NASCAR Sprint Cup Series
Pennsylvania 400
Pocono Raceway 2.5miles×160Laps=400miles(悪天候により133周で終了)
winner:Chris Buescher(Front Row Motorsports/Dockside Logistics Ford Fusion)

 NSCSポコノ。毎年ながら、ポコノは2回開催の間隔が短く、
しかもブリックヤードと展開が似るのでちょっとカレンダーをなんとかして欲しい
感じがあります。
が、今回そのカレンダー、というか日取りが思わぬサプライズをもたらしました。

 レースは天候不良で月曜日開催。それでもやはり天気が悪く開催時間も遅れ、
途中でまた雨の予報も。
 PPはマーティン トゥルーエックス ジュニアで、コンペティション コーションまで
独走していましたが、コーション明けのリスタートからほどなく、ターン2で
クラッシュして早々に争いから離脱します。この後修復してコースに戻るも、
計3回事故ることに。

 ポコノは2.5マイルで抜きにくいためいわゆるロード コース戦術を頭に入れた
頭脳戦になりがちですが、今回は雨による打ち切りも頭の片隅に入れないといけません。
最初のコンペティションでも早速2台がステイ アウト。
空力的な要因と、ひょっとするとフューエル エフェクトの問題もあるのか、
ステイでもそこそこ先頭を守ることができます。

 コインの表と裏のように作戦の兼ね合いで時間帯によって先頭が変わるわけですが
レースが半分に差し掛かる頃にリーダーを争ったのは初勝利が待たれる
カイル ラーソンとオースティン ディロン。
まるで80周で終了が決まっているかのごとく激しく争いあい
もつれている隙にジョーイ ロガーノがそのインからいっただき~w
この後86周目に雨でコーションが出ますが、ここではまだ終了とはならず。
 ただ、コースの一部がいわゆる『ガスっている』ような状態。NASCAR側は
「スポッターがコース全体を見渡せない状況なら安全性の問題でレースできない」
と通達が出ているようで、仮に雨が降らなくてもレースが止まる可能性があります。

 99周目、コーション発生で作戦がまた分岐。ここではステイ アウトが多く、
ロガーノは中団からのリスタートとなり、リスタート翌周の105周目、
チェイス エリオットと絡んでガレージ送り。
 インで曲がりきれずに当てたエリオットの責任ですが、相手が新人で、
しかもどっちみち外から抜けるタイプのトラックではないので
こういう時に引く判断をするというのもチャンピオンを取るために必要な
資質かなという気もします。まあいっちゃうのがロガーノなんですけどね。

 この後110周目のリスタートでは驚きの事件発生。
 なんとジェフ ゴードンのシートベルトが緩みます。
ピットに戻るというような話だったのに、ゴードン、なぜか自力修復^^;
でも危ないからこういう時は黒旗を出してきちんとピットへ戻させるべきです。
 なお、次戦もゴードンは引き続き88号車に乗ります。

 さて、レースの方は残りが50周あまり、燃料は頑張れば40周もつ、ということで
全車あと1ピット。ただ、各々サイクルが違い、上位勢は燃料的に
120~125周目あたりで入るしか選択肢がなく、その背後にはそこから
伸ばそうと思えば10~15周伸ばせる人たちが構えている状態になります。
 予想通り残り40周付近から、アンダーカットでの一発逆転を狙いたい人から
順にサイクルが始まり、やろうと思えば引っ張れる組の人たちも
同じタイミングで動きます。
 雨を考えなかった、というよりは、降るかもしれないから、最後までの
タイヤと燃料は深く考えず、アンダーカットしてとりあえず前に出ておこう、
という考えだったかと思います。

 ところが、そうしなかったのがクリス ブッシャーとリーガン スミスでした。
彼らは105周目のコーションでピットに入っていました。
他にもこのタイミングでジェイミー マクマーリー、リッキー ステンハウス ジュニアも
入っていて、ブッシャーより前を走っていましたが、彼らはまさか
そのまま留まっていて勝てるとは思っておらず、ブッシャーはまさしく
弱者の兵法でリーダーになりました。
 ピットに入った組ではブラッド ケゼロウスキーがアンダーカットに成功して
ピット前の実質4位から実質1位へと一気に順位を上げましたが、
トラック上はここから急速に霧が立ち込めてきます。
そしてケゼロウスキーがスミスを抜いた後にとうとうコーションに。
こりゃあスポッターは仕事のしようがありません
2005年の日本シリーズ第1戦を思い出すような霧です。

 しばらくはコーション周が続き、ブッシャーにはコーション中にガス欠する
懸念もありましたが、とうとうレース コントロールは赤旗を決断。
そして1時間以上経過しても霧は晴れず、加えて次の大きな雨雲も
接近していることからここでレース終了としました。

 ブッシャーはカップ参戦1年目でまさかの優勝。
新人の優勝は2009年のロガーノ以来の快挙。
また、フロント ロウ モータースポーツにとっては2013年のタラデガ以来となる
2度目の優勝で、リストリクター プレート レース以外では初めてということになります。
 昨年のXfSチャンピオンのブッシャーですが、さすがにFRMの車では
結果を残すと言うには程遠く、ここまでの最上位は先週のインディアナポリスでの14位。
トップ20フィニッシュは3回だけでした。
 通常、優勝=チェイス進出、となるわけですが、ブッシャーは
上記の通り下位が多いため、この勝利により点数を加えてもなおドライバー選手権で31位。
 チェイス進出にはまぐれで1回勝った人が入らないよう、『30位以内』という
決まりがあるため、彼がチェイスに残るにはこの先もポイントを確実に重ねて
いかないといけませんが、ここまで20戦もやってギリギリの線ですから、
彼にとっては大きな挑戦となりそうです。

 現在ポイント30位とは6点差、その相手は、なんとチームの優勝者としての
大先輩であるレーガンです。
 そして、その上の29位にいるのは、チームメイトの38号車、ランドン カッシル。
カッシルとは35点も差があります。
さすがにカップ7年目の先輩だけあって、新人より結果を出しているようです。
下を見ると、32位のスミスが9点差、33位のブライアン スコットとは30点差ということで、チームとして目標をチェイスの定めるなら、まあやってやれなくもない、
という感じですが、あまりに不正な順位操作はNASCARでは重罰が下ります。
 
 ブッシャーはXfSにラウシュからエントリーしていたラウシュの秘蔵っこ的
立ち位置でいわば提携の下位チームに貸し出している状態なので、
チェイスに出て名前を売り、自信を付け、スポンサーも付いてくれると
将来非常にありがたいことですから、良い道具・情報・人材をFRMに供給して
後押ししてあげると30位に入りやすくなると思います。

 が、一方で、ラウシュ フェンウェイは現在3人のドライバー全員がチェイス バブルの
状態で現状は全員圏外。
ブッシャーが30位以内に入る=枠が1つ減る、なので、自分たちの立場を優先すると
ブッシャーの活躍はおいしくありません。
また、彼が枠を取るかどうかはもちろん他のバブル ドライバーにとっても
重大な問題で、過去2年消化試合感しか無かったチェイス枠争いの
最終版は『30位争い』という、本来とは少し別の場所が絡んで久々に
一喜一憂することになりそうです。
 次戦はロードのワトキンスグレン。ここで普段勝たない人が勝つようなことがあると、
チェイスの最後の1枠は殴り合いになりそうですw

 内容はどうあれ、ブッシャー、初優勝おめでとう!