ここ最近ニュース等で大きく扱われる『ポケモンGO』
アメリカで爆発的人気となるなど、スマートフォン向けゲームとして
空前の利用者数となっているそうで、7月中にも日本での配信も
開始されるとのこと。しかし、御存知の通り非常に弊害も指摘されており、
このタイミングでもって、以前から言いたかったことを今こそ書いておくべし、
と思った次第です。
 『歩きスマホ』などと言いますが、別にスマーフォンに限ったことではなく、
『ながら歩き』と言う方が正しいんでしょうが、新聞を学生が読みながら
歩くことはまあ無い一方で、スマートフォンなら多くの年代で起こることで、
全体に占める割合、増加具合からすると、やはりスマートフォンが中心と
なっているのは疑いようがないところ。そんなながら歩きに
一言も二言も言いたいと思います。

 これをご覧になる方の中にも、実際にながら歩きしている、という方も
おられるかもしれません。
なんだうるせえな、てめえはスマホもってねえからだろ、
俺は気をつけてる、マナー厨消えろ、カス、などと思っていればもう重症だと思います。
もう一度自分の行動を顧みてください。

 前を見ず、手元を見ることで周囲とぶつかるから危ない、というのが
ながら歩きの大きな問題点の1つです。
町中で軽くぶつかる程度ならまだ良いとは言わないまでも、それで済む話、
しかし、駅のホーム上で相手に接触すれば、相手を線路へ落とし、最悪の場合
死亡させる恐れがあります。
 視覚障害の方とながら歩きの危険性についての報道を目にしたことがありますが、
ホーム上で急に立ち止まったり、進路変更することが原因で、
避けるために誤って転落し大怪我をした方もおられるようです。
 極端な話、自分だけ崖にでも落ちて誰にも迷惑かけずに死んでくれるならまだいいです。
鉄道事故であれば、輸送障害によって広範に影響が生じます。
軽い接触だけであってもです。
 また、あまり取り上げられることがありませんが、死亡事故となると、
全く過失がなくても、運転士は精神的に大きなショックをうけることがあります
(これは鉄道自殺でも同じことで、社会はもう少しこの点を取り上げていただきたいです)
 ましてや他人を落としたとしたら、もしあなたの家族が、恋人が、
特に急ぎでもないSNSのやり取りのために落とされて死亡したらどうでしょうか?
納得いきますか?

 鉄道会社側も啓発活動が不十分に感じます。案内放送で呼びかけている、
とはいうものの、その内容は
「お客様同士が衝突するなど大変危険です。歩きながらのスマートフォンの
操作は控えてくださるようお願いいたいします」
「思わぬおけがをする恐れがございます」
など。最悪死亡事故になりかねない事態に対して、はっきり言って表現がぬるいです。
通信会社やアプリケーション開発会社から広告宣伝費用を得ているので
強く言えないのではないか?と疑りたくなるぐらいです。
「接触・転落による死亡事故の恐れがあります、絶対におやめください」ぐらいの
表現が必要ではないでしょうか。
実際、本人が転落して死亡する事故も発生しています。
 この問題に法規制を導入すべきかについて意見が分かれていることは
承知していますが、一般の道路上と比べても、ぶつかられた後の2次被害が大きいと
推察されることを考えれば、少なくとも可動式ホーム柵がホーム上での使用は
禁止も検討すべきです。全面禁煙が通るのなら鉄道会社の裁量で可能ではないでしょうか?

 また、こうしたながら歩きをする人が増えると、当然これを歩くとき以外にも
しようとする人は増加すると考えられます。
自転車、自動車に波及すると考えるのが普通です。
 アメリカでは自動車を運転しながらポケモンGOを遊んでいる非常識な
人間も既に出ているようですが、ポケモンだけが悪いわけでなく、そもそも
運転中にも操作することが日常化していることが問題です。
 そうした人口を増やさないためにも、結局のところ、その最底辺とも言える
歩きながらの使用に厳しく指導・教育・対処する必要があると考えます。
 
 近年では公共交通機関の乗務員の勤務中の使用すら時折発見されています。
交通機関側は「私物の携帯機器の持ち込みを禁じている。検査を強化する」と
通り一遍等の返答しかしなさそうですが、常に手放せないような状態の人が
勤務すると、集中力の欠如を招いて結局事故に繋がる恐れもあります。
 結局、交通機関の啓発の弱さは自分たちに跳ね返る可能性があります。
これは恐らく他の職種でも根源的には同じ話ではないでしょうか。
依存なら他にもいくらだってある、スマホだけ悪者扱いするな、
と反論されそうですが、普及している数を見れば、割合はわずかでも
絶対数が違うと思います。


 また、犯罪の被害者になりやすいという統計数値もあるようです。
言い方は悪いですが、確かに画面に集中している女性を背後から襲ったり
下着をはぎ取ったり、車に押しこむのはとても簡単そうに見えます。
本人は気をつけているつもりかもしれませんが、実際はそうではないことを
自覚してください。
イヤホンで耳をふさいでいるだけでも既に危険回避に対して重大なマイナスで、
音楽を聞きながら歩くことも避けるべきであると考えます。

 様々な機能を有する携帯機器は確かに大きな経済効果をもたらして
いると思いますが
(複数の機器が融合して、個別にそれらを買うより低価格なため
GDP統計上、理論的にマイナス方向に働いている可能性もあるそうですが)
こうした事件、事故等による経済損失もまた相当なものであるということは
社会全体として認識しないといけないと思います。


 私が通勤する範囲だけでも、幅の狭い階段で中途半端な場所をゆっくり歩いて
後続の人間を鬼ブロックしていたり、列車の乗車時に前に続かない、
列が動いているのに動かない、乗ったらすぐ立ち止まる、ドアの前から動かず
降りる人の場所を作らない、など、周囲に全く気を使わない人が目に付きます。
その程度の話で済んでいるから運がよいだけで、明日の加害者・被害者に
なる可能性はじゅうぶんあります。


 それと少し話題がそれますが、よく『中国人はマナーが悪い』と
あれやこれや取り上げて、中国人バッシング的な特集をしたりあるいは
そう思っている人が多いでしょうが、
私から見れば、ながら歩きで一切周囲に気を使わない人々も同レベルです。
 中国人がマナーが悪い、という要因のうちの1つは、そもそもそうしたことを
教える人間がおらず、経済だけが先にどんどん発展してしまって、
人間側が全然追いついていないことがあると思います。
 そして、携帯機器の進歩で急速に増えるながら歩きもまた、
急速な普及に教育が追いつかず、また、上に年代の人間が経験していないために
教えることが根本的にできていないことが1つの問題であり、構図は
さほど変わらないように思います。
 常識があればモスクやホロコーストの博物館でポケモンで遊ばないですよね。


 あまりに拡大が進む一方になるなら、タバコの箱に傷んだ内臓の写真を
載せるように、画面を表示する度に人がはねられる映像を表示するよう
強制でもしたらどうかと思いますが、まあそこまでの過激派主張は置いといて、
各個人が自身の行動が保つ意味をきちんと理解し自制しないと、
本当に歯止めが効かない問題に成り得ることは事実です。
鉄道会社がホーム柵を増やしていくから大丈夫、ではありません。

 ポケモンGOが日本でそこまで本当に当たるかどうか正直懐疑的ではありますが、
こうした機会に、歩きながら操作することがいかに問題か考え、
それを周囲へと広めたいただきたいです。