2016 FORMULA 1 ETIHAD AIRWAYS ABU DHABI GRAND PRIX
YAS MARINA CIRCUIT 5.554km×55Laps=305.355km
winner:Lewis Hamilton(Mercedes AMG Petronas Formula One Team
/F1 W07 Hybrid)
Driver's Champion:Nico Rosberg(Mercedes AMG Petronas Formula One Team
/F1 W07 Hybrid)
F1最終戦アブダビGP。最終戦まで持ち込まれたルイス ハミルトンと
ニコ ロズベルグのチャンピオン争いは最後の最後まで分からない展開。
一旦眠たくなった私も覚醒する内容で、非常に見ごたえがありました。
予選ではハミルトンが今回もPP。セクター3で他を圧倒するタイムを出す姿に
引退したセバスチャン ベッテルが頭に浮かびました。
え?引退してるわけないって?いやいや、今フェラーリにいるのは
同姓同名の別人でしょ、だってあの好青年があんなにあれこれ悪態つきまくった挙句
引退間近のキミ ライコネンに予選の対戦成績で負けるとかありえないですから。
彼は去年で引退してますよ(´・ω・`)
悪ふざけは置いといて、メルセデスの争いにちょっかいをかけそうなのは
やはりレッド ブル。2台ともSSスタートで、ダニエル リカルドが3位、
マックス フェルスタッペンは6位スタート。
ロズベルグは3位なら自力でチャンピオンなので、ハミルトンからすると
ちょっかいを出してもらわないとチャンピオンになれません。
アブダビは開催数が少ないとはいえ、なぜかPPの人のリタイア率が高く、
スタート直後に接触しやすい形状のコースだけにスタート前は見る私も
非常に緊張しましたが、今回メルセデスの2人は普通のスタート。
赤牛さんはやはりタイヤのせいか蹴り出しがやや悪く、フェルスタッペンは
イン側のラインで旋回しきれず、自分からニコ ヒュルケンベルグに当たってスピン。
一瞬でビリになります。2台いないとちょっかいをかけづらいので、この時点で私は
「あーあ、これであんまりチャンピオン争いは盛り上がらないな」と思っていました。
まさかこのスピンがレースを大きく左右するとも知らず。
ハミルトン、ロズベルグ、ライコネン、リカルド、ベッテル、という並びで
展開した序盤戦。ハミルトンはタイヤを守るため、というだけではなく、
後続を引き付けてロズベルグを誰かに攻撃させるためにペースを制御しているように
最初から見えました。
USの寿命は名前通りウルトラに短く、ハミルトンはたった7周でピットへ。
ここでライコネンも入り、アンセーフ リリースを避けるためにちょっと待った
ハミルトンは1秒ちょっとのロス。これはロズベルグにチャンスか?
と思われましたが、翌周にロズベルグとベッテルで同じことが起こり、
しかもロズベルグは2秒以上待つ羽目に。ペナルティーを食らったら
シャレにならないのでかなり慎重でした。
そしてさらに厄介だったのは、戻った場所がなんとビリから追い上げ中の
フェルスタッペンの真後ろだったこと。ロズベルグのエンジニア、トニー ロスは
「フェルスタッペンは遅いだろうから抜かないといけないよ」と指示。
ここで詰まるとまた後ろから3台が追いかけてきます。
しかし意外とまだタイヤが生きていてペースが良いフェルスタッペン、
ロズベルグは下手に抜きに行ってブロックされると接触や後続からの
反撃に遭う可能性があるのでなかなか仕掛けられず。
トニーからの指示も「フェルスタッペンにリスクを冒すなよ」と慎重に。
要は2台に抜かれなければ問題はないのです。
レース戦略の基本はUS(SS)→S→Sの2ストップ。各スペックの寿命から考えて
1ストップはかなりの賭けでまあやらないだろうと川井 一仁は言っていましたし、
私もそう考えていました。
しかもSは高温作動型のタイヤで、夜に向かっていくこのレースで後半に履いた場合
グレイニングが起こりやすく、長く使うのは難しい特性です。
しかし待てど暮らせどピットに入らないマックス君。1回スピンして既に
予定が狂っているフェルスタッペンは、なんと1ストップに戦略を変更してきていました。
フェルスタッペンにとって好都合なのは、ロズベルグが自分を無理には
抜きに来ないこと。そうであるならば、タイヤが完全に終わるまで可能な限り
引っ張って、たとえタイムが遅くても順位を維持することが容易になります。
さすがに15周目に入るとリアのグリップ低下を訴え始めたフェルスタッペン。
20周目に入るころ、ロズベルグに対して
「フェルスタッペンを抜きにかかるぞ」という無線。一方フェルスタッペンは
何て言ってるか聞き取れませんでしたがさらに厳しくなっている模様。
すると無線の指示通り、ロズベルグが一発でフェルスタッペンに勝負。
接触ギリギリ、リスクを思いっきり負ってしまいましたがロズベルグが抜きます。
フェルスタッペン、21周まで引っ張ってSS→Sの1ストップ実行。
フェラーリ2台に挟まれて身動きが取れなくなっていたリカルドも24周目に
