FORMULA 1 GRAN PREMIO DE MÉXICO 2016
Autódromo Hermanos Rodríguez 4.304km×71Laps=305.354km
winner:Lewis Hamilton(Mercedes AMG Petronas Formula One Team
                             /F1 W07 Hybrid)

 F1第19戦メキヒコ。さすがに各陣営今更新しいパーツを入れることも
無くなりますが、川井ちゃんのアロハはハロウィーン版が投入されました。
 レースの方はペナルティーで色々とレースが終わってからのゴタゴタガ続き、
表彰式にいた人が実は3位ではないというすっきりしない終わり方でした。


 予選ではルイス ハミルトンがQ1~Q3までニコ ロズベルグを圧倒。
今回もメルセデスはスタートにSSを履くのを嫌ってQ2をSで通過、
S→Mの1ストップ狙いで戦います。
 2列目はレッド ブルが、こちらもおなじみ、普通にやっても勝てないから
違うことしよう作戦で2人ともSS。さて、2ストップか、無理やり1ストップか。

 フォーメーション中にはファン パブロ モントーヤから地元ドライバー
エステバン グティエレスに無線インタビューというNASCAR的な演出が
ありつつのスタートは結構な荒れ模様。
 メルセデス2人の動き出しはやや鈍い、ぐらいでしたが、ハミルトンは
ブレーキの左右の温度差が極端に発生していたようでターン1で猛烈ロック、
シケインを完全無視。
 さらに2位争いでもロズベルグが並走したマックス フェルスタッペンを
避けるためかコース外に出てそのまま順位を維持。フェルスタッペンからすると
ロズベルグはコース外走行で利益を得たように感じ苛立ちます。
これが1時間半後の伏線と言えるかもしれません。


 後方での接触でパスカル ウェーレインがクラッシュしたためSC導入、
ここでリカルドがSS→Mのピット。70周もさすがに走れん気がするので
2ストップになりそうですが、このコースは抜きづらいのでよほど頑張らないといけません。

 各車とも1ピット狙いで2スティント目はM選択になりますが、走る位置や
スタートのタイヤでタイミングがかなりばらけ、フェルスタッペンが12周、
ハミルトン17周、ロズベルグとキミ ライコネンが20周、そして
セバスチャン ベッテルだけは極端に長い32周まで引っ張ってタイヤを替えます。
 路面温度が50℃を超えるようなコンディションになっていたため、
作動温度領域の高いSはそれなりに仕事をする一方で、低温作動型のMには
辛いコンディションで、ベッテルは第1スティントの最後まで好ペースを維持。
ライバルほどMのライフを気にせずに済むため、レース終盤に期待が持てる
レース運びでした。オーストリアでもこれをやったらバーストしたので
また爆発しないかだけが心配だったんですが、何も起きなくてよかったです。

 Mを履いた人からは口々にタイヤの状態が悪いという不満の声。
温度が上がりすぎてグリップが低下していると想像できます。
しかし直線が長いのであまりペースを一気に落とすとフロントだけ作動温度領域以下まで
温度が下がって交換する以外に手が無くなる危険性もあります。タイヤは難しい。

 これならSS、S、Hと1ランク飛ばした選択の方がレースしやすかったような
気がしますが、それだとあまりに1ストップが鉄板すぎてダメでしょうか。
むしろHのペースの遅さからS2セットでつなぐ2ストップも増えて面白い気が
するんですが。

 ライコネンはMが全く使い物にならなかったようで我慢しきれず45周目、
たった25周使っただけでさじを投げ、予定外と言える2ストップに。
 リカルドもタイヤが限界で50周目にピットに入り、こちらはS選択。
これがまた最後のドラマにつながりました。

 リカルドがピットに入る少し前の50周目、フェルスタッペンは周回遅れに
引っかかったロズベルグがターン1でミスをした絶好機を逃すまいと、
ターン4で飛び込みますが突っ込みすぎでした。でもいい挑戦です。
ハミルトンは「どうせならぶつかってくれよ」と思ったかもしれません(´・ω・`)

 機会を逃したフェルスタッペンにはタイヤが新しいベッテル、さらにその後ろから
リカルドが追いかける展開となり、68周目、問題の場面に。
 ベッテルがDRSを使って接近していたのが気になったか、
ターン1でロックさせてしまいシケイン冒進。


 ベッテルは「俺を行かせなきゃおかしいだろ」と訴えかけますがマックス君完全無視。
 そうしている間にベッテルにリカルドが追い付いてしまい、
ベッテルからすると本来いないはずの相手がいるせいで自分が危機にさらされて
納得できるはずがありません。

 そして70周目、ターン4でリカルドがインに飛び込みベッテルと軽く接触、
しかし互いにギリギリをちょっと超えたバトルでしたが事故は逃れます。
この2人の超接近戦での腕前は超一流です。
 しかしこれで互いに時間を失い、結局この3人はフェルスタッペン、
ベッテル、リカルド、の並びのままフィニッシュ。
ベッテルはレース ディレクターのチャーリー ホワイティングにも無線で
悪態をつきました。NASCARなら巨額の罰金確実です。

