さて、前回↓の続きです

 SGTのSC規則の難点は主に
・やるとなるとすんごい面倒くさい
・ピットをめぐる不条理がある
の2つだということは、長ったらしい文章からも十分お分かりかと思います。

 ですが一方で、このレースにはファースト レスキュー オペレーション、通称
FROと呼ばれる、世界でもあまり目にしない独自の仕組みがあります。
 FROは、アクシデントやトラブルで動けない車が発生した場合に、
車を牽引して脱出させる、ドライバーを救助、場合によっては応急処置を施すなど
多様な作業が可能で、近年台数も増強されています。
FRO導入中はFROボードが掲示され、もちろん事故現場、及びFRO走行区間は
黄旗となりますが、レース自体はそのまま進行していきます。
 簡単な問題ではSC導入ではなく、FROによって問題解決を図るのがSGT流、
と言えるかもしれません。
 かつてF1韓国GPでなぜかリーダーの前方を作業用車両が走っている珍事がありましたが、
SGTでは当たり前の光景で、たぶんSGTファンは「FROだw」と思ったことでしょう。

※個人の感想です

 たしかにこの仕組み、すごいとは思うんですが、最近のレースを見ていますと、
いずれFROを巻き込む事故が起きるのではないかという不安を覚えます。
両クラスともかなりの高速化をしており、脇をすり抜ける車の速度も非常に速いです。
黄旗2本振動は十分に減速、とされていますが、実態は皆、追い抜きを避けつつ
できるだけ時間を失わないように走るわけで、しかもGT300にはアマチュアの
選手もいる中で、予期せぬ接触がいつ発生しても不思議ではありません。
その時巻き込まれるのはFROの作業員です。
 F1でのジュール ビアンキの事故により、コース脇で何かしら作業している時に
レース環境を維持するのは危険である、というのが世界的に共通認識となる中で、
車はフォーミュラーではなく、作業車は重機ではないとはいえ、すぐ脇で
生身の人間が作業する危険性は極力排除すべきではないでしょうか。
 ましてや、先日の富士でも明らかな通り、ストレートでいきなりブレーキが壊れて
すっ飛んでくる車もいるわけです。あの時仮に1コーナー先で砂場にハマった車を
FROが助けていたら、ブレーキの壊れたGT-Rは『十分に減速』できたでしょうか。
最近タイヤの突然のバーストも多い中で、
『減速するように言ってるんだから大丈夫』は安心材料ではないと思います。
これが、強制力を持った全車の減速=FCYが必要と考える理由の1つです。
(無論、FCY宣言を受けて減速した車が止まらないという危険性までは排除できないが)

 また、前述のとおりSC導入が煩雑であるために、レース コントロール側が
SC導入をためらっているのではないか、と思うケースも多々有ります。
 顕著なのは昨年の富士300kmで、レース終盤、ホーム ストレート上に
バーストしたエヴォーラの破片が散乱した場面。
他レースなら20000%の確率で即時SC導入ですが、ここではレース続行。
破片でラインが限られる中でD'station ADVAN GT-Rがトップに立った場面は
名場面のように言われますが、あんななかでレースを続行しているのは
はっきり言っておかしいです。
 ヤケになったZENT CERUMO RC Fは破片の上を通って即効バーストしたら
そのレース面白いですか?
 コース脇での救出作業と違って、こうしたコース上の破片にFROは使うことはできず、
結局そのままレース続行。
 今年もまた、レース終盤にターン1の先に大きな部品が落ちていましたが、
レースは続行でした。
 続行か、煩雑なSCか、の二択であることが問題だと思います。

 黄旗2本で本当に『すぐ停止できる十分な減速』が行われているのなら、
FROが走ってコースのど真ん中に止まり破片回収に向かっても何の問題もないはず。
でも実際そうはならず、『何km/hって具体的に書いてないからいいでしょ』と
言われるのなら、強制力を持った減速をさせるしかありません。
『破片があるのは分かってるんだから、避けてレースするのもプロ。
嫌なら抜かれろ、リタイアしろ』というのは暴論で、それはアクアプレーニングが起きて
まともに走行できない条件で
『怖い奴はヤメればいい、レースはやれ』と言うのと同じです。
明らかに安全なレース進行を妨げる要因が現に存在するにもかかわらず、
対応を取らないというのはあまりに時代遅れです。

 現状ではSCが煩雑であるために少々のことでは導入をしようとせず
危険性を放置する傾向に有る。これがFCY導入の必要性を考える2つ目の理由です。

 
 ただこの話では、ピットの有利不利に関する議論は解決しません。
これは良い悪いを決める尺度が無いわけですが、個人的にはFCY中はクローズ、
で良いのではないかと思います。
SCは何度も言うように煩雑ですごい周回数も要するため、我慢しきれないことが
出てきてしまいますが、それと比べるとFCYは適用要件からしてもそこまで
長時間にはならず、その間の走行速度も遅いので燃料はそこまで消費しません。
また、SCと比べると頻度が高いですよ、ということがある程度分かっていれば、
そもそも燃料を2~3周分残してピットに入る作戦にしておけばほぼガス欠の
回避は可能だと考えます。
あるいは、FCY中のピットと通常のピットでの時間差は概ね計算が可能なので、
『FCY中のピットではボックス停止後○秒間待たないと作業できない』といった
規則を設けておき、双方の差を極力小さくするのも1つの手ではないでしょうか。
(ただし結果的にFCY→SCとなった場合に損得が出る可能性は残る)

 
 導入に向けた壁が多いため、来季からすぐに実戦投入できるのかは不明ですが、
事故が起きてから『やっておけばよかった』にならないために、
GTAと3ワークスは出せる技術、お金を結集してもらいたいです。
 
 なお、仮にFCY制度が成立しても、これとは別に、SC制度についても簡素化や
ピット制度の変更を検討すべきです。
少なくとも、GT300用のSCを入れて隊列整理はもう少しスムーズに行う必要が
あると思います。