ピットに飛び込んでライコネンをアンダーカット狙い。
この後順に上位陣もピットに入り、今シーズン最後のピット作業。
ライコネンもちゃんとタイヤが付いてますよ。
しかしこの流れに逆らったのがベッテル。一人だけ第2スティントを継続し、
これは最後にSSを履いて攻めてきそうな雰囲気。どうせピットに入っても
リカルド、ライコネンの後ろで付き合うだけなので、それなら手を変えるのは
ありだと思います。
そしてここからがこのレースの最大の見せ場であり、議論の的でした。
ハミルトンとロズベルグの距離が接近。ハミルトンの調子が悪い、わけもなく、
これまた、わざとペースを落として後続に追いつかせる作戦です。
ついでに後方乱気流を浴びせてロズベルグの前輪を傷めつけることもできます。
もちろんチーム的にはあまり好ましいことではないので、
エンジニアのピーター ボニントンからハミルトンに対して
「ゆっくり走ってるとベッテルに対して危険だ」と忠告。
ベッテルがSSで追ってくると予想される終盤までにマージンを築いておかないと
抜かれるぞ、と言いつつ、暗に「そういうことやめろ」とも言いたげです。
しかしハミルトンは耳を貸していない模様。
じわじわとフェルスタッペン&リカルドが追い付いてきます。
37周を終えてようやくベッテルがピットに。ハミルトンから約19秒遅れの位置から
SSで追走スタート。ハミルトンは内心「来いセバスチャン」と思ったかもしれません。
残り10周、とうとうフェルスタッペンはロズベルグの2.5秒後方、
ベッテルもロズベルグの5秒後方でもうリカルドが抜かれる寸前。
レースも、ハミルトンの呼び寄せ作戦も、いよいよクライマックスです。
再びペースを上げるよう、具体的タイムを指定して指示が出ますが、
ハミルトン気にせず。残りが6周になるころにはトップ4が3.5秒差に入ってしまい、
画面にくぎ付けです。
残り5周、とうとうベッテルがフェルスタッペンも抜いて3位浮上。
さすがにこれで何かあるとやばいので、とうとう無線にチームの偉い人、
パディー ロウが登場。
「ルイス、こちらパディーだ。レースに勝つためにペースを上げる必要がある。
これは命令だ」
ハミルトンの返答が雑音がひどすぎて聞こえませんでしたが、
(how much leadというのが聞こえた気はしますが)
指示を無視しているのは明らかでした。
ハミルトンはロズベルグを低速のセクター3で特にひきつけつつ、
DRSが得られるセクター1終わりにかけてはちょっと頑張るのか、
ダウンフォースが抜けてロズベルグが付けないのか、DRSを与えません。
ロズベルグは乱気流の影響だけ受けて、DRSはもらえず、とうとう後ろからは
DRSを使って追われる展開に。ロズベルグは最悪ベッテルに抜かれる分には
構いませんが、ラインを変えた拍子にマックス君が何するか分からないので
そう簡単にはできない話。
ロズベルグも突っ込みすぎる様子が見られ、そうとう苛立っています。
54周目にはハミルトンからこんな声
「まさに今、ワールド チャンピオンを失おうとしているんだから、
このレースを失っても構わない」
そしてとうとう最後の1周、直前にハミルトンがちょっとペースを落としすぎたか、
ここでようやくロズベルグもDRSゲット。これで2本のストレートをしのぎ、
なんとか2位でチェッカー、初のワールド チャンピオンを決めました。
ロズベルグは父のケケ ロズベルグも1982年にチャンピオンで、
グラハム ヒル、デーモン ヒル以来史上2組目の親子でのチャンピオンです。
ハミルトンは10勝でロズベルグの9勝を上回ったもののチャンピオンを失い、
史上最も勝利を上げながらチャンピオンを逃したドライバーとなりました。
スピンが生んだ偶然でしたが、フェルスタッペンの1ストップは機能しました。
リカルドもレース後「1ストップにしとけばよかった、後から言うのは簡単だけど」
と、一度ビリになったはずの後輩に負けてかなりがっかりな様子。
彼が仮に1ストップでレースをリードしていたら、ハミルトンは
ひとまずリカルドを追って抜かないと話にならないので、こういう展開には
ならなかったかもしれません。まさか、抜いた後リカルドを間に挟んだまま
ペースを落として引き付けるとかいうウルトラCを繰り出したのだろうか・・・
フェリペ マッサは引退レースを9位でフィニッシュ。ドーナツをやったっぽいですが
中継は見事にその後しか映してくれませんでした^^;
そしてもう1人、来季は休養して再来年戻るよ、という変な契約で
話題だったジェンソン バトンもこの週末に引退を表明。
しかし最後のレースは、縁石の内側のソーセージとか呼ばれる高い縁石に
乗った瞬間右前サスペンションが折れて続行不能に。
まあ、2年後に「ああ、結果的にあれが最後だったな(遠い目)」となるよりは、
表明して、ピットでファンに挨拶できた分だけよかった、かもしれません。
しかし縁石に乗せたのはよくなかったかもしれんが折れ方がまるで
1年目のフォーミュラーEのようでした。ん?ひょっとしてホンダがFEに参戦したら
こっちに出るのか?
何はともあれ皆さん1年お疲れさまでした。そして話はハミルトンの
行動の是非へと続きます・・・