 テレビにほとんど映りませんが優勝はハミルトンでアラン プロストと並ぶ
通算51勝目、ロズベルグは2位で今回も仕事は果たしましたが、
レースを通じてハミルトンに及ばなかったことが残り2戦で心理的にどうなのかが
注目されることでしょう。


 一旦は表彰台控室に向かったフェルスタッペンでしたが、レース後すぐに
コース外走行で利益を得たとして5秒ペナルティー。
これでベッテルが繰り上げで3位となって表彰台に上りインタビュー。

 が、この3位もまた幻でした。レース後、リカルドに対するベッテルの動きが
規則に反するとして10秒ペナルティー。これでベッテルはフェルスタッペンよりも
後ろになってしまい、最終的な3位はリカルドということに。
なんだあ、最初からそうならメキシコのお酒でシューイをやってモンちゃんに
飲ませれたのに~w

 
 今回のレースでは結局コース外走行というのが1つ鍵になりました。
フェルスタッペンの主張には一理あります。
 スタート直後のハミルトンは、1位を走っていて、ブレーキで止まらずシケインを通過し、
特に誰かと並んでいたわけでもなんでもなかったため、特にお咎めがありませんでした。
 コース外走行の利益の解釈は、主に

1 コース外走行が危険回避のために必要であったか
2 コース外の走行が順位の変動に影響したか
3 コース外走行を行ったセクターでタイムを稼いでいないか

から考えます。
ハミルトンの場合、相手がいないから1は関係なし、2は競争相手が
いないからこれまた関係なし、3は、1周目で比較するタイムもないので
実際問題証明ができません。
利益を得たかどうか、という以前に、そもそも得る利益が存在していない、
と言った方が良いような状況でした。

 ロズベルグもまたフェルスタッペンと並走してコース外を走りましたが、
この場合1がまず該当し、2に関してもその直前の車の位置関係が
わずかにロズベルグが前だったのでお咎めなし、と判断されたと思います。

 そこからすると、別に争っていたわけでもなく、単にミスって飛び出した
フェルスタッペンはハミルトンのケースと同一、セクター タイムで明らかな
利益を得ていない限り不問でないと公平性に欠ける、ということになりそうです。
 確かにその通りな部分がありますが、一方でそもそもハミルトンに何の
嫌疑もかけられなかった、というのが制度上の不備ではないかと思います。
2位以下の車があれをやると間違いなく大事故ですから、ある種あれは
先頭走者だけができる特権です。これを安易に認めてしまうと、ターン1が
シケイン状のコースで先頭の人は下手にバトルするより無視して突っ込んだ方が
安全に切り抜けられることになってしまいますから、文字通り”抜け道”になっています。
 ハミルトンはブレーキの温度に問題があって止まれなかった、という事情が
ありますが、じゃああれを5位スタートでやって大事故起こしてたら、
あるいは全員シケイン無視でぶち抜いて1位になったら許されるか、というと
そんなわけはなく、そもそも不具合があるブレーキ状態で普通の場所で
ブレーキを踏む判断自体が誤りです。
 総合的に判断して、最低でも5秒ペナルティーを課しておくべきだったのではないかと
思います。
 もちろん、フェルスタッペンに対するペナルティーは本来は妥当ですが、
このレースの基準からするとグレーです。
 また、実際にレースが動いていて、ベッテルからすると
フェルスタッペンがいることで真後ろにリカルドが来てしまっているわけで、
レース後審議、なんて悠長なことを言わず、譲るのか、不要なのか、
迅速に決めてもらいたかったです。


 そしてベッテルのペナルティー、おそらく数戦前までなら取られていません。
フェルスタッペンの度重なるトリッキーな動きを受けて、
「ブレーキング中にラインを変えたら違反」という新たな明確な基準がアメリカGPから
設けられており、ベッテルは確かにブレーキを踏みながらじりじりと
リカルドに寄って行っているのでこの基準に照らすとアウトでした。
 が、長年私がモータースポーツを見ている感覚からすると、
あれでペナルティーを与えるというのは少々職権乱用とでも言いますか、
決めたからには適用せねば!という頭でっかちな適用だったと思います。

 フェルスタッペンの種々の動きに関しては、批判が出るたびに
「規則上違反ではない」という説明がなされ、結果、「じゃあ規則作れよ」
という圧力が強まってより厳格な適用基準ができました。
 が、そもそも数年前に厳格にペナルティーを取るぞ、と言ったら、
それじゃあバトルができない、という話になって、
あんまり厳しくとるのやめようよ、と緩和される流れをたどってそれほど
時間は経っておらず、そこに来ての今回の基準変更と実際の運用、
あと数例出てきたら、「厳しすぎる」とまた緩和されるんじゃないでしょうか。

 今回はちょっとスチュワードの手際が悪く、問題を不用意に拡大させた面は
あると思います。