FIA Formula e Julius Baer Mexico ePRIX
2.093km×45Laps=94.185km
winner:Lucas Di Grassi(ABT Schaeffler Audi Sport/ABT Schaeffler FE02)

 FE第4戦は常設サーキットのメキシコ。昨年見た際に、
ターン1のシケインが抜けなくて事故の原因なだけで不満だったんですが、
やってる方もそう思ったようで今回形状を変えてきました。
が、ブレーキング競争できる形状ではなく、例えるなら
『壁に囲まれたデグナー』みたいな形なので、抜けないのは変わらず。
あとどうでもいいけど、テレ朝チャンネルが電子番組表のカテゴリーを誤って
”ドラマ”にしていたためにジャンル検索で引っかからなくてビビりました。

 シリーズはここまでセバスチャン ブエミの全勝でしたが、ここで
ようやくルーカス ディ グラッシが今季初勝利、タナボタとはいえ、
シリーズの流れを変えることになる、かもしれない1勝を手にしました。

 予選で最速だったのはダニエル アプトでしたが、予選後にタイヤ内圧規定違反で
ポール没収。変わってオリバー ターベイがPPとなります。
ブエミは7位スタート、ディ グラッシはさらに悪い15位からのスタートです。

 レースはターン1はなんとか通過したものの、低速&タイトなシケインの
ターン3で車間が詰まり、ステファン サラザンがディ グラッシに
思いっきりオカマを掘ってしまいます。これでディ グラッシはリア ウイングが
完全に傾いてしまいました。

 3周目に入るころに、コース上に破片が多すぎてSC導入。ディ グラッシは
これでウイングを替えることには成功します。

 5周目にリスタート、ターベイとホゼ マリア ロペスがレースを引っ張り、
3位のニック ハイドフェルドが後続を抑える形になります。
何せ抜けないレイアウトで、高地ゆえにスリップストリームもほぼ効いていないので
レースは膠着。しかし12周目の最終コーナーでいきなりターベイが失速。
電気系トラブルのようで、ターン1の先で車を止めて、再起動を試みます。

 普通のレースならすぐにでもSCが入りそうですが、EVは再起動で
何事も無かったように動くことが多いせいかレース運営も静観。
 しかし、待てど暮らせど動かないので16周を終えるあたりで2度目のSCとなります。
せっかくブエミが穴にはまって勝てるチャンスもあったのにターベイがっかり。

 するとこのSCで、ディ グラッシが車両乗り換え。
全然順位が上げられないので、作戦を完全に変える賭けに出ました。
確かにこれしか方法はなさそうです。
 そしてこの前の周には、ジェローム ダンブロジオも乗り換え。
こちらは同僚のロイック デュバルに追突して車を壊していました。
そしてこの自爆マンの存在が結果的にレースの鍵でした。

 23周目にディ グラッシはダンブロジオを抜いて位置関係が入れ替わります。
一方上位勢は24周を終えたところからピット サイクル。
主流は25周終わりで、ここでブエミは3つ順位を落としてしまいます。
ただそのうち2つは、アントニオ フェリックス ダ コスタとロビン フラインスが
規定時間以下でピットを出たせいでした。2台ともアンドレッティーの
車で同じようにミスっているので、チーム側の計算に誤りがあった可能性が高そうです。

 これで見た目上ディ グラッシがリーダーでダンブロジオが2位。
ただしかなりペースを落とさないと完走できない状態です。
 と、27周目、今度はデュバルがコース上で停止。しばらく待つも
動かないので3度目のSC導入です。
30秒近いリードを失う代わり、電力消費軽減というカードを得ました。

 31周目、残り15周でのリスタート。普通の作戦組でトップ=3位のロペスは
まずダンブロジオを抜かないといけませんが、抜けないコースで
ダンブロジオの鬼ブロック。リフト&コーストしないといけないので
仮に市街地でもあっさり抜かれるレベルのはずなんですが、ここは
形状的に外から抜くことがほとんどできないので、イン側を守ってリフトしていると
思った以上に抜くことができません。その間に逃げるディ グラッシ。

 35周目のターン1、とうとうロペスが外から並びますが、
止まり切れずにスピン。
するとさらにその後方、順位を上げようとファンブーストを使った
ブエミも、幅寄せを食らったのか汚れた部分に乗って止まらずこれまたスピン。
危うくロペスの車に突っ込む危険な状況でしたが、なんとか接触は逃れます。
ただこれで双方ともポイント圏外へ。

 ダンブロジオの相手はジャン エリック ベルニューになりますが、
相変わらず抜ける気配なし。
しかし鬼ブロックしすぎてダンブロジオのバッテリー残量は完走できるか
怪しいレベルにまで減少します。43周目のターン1立ち上がり、
とうとう壁に穴が開きました。ただ、ディ グラッシは遥か先です。

 こういう時には急にレースが荒れるもので、同じ周のスタジアム区間では
二コラ プロストがニック ハイドフェルドに接触。
スピンしたハイドフェルドにさらに後続車が突っ込む多重事故になり、
あろうことかハイドフェルドの同僚、フェリックス ローゼンクビストが被害者に。
軽率な接触だったプロストにはペナルティーでも良い気がします。

 結局ディ グラッシは最後まで逃げ切って、ベルニューは約2秒及びませんでした。
レース後、「コース外に何度も押し出してきた」とダンブロジオに対して
不満を見せました。

 荒れた展開も手伝ってか、パナソニック ジャガー レーシングは
4戦目で初入賞。ミッチ エバンスは4位に入りました。
アダム キャロルも8位です。
 母国でFEデビューとなったテチーターのエステバン グティエレスも10位入賞。
でも地元なのにファンブーストの投票で負けるって、ちょっと悲しい気が。

 
 ディ グラッシの作戦は単体ならほぼ確実に破たんしていたでしょう。
しかし、たまたま車を壊して同じ作戦を取らざるを得なかったドライバーが
もう1人いて、自分が前にいたことが最大の勝因でした。
 ここまで抜けないコースもどうなんだ、という部分はありますが、
マネージメントの上手さはさすがでした。
 ただ、チームとして考えると、ルノーE DAMSと比較して、彼らは
時々予選でのパフォーマンスで安定感を欠いているのが大きな課題です。
 また、ディ グラッシは過去に2度失格を食らっているわけですが、
今回もアプトが規定違反。
 内圧違反は詳細を把握しないと分からない部分も多く、今回はダンブロジオも
同様に予選後に引っかかっていましたが、DAMSにそうしたことが
起こらない点を考えても、どこかに詰めの甘い部分があると言わざるを得ません。
 今回ブエミが最速ラップの点しか取れずに、選手権でのブエミと
ディ グラッシの差はわずか5になりました。
 しかしチャンピオンを獲ろうと思うなら、アプトはきちんと体制を
引き締めないといけないでしょう。