2013年の鈴鹿1000kmや今年の富士500kmでのガス欠
(あるいはその回避のせいで受けたペナルティー)、そして昨年の菅生で
発生したピット大渋滞は記憶に新しいところですが、
SUPER GTのSC制度に関しては課題が山積しています。
 そんな中、先日の第4戦菅生でまたしてもピット サイクルが始めるタイミングで
SCが出動。幸い今回はサイクルの本当に最初期だったため、ガス欠することも、
SC明けに全員がなだれ込んでくることもありませんでしたが、
レース後の会見でGTA会長の坂東 正明は、来期以降にFCY規則を
導入したい以降であると述べました。

オーツスポーツweb
スーパーGT、フルコースイエローシステムの導入を検討。来季導入か?

 ただ、この記事にあるように導入は簡単ではなく、平たく言うとお金がかかりますw

 FCYはWECやFEで導入されているシステムで、基本的な考え方としては
「FCYですよ」と言われた時点から、各車はピットのリミッターを作動させ、
それ以下の速度での走行しか認められません。
 この制度のメリットは、SCと違って各車間の距離を保ったまま
事故の回収作業を行うことができるのでレース展開に対して与える影響が
比較的少ないという点です。

 F1のVSCと何が違うかというと、VSCは、細かく刻まれたタイム ループ
(我々が見る3つのタイム セクター内でさらに細かく区間を区切って時間を計測している)
での走行タイムを制限します。そのため、その範囲内であれば、タイヤに熱を
入れるための加減速は可能です。FCYでは、加減速しても構いませんが、
最高速は決まっているのでやったらやっただけ遅れますし、たぶん熱も入りません。

 SGTはテレメトリーが無いので、コントロール タワー側から速度の常時監視を
することができませんので、FCY中に速度を本当に守っていたのかを知るには
レース後にデータを全部回収・解析しないといけず、それでは
レース数日後に「誰と誰と誰はFCY速度違反でペナルティーで順位が・・・」
となる可能性があり、何かしら常時観測する方法が無いことには制度が成り立ちません。
 そこで記事にあるようなGPSを試験しているようですが、GPSって誤差がありますし、
そんなに万能かいな、という気がします。

 FCY以外にも、ル マン24時間やDTM、実質的にニュルブルクリンク24時間でも
採用されているSZ(スロー ゾーン)というのもあります。
 こっちは事故処理をする特定の区間だけ速度に上限を設ける方式ですが、
これも監視できなければ成立しないので同じことになります。
 旗はコーナー ポストごとに提示されますから、せめて各ポスト間での
タイム計測さえできれば、SZ区間でのタイム指定、という形で
タイムだけを見れば運用可能になりますが、それでもやはり全コースに
設置する設備投資費用がかかります。
 また、SZは特定の区間だけの速度制限で、作業が終わると解除されるため、
例えばある車は3回現場を通過して計45秒失ったのに、ある車は2回しか出会わず
30秒のロスで済んで15秒勝手に追いついた、なんてことが起こります。


 また、導入した場合、FCY中のピットをどうするのか、という問題も
整理しておかないといけません。FCY中はコース上の車と
ピット レーン上の車速が同じになるため、失う時間が
『ピット ロードへ向かうために余分に走った距離相当の時間+静止時間』だけに
なるため、通常時より遥かに少ない時間を失うだけで済んでしまいます。

 なんかテレメトリーを使えないことで世界的な流れに乗り遅れている感が
ある気がしますが、GTAがどういった結論にするのか注目したいです。
少なくとも今のやり方が上手いとはいえないので、これらが無理なら
NASCARのコーション規則をもっと参考にして欲しいですし、
GT300用にもう1台SCを用意してリスタート手順の簡略化にも
着手していただきたいところです。