2017 AUTOBACS SUPER GT Round 2 FUJI GT 500km RACE
富士スピードウェイ 4.563km×110Laps=501.93km(GT300 leader:102Laps)
GT300 class winner:JMS P.MU LMcorsa RC F GT3 中山 雄一/坪井 翔
                        (LM corsa/LEXUS RC F GT3)

 SGT第2戦富士500km。GT300クラスでは、今年から新車となったRC Fの1台、
51号車のJMS RC Fが優勝、GT3非公認時代も含めて初優勝、というか
表彰台自体がRC F GT3にとって初めてです。
坪井は今年GT300初参戦でこちらも初優勝。
 また、GT500クラスではRC Fは富士スピードウェイで一度も勝てずに
車両が切り替わりましたが、今回GT300でRC Fという名前の車が
富士で優勝しました。GT300でレクサス ブランドの車が優勝するのも初ですね。

 今年RC Fは2台参戦で、いずれもチーム名はLM corsaとなっていますが、
少々話はややこしく、実質的には別の体制。
LM corsaは大阪トヨペットグループのモータースポーツ活動部隊である
OTGモータースポーツと、INGINGのジョイントとして活動していますが、
51号車はメンテナンスがINGINGでタイヤはブリヂストン、
60号車はメンテナンスがOTGでタイヤもヨコハマ、となっていて、
51号車の方がよりプロ集団な体制になっています。
まあINGINGも元をたどるとトヨタ カローラ系のディーラー チームだそうですが。
なお、INGINGは50号車のアルナージュ レーシングとも組んでフェラーリを
走らせています。ただ、そのフェラーリ488は開幕戦のクラッシュで
大破したので今回は欠場、次戦も日にちが近いから間に合わないかもしれません。
フェラーリって日本では修理できずに本国に返送になるんですよね、
しかもめっちゃ値段が高い・・・

 予選では開幕戦に勝って40kgのウエイトを積んだグッドスマイル 初音ミク AMGが
なんとPP獲得。AMGは直線はあまり得意ではなく、実際Q2の最高速では
14台中10位でしたが、セクター3が速く全体にうまくまとめていました。
このチーム、昨年は買った車がハズレだったのか、謎の直線遅い病を抱えて、
ネジの位置1つ変わらないはずのAMG GT3勢で常に直線が遅かったんですが、
今年は大丈夫なようです。
 2位も開幕戦で驚きの3位だったGULF NAC PORSCHE 911、
3位に初音ミクの宿敵・GAINER TANAX AMG。JMS RC Fは4位でしたが、
最高速だとポルシェに匹敵する3位でした。
スタート前にこの数字が気になっていました。

 決勝が始まると1、2位がAMGのライバル対決、3位はJMS RC FがGULF 911を
抜いて浮上してきます。やはり直線速いです。
 AMG対決は2秒程度の差でずっと膠着したままレースが進んでいましたが、
スティントの後半にかけて初音ミク号のペースが鈍りGAINERが接近。
追い詰められた初音ミク号は30周目、逃げるようにピットへ。
この時、RC Fは約4.5秒差とまだまだ勝負圏内、4位のGULF 911はそこから
10秒近く離されていて、当面この3台が有力候補に見えました。

 バチバチのAMG争いを盛り上げてくれているわけではないでしょうが、
GAINERはセオリー通り1周遅れてピットへ入りオーバーカット狙い。
しかし初音ミクがコース上で抜き返して情勢は元に戻ります。
 一方、RC Fはというと一向にピットに入る気配なし、41周まで引っ張って
ようやく1回目のピット。タイヤも好調なのかペースがあまり落ちていなかったのが
印象的でした。

