2016 FORMULA 1 BELGIAN GRAND PRIX
Circuit de Spa-Francorchamps 7.004km×44Laps=308.052km
winner:Nico Rosberg(Mercedes AMG Petronas Formula One Team/
F1 W07 Hybrid)
F1の短い夏休みが終わり、ベルギーから後半戦が始まります。
このレース、ルイス ハミルトンは苦しくなっていた資金繰りならぬ『PU繰り』を
解消するため、新しいPUを積んでは降ろしてペナルティーを受けまくる代わりに
『PUの貯蓄』を行う作戦を発動。これでハミルトンは55グリッド降格と
引き換えに、よほど運が悪くないかぎりシーズンの最後までPUでペナルティーを
受けることはなくなる見込みとなりました。
但し、今後トークンを用いたアップデートが行われた場合、それを使うには
新たなPUが必要なのでペナルティーを受ける≒事実上これ以上のアップデートは
受けれません。
そんなわけでハミルトンは最後尾スタートが確定したので、予選はQ1を
最下位タイムで流しただけでお仕事終了、一方ニコ ロズベルグは
Q2をSSではなくSで突破した上でPPも獲得。
負荷が高い上に1周が長いスパでSSはまるで役に立たないほど寿命が短いため、
Sでスタートできるのは非常に大事なことです。
2位に入ったマックス フェルスタッペンが上位では唯一のSSスタートになったので、
スタートの蹴り出しでロズベルグをおちょくってくれるかが注目の決勝でしたが、
いざ始まってみるとむしろフェルスタッペンが一番最悪の出足でしたw
跳ね馬2台に抜かれたフェルスタッペンは一番イン側から再逆転を狙いますが、
彼がこっちに動いた瞬間
「そこは入ったらあか~~ん!」と叫んだのは私だけでしょうか。
案の定、フェルスタッペン、ライコネン、セバスチャン ベッテルの3台が
立て続けに絡む、というかライコネンが可哀想なぐらい見事に挟まれて互いに損失に。
インからしれっとニコ ヒュルケンベルグが2位に上がっていてオーダーが
ニコニコになります。
以降のオーダーも随分と変わってしまい、ロマン グロージャンが5位、
ハミルトンと同じくPU在庫生産で最後列スタートのフェルナンド アロンソが12位と
なるなど、混乱に乗じて順位を上げてくる人がちらほら。
当事者の怒りを別にすれば一旦レースは落ち着き、お、とうとうヒュルケンの
初表彰台もありか?と思っていた6周目、ケビン マグヌッセンが
スパでは久々に見る大クラッシュ。ラディオンを登り切った先でスライドし、
カウンターを当てた瞬間にハイサイドを起こしてしまいました。
フェラーリPP600SSの練習でF40を使った時、私はまさにこんな状態でした。
ハラキリさん、今思ってもなぜ無事にあの車で走れてたんだw
マグヌッセン、一応無事なようですが次戦の出場の可否はギリギリまで
考えるようです。
これで即座にSC出動となり、SSスタートですぐにでも替えたかった人たちは
ピットに飛び込んで主にSに交換。
しかし、バリアの破損がひどく結局赤旗に。すぐに直せないのは
大体分かるので、赤旗を予想してあえて入らない人がいてもよかった気がしましたが、
結果的にこれによって、S、ないしはMでスタートした人は、見た目上の
順位を上げた上に赤旗で新しいタイヤにタダで交換できるので完全に得しました。
11周目のリスタート時点でハミルトンは既に5位。しかも予選をほぼサボったから
新品タイヤがたくさん!予想外に良い順位で終われそうな展開になってきました。
残りは33周で、各ドライバーともあと1回のピットで、事情に応じて
SないしはMで走り切るのが標準的な考え方かと思われましたが、
ハミルトンはSのバランスが悪いのか、随分と早い段階から
「すごい滑り始めた」と訴え、結局21周を終えて2セット目のSを投入。
彼は『2ストップ』になってしまいました。
メルセデス的にはひょっとしたらロズベルグも無理やり同じ回数に
合わせたりするのかと思いましたが、さすがに今回はロズベルグは不要なピットはせず
26周を終えて2セット目のM投入でそのまま逃げ切りました。
果たしてハミルトンの作戦が下手だったのか、彼はタイヤがもたない状況で
これしか手がなかったのか分かりませんが、それでも、シーズン序盤から言われていた
