時々やってくる、日本で1人ぐらいは偶然訪れた人の役に立つかもしれない
初心者向けNASCARウンチクですw
NASCARほどピットの頻度が多いレースはなかなかありません。
作業の細かすぎる時間へのこだわり、他カテゴリーではありえない動作は
過去に書いてきましたが、ピットでもう1つ、ひょっとすると作業速度と
同じぐらい大事になるかもしれないのが、ピット ボックスの位置です。
下部カテゴリーは見たことがないので分かりませんが、カップ戦において、
決勝でのピット位置は予選の速かった順に好みの場所を順に選んでいきます。
F1やGTでこうした決め方は聞いたことがありません。
ピットの位置で最も欲しいのが、ピット出口に一番近い場所。
PP獲得ドライバーはほぼ間違いなくここを選びます。
何せ、ピットを出る際、普通ならステアリングを切りつつ始動しないと
いけませんが、この位置は真っすぐに出ることができます。
距離は短いし、トラクションがしっかりかかります。
前の止め方が悪くて出られない、ということもありません。
また、一番最後にボックスに入るので、既に作業を始めたライバルの動向を見て、
ギリギリまで作戦を変更できるという利点もあります。
特に、ピット出口の基準線でリスタート時の順位が決まるコーション時には
この効き目は抜群で、厳密な数字は計ったことがないですが、おそらく
作業時間にして0.5~1秒程度ゲインしていると思われます。
2番人気はだいたいこの真逆の一番入り口側。単純に手前に誰もいないから
止めやすいためです。
ただ、戦う相手が先頭のボックスだと、作戦が完全に筒抜け状態なのが
難点といえば難点です。
また、コーション時など、まだ台数が多い時間帯だと
上位でピット→ポジション重視で2タイヤ→6秒で出る→
まだ後続車がピットに入っている最中→出にくい(ないしはぶつかる)
ということもあるので、個人的にはそこまで有利な気がしていません^^;
これ以外に好んで選びたい場所は、まず
ガレージへの通路が設けられている場所の前後。
通路の分だけ空間ができているので、前後ともボックスになっているのと比べると
いくぶん出やすい/入りやすいためです。
そこも取れなければ、避けるべき点として、順位を争うことになりそうな
ライバルの隣は、ピットの度に動きが重なる可能性があるので避けますから、
とりあえず既に取られた場所よりは離れた方が良さそうです。
結果的に、前後が周回遅れ確実な下位勢だと、コーション時には
ピットの時期がズレて絶対無人になるので、いくぶん有利に働きます。
なお、仮にアンダー グリーンの時など、前後に誰もいない状態での
ピットであっても、他人のボックスを複数またいで走行すると
ペナルティーになってしまうので、誰もいないからと言って自由に直進はできません。
こうして欲しい順に予選上位から埋めていって、40個のボックスが埋まります。
そして、ピット位置がレースに重要であることを示す1つの証拠だと思いますが、
NASCARの様々なペナルティーの中には
『ピット選択権はく奪』というものがあります。
またしてもルーキーのチェイス エリオットが例題になってしまいますが、
ニューハンプシャーのレースで、エリオットがピット選択権はく奪の
ペナルティーを受けてしまいました。
結果、与えられた場所はブラッド ケゼロウスキーの1つ後ろ。
思いっきり順位を争いそうなライバルの後ろです。
そこでエリオット陣営も対策を練ったようです。

©NASCAR Media Ventures,LLC.
右側のクルーのおじさん、なんか増粘効果のあるものを撒いてるっぽいですが^^;
その足元のバカでかい黄色い印。
ケゼロウスキーの隣になったため、通常よりも右寄りに印をしたそうです。
手前に32号車の赤い印も映っていますが、エリオットの方がきもーち
右寄りな気もします。

©NASCAR Media Ventures,LLC.
ピット時には、”24”と書かれたボードをクルーが目印のところに合うように提示し、
この時、エリオットも完璧にそこに左前輪を合わせていました。
深く入りすぎると、相手が右側いっぱいに止めてた時自分が出るのに不利ですし、
もちろん、相手が後ろから来た場合には、相手に楽をさせてしまいます。
しかし、ボックスから少しでもタイヤがはみ出てしまうとこれまた
ペナルティーですから、浅く入ろうと意識しすぎて
右後輪がはみ出るわけにはいきません。車庫入れ技術がとても大事ですw

©NASCAR Media Ventures,LLC.
NBCの中継では、コーション時にこのような画面割りがよく出てきます。
上部に書いてあるのがボックスで、黄色く表示されているのが、今回の
ピットで分割画面に登場するドライバーとそのボックス位置を表しています。
78号車と11号車はガレージ誘導路の手前にある出やすい場所を選んだことが分かります。
リポーター陣も、簡単に言うとピットを4人制ならボックス10個ごとに分割し、
各々がその持ち場内にいるドライバーの情報収集・リポートを行うことになります。
うっかり上位争いをする人たちが同じエリアに固まってしまうと、
コーション時に出番の無いリポーターが発生してしまいます^^;
マイクがすげえ忙しく3人分リポート、からの~~マーティー。終わり。
みたいな感じ。
あの仕事っぷり、SUPER GTでもこれぐらいやってほしいといつも
うらやましくなりますw
見る側も、争う人同士が近いと、一人を「アジャスト入れるかな?」
と思って見ていると、画面の隣も作業がほぼ同時進行で目が追い付かないので
ちょっと離れてる方が良いですw
実は重要なピット位置のお話でした。