 予選タイヤでのスタートという縛りが外れたせいなのか、第2スティントの
初音ミク号はGAINERを相手にせずどんどんど引き離し、15秒近いリードで
スティント後半へと向かっていきます。
RC Fも第1スティントに比べると置いて行かれました。
 ところが、、、61周目、初音ミクAMGの左前輪がなんとフラットに。
何か踏んだのかトラブルかは不明ですが、これで仕方なくピットへ。
不幸中の幸いは、なんとか2ピットのウインドウには入っていたことと、
ピットの入る瞬間にGAINERが横を通過していった=まだそこまで
大きくは離されていない可能性があることでした。

 そこから9周後、初音ミクが本当は入りたかったであろうタイミングで
GAINERが2度目のピット。先に入ってたんだから初音ミクがとりあえず
見た目上アンダーカット、となることはなく、GAINERが事実上の
トップでコースに戻ります。初音ミクにとっては、ダメージを最小限に
抑えるレースになりました。

 JMSはここでも引っ張り作戦継続、そして、ピットに入ると、給油時間わずか20秒、
総作業時間たったの37秒(+動き出すのに2秒)でコースに復帰。
ピットの前には5秒ほど前方にいたGAINERの10秒以上前でコースに戻り、
アウト ラップに攻められる!ということすら無くこれでリーダーに。
長いスティントでも安定したペースで先に入った相手に対して時間を失わず、
最後の作業時間で見事にひっくり返しました。
 GAINERは追って行って一旦は接近したものの、追うためにタイヤを使った雰囲気で
その後は差が広がっていきます。タイヤの履歴が違いますからねえ。

 トップ争いが決着した感があった残りわずか、初音ミク号なんとまた
同じ場所のタイヤがフラットに( ゚Д゚)
4位を走行してポイントは持って帰れそうだったのに、これで圏外となりました。


 GT3車両というのは性能調整値が鍵を握る部分があり、新車は性能を
きちんと把握できない中での調整なため、想定を上回る性能だとそのシーズンを
通して速いことがどうしてもあります。今年の主だった新車はRC Fだけなので、
そういう面はあっただろうとは思います。
 ただ、単にリストリクター径が大きいからパワーがあるだけなら燃費も
劣悪になって引っ張り作戦は使いづらいはずなので、エンジン自体がよく
できているのではないかと思えます。
 タイヤのライフの長さ、車の扱いやすさ、という点でも秀でているからこその
作戦であり勝利だったとも言えるので、車両の完成度そのものが高いと思われます。

 昨年までの試作品はまあ入賞すらできない車でしたが、今年の新車は
そうした点を踏まえたほぼ完全な新車。
エンジンはボア×ストロークを替えて排気量もわずかに向上。
1300㎏で届け出ていつつ、実は超えていた車重もちゃんと1300㎏に。
駆動系はトランスアクスル化で重量配分も改善しています。
 分かりやすい言い方をすると、かなりお金をかけたということだと思います。
トヨタはGT500しかり、WECしかり、始めたばっかりのWRCしかり、現在
非常に好調です。業績あってこそでしょうが、モータースポーツ活動にきちんと
根を下ろしたことで、開発拠点はそれぞれ色々でも、全体として
何に重点を置いて、競技用車両にはまず何が大事で、どこには予算が必要で、という
部分が全体的に分かりようになったのではないか?とも思えました。
60号車のSYNTIUM LM corsa RC F GT3も8位で入賞。
RC F GT3、チャンピオン候補と言えるでしょう。


 さて、レースに戻ると3位はD'Station Porscheでした。
彼らは予選で3位タイムを出したものの、四輪脱輪判定でタイム抹消=14位スタート、
さらに最初のスティントではスピンを喫しています。
 で、結果はトップから17.5秒遅れの3位。単純にスピンで18秒ほど失い、
予選位置から推測すると、3位スタートならスピンまでに7秒は失っています。
決勝の最速ラップは2番目に速い車を0.5秒近く離したタイムが記録されており、
たらればですが3位スタートでまともにレースしていたら、彼らは
勝って然るべき車だったと思いますし、スピンが無ければ
トップ争いに加わっていたと思われます。非常にもったいなかったです。

 なお、植毛GT-Rは3周遅れの20位でした。