2016 Deutsche Tourenwagen Masters
Driver's Champion:Marco Wittmann
Team's Champion:Audi Sport Team Abt Sportsline


 今日でいよいよ2016年のF1も決着がつきますが、
秋春開催のFEを除けば他の全てのカテゴリーは既にシーズンを終えました。
そもそも11月の最後の最後にまだF1があってNASCARより後まで
やってることが驚きですが、ぼちぼち各カテゴリーの今季を
振り返って行こうと思います。まずは一番シーズンが短いDTMから。

公式の長ーいハイライト

 今年のDTM、車両は2014年途中(メルセデスのみ同年末)からの開発凍結が
継続しており、車は昨年と変わらないものでした。
ただ大きく変わったのがパフォーマンス ウエイトに関する規則。
 昨年は、1ラウンド2レースの決勝の結果を受けて翌ラウンドで反映していたものを、
今年は予選での各メーカー最速車の最速セクターを繋げた理論上最速ラップの
差に応じた調整を各レースで即座に適応することになり、昨年のように
同一車両が上位に固まって退屈することが減るように仕掛けられました。
 DRSも、前走者と1秒以内でコントロール ラインを通過すると1周に最大3回使えるが、
レース中に使える回数に上限を設けて使い方を工夫する必要が出ました。

 そして何より大きかったのが、BMW M4については、データ上不利な部分が
あるという理由で最低重量が他車より7.5kg軽い1112.5kg、リア ウイングも
拡幅される救済措置が取られました。
昨年までのレースを見ていて果たしてそこまで差があるのか謎の規則でしたが、
後ほどもう一度登場します。

最終的な選手権上位はこうなりました。
Marco Wittmann 206
Edoardo Mortara 202
Jamie Greem    145
Robert Wickens   124
Paul Di Resta    116

 シーズン中盤までは上位4人が接戦で争っていましたが、夏場にウィケンズが
ポイントを伸ばせず脱落、そこから次第にメーカー対決の構図が強まる
お馴染みの展開で、ビットマンとモルターラの一騎打ちが最後まで繰り広げられました。
結果、ビットマンが僅差で2014年以来2度目のドライバーズ チャンピオンとなりました。

 上位4人のポイントと各車両のウエイトをグラフにしてみると
(ウエイトは公式サイトを基にしていますが、1か所明確に誤りがあった部分は
修正しています。ほかに間違いがないとも限りませんが)
イメージ 1
 開幕戦に勝ったものの取りこぼしも多かったモルターラに対し、ビットマンが
毎戦着実にポイントを重ねたことが分かります。
ウィケンズは終盤にかけてほとんど得点を重ねられず、第11戦を終えた時点では
4点差の首位だったのに、その後の7レースでたった16点しか加点できませんでした。
その要因の1つは各陣営のウエイトからも見てとれます。
各車の年間の平均の重量は

RS5 DTM 1120.7kg
C63 AMG 1121.8kg
M4 DTM 1116.2kg

開幕時は7.5kg軽かったBMWは平均では5㎏程度の差に縮小はしましたが、常に
軽い車でした。メルセデスとアウディーは平均ではわずかな差ですが、
表を見るとシーズン後半にメルセデスの重量が高止まりしていることが分かります。
ニュルブルクリンクでの第13・14戦では、ウィケンズは苦戦していたのに、
同じメルセデスのルーカス アウアーが2戦ともPPを獲得し、むしろウエイトは
増えてしまいました。この頃アウディーは予選はそこそこ、決勝で順位を
上げていくレースが目立ちました。策略も多少あったんでしょうか。

 モルターラは最多の5勝を挙げ、年間の最多ラップ リードも記録していますが、
無得点のレースも5戦。
 一方ビットマンは3勝ながら無得点は3戦のみ、うち1戦は4位フィニッシュが
車検に引っかかって失格になったもので、これがなければ最終戦を待たずに
チャンピオンが決まっているところでした。

 2014年もそうでしたが、ビットマンはBMW勢で一人だけ圧倒的に
速さを見せていました。ビットマンは昨年もBMWで最もポイントを稼いでおり
3年連続でメーカー内でトップです。
 今年ビットマン以外に勝ったBMWのドライバーはティモ グロックの1勝のみ、
逆にアウディーは最多の10勝を挙げていて、相変わらずレースでのタイムが
安定しており、かつ、遅いドライバーは容赦なく上位を争うドライバーの作戦の
捨て駒に利用する集団戦法を今年も繰り広げていました。
 ビットマンはおそらく、少々車の状態が悪くてもそれなりの乗れる能力を
持っており、しかもバトルでの嗅覚が非常に鋭い印象です。
少々当てることはあっても、致命的に自爆したり、ペナルティーを食らったり、
あるいはブロックしすぎて仕留められることがありません。
F1でいうとフェルナンド アロンソのタイプに思えます。

 ところで冒頭に書いた通りBMWは開幕前に謎の救済措置を受けたわけですが、
オートスポーツ誌の情報だと、実は3メーカーの代表はシーズン中盤、
『救済などなくてもレースはコンペティティブであることが立証された』として、
措置の撤回を求めました。救済を受けて得をしている当事者も
そう言っているわけですから、そりゃあそうするに決まっています。
が、主催団体側はなんとこれを却下、制度は継続されました。
主導権はあくまでこっちだぞ、という威厳を示すためでは?と同誌は解説。
 ただ確かに、ビットマンを除くBMW勢は、ツボにはまらないと速くない
メルセデスと同等程度で、仮に救済を無くせばアウディーの独走に
なってしまう可能性はありそうでしたから、必ずしも誤りとは言えないでしょう。


 新しいウエイトの制度は決め方が難解でしたが、昨年のように
同一の週末の2レースに、同じ車が上位を独占するパレードを2日続けて
見せられるということは確かになくなりました。
メーカーが丸ごとハンデを積み下ろしする制度上、いくつかのレースで
上位独占は避けられず、ブダペストのレース1でのアウディーのトップ6独占が
今年の最多、他の2メーカーもモスクワの両日にそれぞれトップ4独占を経験。
ただ昨年ほどのひどさは感じずに済みました。
 しかし来年は各メーカー2台ずつ削減された18台になることがほぼ確実で、
それに合わせてさらなる改善が図られる可能性がありそうです。

 一方でDRSに関しては戦略的で非常に面白く、しかもDTMは無線を
ライブで放送に流すため、各ドライバーのやり取りを含め非常に面白かったです。
特に、DRSトレイン状態の時にはいかに使わずに集団に残り、相手に先に
使い切らせるか、の駆け引きがみ見ものでした。
「お前は向こうより2周多くDRSを持っているぞ」
「DRSをセーブしろ」
という無線がよく流れていました。どうせなら中継映像に残り回数も
出してくれるとより分かりやすいんですが。

 Youtubeでの様々な映像の配信、情報の多い公式サイトなど、
SUPER GTが見習うべき部分も相変わらず多くありました。
台数が減る来季も魅力が継続してくれることを願います。

今年のクラッシュ場面トップ10