でピットに入り始めます。
 確かに、降るの待ちで降らなければ、引っ張った人をアンダーカットできますし、
降り方が中途半端でも、アウトラップのペースが悪くてやはり逆転を狙えますが、
セオリーから言うともう少し待つべきでした。実際、この頃からワイパーを動かす車が
出始めていました。

 冷静に見極めた上位勢は降り始めたのを見てピットへ入りウエット タイヤへ交換。
ただ、待つのももちろんリスクはあるわけで
エドアルド モルターラはスピン、間一髪車が避けていきます。
 明らかに雨が強くなってきて、ここでトップのグリーンもピットへ。
ライバルよりはじっくり見た動きでしたが、なんと2位のアウアーはまだ我慢。
 もうどう見てもスリックで走れる状態ではなく、本人も無線で
タイヤの熱が保てないとか訴えているのに、なぜかさらに引っ張るアウアー。
 一応2位でコースに戻りはしたものの、熱が入っていないタイヤで止まれず
2台に抜かれて4位へ後退してしまいました。
 この辺り、無線の交信が制限され、コミュニケーションがとりづらくなった
影響もあるかもしれません。それは、雨が降る前に入ってしまった人にも言えます。

 結局ピット後のグリーンは独走態勢、そしてそれに唯一対抗しに行ったのが、
大ベテランのゲイリー パフェッツ。毎度雨が降るとしれっと上位に来るあたり、
DTM界のジェンソン バトンとでも言えるでしょうか。
7位スタートのゲイリーおじさん、グリーンを少しずつ追いますが、
10秒以上離されていてはどうしようもありません。
 結局4.9秒差でグリーンが優勝、2位パフェッツ、3位に昨年の王者・
マルコ ビットマン。
表彰台の顔ぶれは2戦とも全く異なり、2戦ともトップ6に入れたのは
アウアーだけ、今年もDTMは出入りの激しいレースとなりそうです。

 ただ、2列リスタートはちょっと無理があったように思います。
少なくとも、なかなか抜けないレースで、スタートで前に出てしまった人に対して
ピット作業時に消化できる5秒ペナルティーは刑が軽すぎました。
ドライビングスルー、ないしは順位の返還を求めるべきでした。
ピットまでに十分に時間があったため、グリーンはそれまでに5秒を遥かに超える
大きなアドバンテージを得てしまい、事実上ペナルティーが無力化されていました。
ちょっと色々一度に変えすぎだと思います。