「ハミルトンはポイントで負けてる上にPUのペナルティーもあるから厳しいよな」
という心配を吹き飛ばす3位。
ペナルティーを消化してなお選手権リーダーですから、最大限の結果と言って
良いと思います。
ロズベルグも自身の最高の仕事を果たしましたが、最多ラップ リードにも
PPにも何一つボーナスが付かず、いくら圧勝しても25点以上もらえない制度では
彼にはどうしようもない現実です。
簡単に引き下がること無く最後まで選手権を盛り上げてもらいたいです。
ハミルトンもフェラーリも消えたおかげもありますが2位はダニエル リカルド。
前戦で私は、ホッケンハイムでそこそこ速いし案外スパも期待できそうじゃないか、
的なことを書いたと記憶していますが、実際ここでもレッド ブルは非常に
優秀な車だったと思います。
一方のフェルスタッペンですが、スタート直後の動きは、ペナルティーでこそ
ありませんが、ドライバーの暗黙のルールとして、あの位置で飛び込むのは
『ナシ』だと思われます。
もう少し緩いRでインベタのまま回れるターンなら構わないんですが、
ここのターン1はV字の鋭角なターンですから、あの角度で入ると必ず
左前輪やノーズは外のラインまでお邪魔する格好になり、外にいる人が
心優しく避けてあげないかぎり絶対ぶつかります。
ましてやスタート直後の混雑時ではぶつかるのは明白。入るべきではありませんでした。
外にいたベッテルもちょっとライコネンに被せるのが早すぎで、これは
中国GPで起きた出来事のちょうど逆だったと思います。
さらにフェルスタッペンはこの後、ライコネンがDRSを使ってケメル ストレートで
背後に付いて、もうスリップから出るぞ、というタイミングでラインを
変えてライコネンに減速を強いました。これは極めて危険です。
GTのオンラインで、ニュル北の全開区間で平気で進路変更する人は
間違いなく周囲の反感を買いますが、リアルで、しかもフォーミュラーで、
F1ドライバーが、やるのはあり得ないです。
スチュワードは難癖つけてでもペナルティーを与えて、あれがやってはいけない
危険行為であることを示すべきでした。ペナルティーがない=やっても良い、
と彼が自信を深めるのが最も危険なことです。
チームもきちんと教育すべきですし、次にやったらトロ ロッソに落とすべきです。
さて、レースの結果に戻ると、ヒュルケンベルグがまたもや4位で
初表彰台はお預け。ですが、セルジオ ペレスも5位で続いて、フォース インディアは
とうとうコンストラクターズ選手権でウィリアムズを逆転してしまいました(゜ε゜)
マルティニ色は昔から親しまれるカラーリングでいかにも
伝統のあるチームっぽいですが、マルティニからはあまりお金はもらえておらず
実はお金があまりないらしいウィリアムズ。
新規則1年目に勝てそうだったことが逆に、開発において理想が高すぎ、
二兎を追って一兎も取れないような状況に迷走したように感じられます。
もちろんFインディアもお金がたくさんあるわけではなく、というか
オーナーのビジェイ マリヤはインド警察から資金洗浄等の罪状で
逮捕令状が出ている『経済犯』となっており資格が問われる事態になっていますが、
車両製造チームは地道で的確なアップデートを繰り返し、驚くべき結果を
手にしています。
思い返せば彼らもまたかつて、直線番長をベースにして活躍したものを、
下手に総合性能を追い求めて翌年から迷走した記憶があります。。。
フェルナンド アロンソは予選で車がいきなり止まったけど決勝は7位。
ホンダPUは確実に良くなっていて、ヒュルケンベルグに対し、
ケメル ストレートで、DRSなしの状態で、スリップストリームに入ったら
ちゃんと前に追いついていました。昨年までならあり得ない光景です。
何戦前からか忘れましたが、ホンダPUは音がずいぶんと良くなっていて、
低速域で独特の「バラバラバラバラ」という汚い音を発して、いかにも
ダメPUだなあという感じだったのが、このバラバラ音が、トランペット等の
金管楽器で出した音のような響きになってきました。
使い古された表現の『ホンダミュージック』とか呼ぶと、
「こんなのをかつてのV10と一緒にするな!」と怒鳴られそうですが、
テレビで見ていて画面外にマクラーレンがいても絶対に一発で聞き分けられる
独特の音が、今までより綺麗に聞こえてきたというのは、決して
性能面と無関係ではないと私は思います。